準大手会計事務所「青山綜合会計事務所」、レセプト債詐欺事件の裏で資金の不正流用に加担 債券発行体に公認会計士が投資勧誘


■証券化ビジネスに強い準大手会計事務所「青山綜合会計事務所」(代表 松澤和宏公認会計士・税理士、以下青山会計)が、2400名以上の投資家に227億円もの被害を出した「レセプト債」偽計・詐欺事件において、海外SPCの組成・管理などポンジスキームの構築に重要な役割を果たす一方、レセプトとは全く関係のない投資案件を債券発行会社に勧誘し、資金の不正流用に加担していたことが分かった。青山会計の関係者が事件に乗じて、自己の関係する会社に資金融通をさせるなどした疑いがある。
■この事件は、株式会社オプティファクター(15年11月破産)が医療機関から買い取った診療報酬債権を裏付け資産とした金融商品・レセプト債を発行、アーツ証券(16年3月破産)が多数の投資家に販売していたが、肝心の診療報酬債権買取の実態がほとんどなく、資金の大半が別の使途に投ぜられていたものである。05年頃から流用が始まり、13年3月頃の時点で債券発行額が約120億円あるのに対し、実際の買取額は10億円弱というありさまで、70億円超の現金が使途不明となっていた。
■15年10月、証券取引等監視委が検査に入った直後にオプティファクターは破産。16年2月に監視委は同社を強制調査。17年2月、千葉地検は金商法違反(偽計)容疑で、オプティファクター元社長の児泉一と、アーツ証券元社長・川崎正らを逮捕した。さてこの事件の構図を概観すると、架空のレセプト債の発行がオプティファクター、その販売がアーツ証券、そしてタックスヘイブンなどに様々な役割のSPCを設立するなど、舞台装置を構築したのが青山会計である。
■オプティファクターがレセプト債発行を開始したのは04年頃。青山会計・青山税理士法人は同時期にSPCの口座開設・資金の管理契約を締結し、債権買取機関・債券発行体としての海外SPCの設立を支援した。その後、一部の業務を新宿総合会計事務所が引き継いだものの、新宿会計はいわばサブ的な位置づけであった。創業者の児泉収が13年3月に死去した後、会社を引き継いだ息子・児泉一は、青山会計との関係について次のように回顧している。
■〈レセプト債の発行を始めた当初は青山会計だけが会計事務所として関与していましたが、途中から新宿会計にも一部SPCの会計も見てもらうようになりました。その経緯については収氏に聞いてみたことがあります。収氏によると、青山会計が忙しくなって単純に手が回らなくなった時に、青山会計から「ちょっと手が回らないから一部を新宿に振っていいですか」と言われて一部引き継ぎをしたそうです〉(児泉一の17年10月の陳述書より)
■青山会計としては、クライアントである児泉収の指示に従ったに過ぎない、という言い分もあるだろう。刑事責任を問われていない以上、実際にそうなのかもしれない。しかし、千葉地検検事に対する関係者の供述から、青山会計がオプティファクターに対し、レセプトとは関係のない投資案件を持ち掛けていたことが分かった。
■オプティファクターでの資金流出の大半は児泉収が社長をしていた時代に実施されており、本人が亡くなっている以上、ほとんどの実態は不明である。しかし、15年11月の破産当時の財産目録から資金流出の一部を垣間見ることができる。
■資金流出は貸付金や有価証券投資名目で行われており、それを見るとオプティ・メデックス・リミテッドやメディカル・トレンド・リミテッドなど、関連会社に対するものがほとんどであるが、オプティファクターと関連のなさそうな法人も散見された。Sequedge ASA Capital Cayman LimitedやHai East Wing Vietnam Limitedなどである。当サイトは16年6月、この点について投資情報フィスコ親会社のシークエッジとレセプト債事件との関係を報じた
■実はこれらの投資案件は青山会計による紹介だったと児泉一は述べている。〈入社後、収氏から任された私の業務内容は、主に医療機関向けの営業(診療報酬債権の買収先の開拓)で、その他、他の社員とともに、ベトナム・中国への海外投資案件に関する業務の補助をしていました。(略)収氏の在任当時、レセプト債のスキームのなかで会計事務所がいかなる業務をしていたのかなどについては、詳しくわかりません。ただし、収氏から指示されて海外投資に関する業務の補助をすることがあったので、投資先を紹介する青山会計の横山氏とは打ち合わせをする機会はありました。当時の投資案件は横山氏から紹介を受けた案件ばかりで、収氏と横山氏の間で大枠を合意し、部下が細部を詰めるやり方でした。なお、青山会計には、投資先の紹介に対して、一定の報酬が支払われていたはずです〉(前出・陳述書)
■上記で登場する「青山会計の横山氏」とは、青山会計の創業メンバー、横山公一公認会計士・税理士のことである。児泉の千葉地検検事への供述調書によれば、前出のHai East Wingやシークエッジ関連への投資は横山ら青山会計が父・収に提案したものだという。
■同様の証言をしているのは児泉だけではない。千葉地検は17年3月頃に元社員などの関係者の取り調べも行っていた。09年11月から14年7月までオプティファクターに勤務した元幹部は、収が青山会計から勧誘された「中国の魚屋」(シークエッジ関連)に投資していたと供述している。10年10月から14年10月まで勤務した元社員も、収がアーツ証券や青山会計から紹介された投資案件に金を出していると聞いたことがあると供述している。00年の設立から破産に至るまで役員を務めていた元幹部も、アーツ証券の川崎から青山会計から紹介された中国案件に5億円、ベトナム案件に3億円が出ていると聞かされたと供述している。
■さらに、青山会計元社員が投資勧誘を認める供述していた。〈私の上司であり、青山綜合会計事務所の所長であった横山公一さんは、以前から、オプティファクターの前代表取締役であった児泉収さんと知り合いでした。そして、私は、横山さんと一緒に収さんのところへ投資をお願いする営業に行った際に、収さんと知り合いました。その際、私は、収さんに、中国の水産加工会社への投資案件の営業を行い、投資してもらうことになりました。その後、私は中国の案件以外でもベトナムなどのいくつかの案件で、収さんに投資をしてもらうようになりました〉(元社員の供述調書より)
■別の日付の調書ではより具体的な供述もある。〈シークエッジは中国の水産加工会社等を投資の対象とし、イーストウイングはベトナムの商社や建設会社、携帯電話の販売仲介業者などを投資の対象とするファンドでしたが、オプティ社からは、シークエッジには4億8200万円、イーストウイングには総計4億3400万円の出資を受けた記憶です〉(元社員の供述調書より)
■前述の通り、オプティファクターが集めた資金は医療機関から診療報酬債権を取得するためのものである。しかし初期段階から流用が始まっていたことを、青山会計は把握していたはずである。その状況下で、会社の内情を知る公認会計士が目的外の投資を勧誘するなど、やっていいことなのか。
■しかもその投資案件は、青山会計が利害関係を有している。シークエッジがジャスダック上場フィスコの支配権を取得した後、フィスコと青山会計は業務提携を締結している。オプティファクターは横山が11年に創業したインテリジェントウィルパワーにも投資をしている。これ自体、利益相反も甚だしいが、実は同社はその後、フィスコの関係会社であるSJI(現・カイカ)と共同事業を行っている。オプティファクターの不正流用に乗じて、青山会計の関係者が、自己の便益を図ったのではないのかという疑惑が持ち上がる。青山会計は、取材を拒否した。
(文中敬称略)

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