ベルシステム24ホールディングス 売上減と人件費上昇で現実味増す巨額のれん代減損リスク


他力本願の戦略

ベル24■10年ぶりに東証一部に再上場したベルシステム24ホールディングス(6183)の2016年2月期決算が4月12日に発表され、関係者を落胆させた。売上102,540百万(前期比△8.5%)、最終利益は5,031百万(△49.0%)で、大幅な減収減益となった。前日11日にみずほ証券がベル24の投資判断を「買い」とし目標株価1,470円で新規カバレッジしたこともあり株価が上昇したばかりで、発表後の13日の終値は前日比△13.3%安と急落した。
■元々CSK(現SCSK)の傘下だったが、影響力を回避するために日興コーディアルグループ(現SMBC日興)に大規模な増資を実施し、非上場化。日興はその際に計上したEB債の評価益を巡り、粉飾決算事件に発展。金融庁より5億円の課徴金処分を受けることとなった。ベル24はその後、米シティグループ⇒ベインキャピタルと外資の手を渡り、14年10月に伊藤忠商事がベインの持ち株を取得し、伊藤忠の持分法適用子会社となった。
■先のみずほ証券のカバレッジもそうだが、ベル24に関する希望的観測の根拠は「伊藤忠頼み」である。3月には伊藤忠出身の柘植一郎が社長に就任し、伊藤忠色を全面に出してきた。だが、大口得意先であったソフトバンクグループ(ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム)との取引高が減少している。14年2月期は31,763百万(売上の30.3%)、15年2月期は30,609百万円(27.3%)、16年2月期第は15,390百万(15.0%)と半減。元々、ソフトバンクグループとは10年という長期で利益率のよい契約を結んでいたが、15年2月期で終了し、一般と同等の1年契約になった。
■決算説明資料によると伊藤忠関係先への売上高は「24億円」とのことで、全体の2.3%程度である。伊藤忠とは14年10月からマネジメント契約を締結していたが、上場時に即時解除。包括的な業務提携の契約などは今のところ無い。
■ベル24の財務を見ればわかるが、怖いのは巨額ののれん代だ。総資産の7割にあたる97,083百万(㈱ベルシステム24が90,757百万)が計上されている。IFRSを適用しているので定期償却ではないが、純資産の2.5倍もあるため、減損が認識されれば債務超過になる。ちなみに日本基準での償却額は4,266百万だった。16年2月期は有利子負債額(※1)が一定(27年2月期80,751百万⇒80,458百万)なのに金融費用が15年2月期2,448百万⇒1,010百万と半減しているので、借り換えがうまく行っていなければ日本基準では赤字になっていた可能性がある。

人件費は変動費か固定費か

■ベル24は人件費上昇により収益性が低下するリスクが高い。正社員、非正規社員を併せると従業員数は14年2月期が28,347人、15年2月期が28,254人、16年2月期が25,304人となり、原価、販管費に計上されている従業員給付で割ると一人当たりの年収は約250万~270万円程度だ。
■ベル24の原価率は次のように推移している。
売上:原価の前期比
14年2月期2.2%:4.3%
15年2月期4.1%:2.2%
16年2月期△8.5%:0.9%
■仮に原価計上されている従業員給付を固定費と見た場合、同社の安全余裕率は13年2月期18.39%、14年2月期17.42%、15年2月期19.22%、16年2月期10.81%となる(※2)。ベル24は取材に対し、「非正規雇用者の多くはプロジェクトごとに2,3か月の有期雇用なので、変動費と認識している」と答えており、変動費とした場合の安全余裕率は15年2月期54.21%、14年2月期53.90%、15年2月期55.75%、16年2月期は38.05%となる。
■既にベル24に対しては、散発的に連合系の合同労組との間で労使紛争が起きている。全国一般広島のブログでは、ベル24に対する厳しい批判が展開されている。
わずかな正社員と大多数の非正規社員では、退職金・賞与・定昇・企業年金・住居手当・家族手当・資格手当などで大きな格差があるだけではなく、年休取得でも差別され、正社員は年休取得時は通常賃金が支払われ不利益はないが、非正規社員が年休を取得すると平均賃金の60%しか支給しない。
北九州の非正規社員は、時給が1050円で1日8時間働き日額8400円となる。しかし、年休を取得すると1日の年休賃金は60%の5040円しかならない。会社は年休を非正規社員が取得できないようにしており、非正規社員にとってはまさにブラック企業である。
年休取得時は、正社員と同じように100%の賃金が保証されるのが当然の権利だと、広島でも非正規社員が自治労・全国一般広島地方労組に加盟して闘っていいる。
会社側は、団体交渉に弁護士2名を含め8名も出席し、「組合の要求は、すべて応じられない。年休補償賃金については正社員と有期社員で異なるが、変更する考えはない」とにべもない発言を繰り返すだけだ。今、全国一般から厚生労働省に対して、有期社員のみ年休取得条件を不利益にする行為は労働契約法に違反する行為ではないかと見解をもとめている。〉(広島ユニオンのブログ「ベルシステム24に、自治労全国一般広島・指吸特別執行委員大激怒!!」より)
■特に、年内に導入されるという同一労働同一賃金が始まれば、ベル24においては賃金が上昇する方向に格差が是正され、収益を圧迫することになるだろう。
(文中敬称略)

ベルシステム24ホールディングス 売上減と人件費上昇で現実味増す巨額のれん代減損リスク” への4件のフィードバック

  1. 従業員に満足な賃金を支払えない企業は潰れても良いと思う。例えば、ベル24が潰れる事により、その市場は他の同業他社にとって絶好のビジネスチャンスとなる。逆に潰れなければ、安価な労働力を武器としたベル24が、他の同業他社のから顧客を奪ってしまう事になるかもしれない。

  2. 私も、お世話になりました。
    もう少し女性の立場に寄り添って頂ける職場環境を整えて頂けたら嬉しかったです。人事を取り仕切っている社員の方が、少し強引な所があり、困惑してしまいました。結局退職いたしました。本当は暫くお世話になりたかったのですが、仕事を頂けずクライアントからお金を貰う為だけの人員として雇われていた事が苦痛だった事が理由です。座っているだけでいいみたいな扱いをされ、本当にノイローゼになり掛けました。

    1. 正社員で入ったけど、仕事がもらえずクライアントからお金をもらうための人員と思ったのでしょうか?

  3. 私はこの会社に社員としていました。もう既に退職しましたが。。。
    コールの対応をしていただいている非正規の方もそうですが、この会社は中途入社の社員離職率も異様に高く、会社の問題になっています。
    要は、外部からの意見や考えを受け入れない古い習慣がいまだ残る企業です。

    契約しているお客様の顧客情報管理はせず(重要性を会社として管理者に教えていない)恒常的に何百通とくる社内メールで問合せ対応をしている現状があり、ビックリしました。トリトン本社の社内雰囲気も、そんないいものでもなく、コミュニケーションに希薄。ITや通信におけるアーキテクチャ的な人もおらず、将来また、どこかの外資に買われるんだろうと思います。

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