■2021年6月にSBI証券を主幹事で東証マザーズに上場した、ECサイトを通じてスキンケア商品を販売するWaqoo(代表取締役・井上裕基)は、上場わずか1年後に創業社長が湘南美容外科のSBCメディカルグループ(SBCM)代表・相川佳之に株式を売却し、現在、実質的にSBCMの支配下に収まっている。
■Waqooの21年9月期決算は売上高46億円、営業利益1.5億円と、非上場だった前期から増収増益となる決算を公表していた。22年9月期は、「事業環境の変化」を理由に売上高は3割減としたものの、広告費を抑制することで営業利益は1.5億円と据え置く業績予想となっていた。だが、22年9月期の2Q実績が予想を下回り、通期も結局、営業赤字となった。
■株価は上場時の2000円台からみるみる下がり、22年1月には400円台まで下落。そして同年6月、Waqoo社長の井上裕基と役員の中上慶一が、持株の大半を相川に株式譲渡すると公表。譲渡価額は1株649円で、上場した頃からはだいぶ低いが、4月頃に400円台まで下落していたところ、俳優の佐藤健を起用した新商品を発売するなどして、少し持ち直した水準となった。
■株式譲渡により、相川は33%を持つ筆頭株主となり、WaqooとSBCMは22年8月に業務提携。Waqooのスキンケア商品をSBCMに販売する一方で、SBCMの商品をWaqooが仕入れ、ECサイトで販売するような互恵関係を築くという。11月には、SBCMの血液由来・脂肪由来の幹細胞加工関連の事業を開始するという。新規上場わずか1年で、実質的に、相川とSBCMが支配する上場会社に様変わりした。
■実は、22年8月の提携内容にある相互に商品を取引する以外にも、WaqooとSBCMは取引を行っている。Waqooは8月に「Waqooメディカルサポート」を新設。広告分析・企画提案事業を行う子会社で、4Q中にSBCMから2億円の売上を計上し、新設されたメディカルサポート事業のセグメント利益は1.5億円となった。
■ただ、Waqooは2019年に広告・メディア事業を譲渡、撤退していた。さらにWaqooは上記の2億円の取引があった4Q中に、一般社団法人誠心会に2億円を貸し付けている。誠心会は井上、中上が社員を務める社団法人で、代表理事にはWaqoo社員が就いている。同会は昨年に、大阪で「メディシアクリニック」という美容医療クリニックを開業している。
■メディシアクリニックのホームページを見ると医療痩身を専門としているが、同クリニックで使用されている痩身器具のトゥルースカルプflexや、痩身注射のプロショックシェイプは、いずれも湘南美容外科系のクリニックで使用されているものだ。誠心会がこうした医療を提供するに際して、SBCMから医療機器や商材の仕入れなどの取引がある可能性がある。
■Waqooの監査法人のEY新日本監査法人は、SBCMとの取引について監査上の主要な検討事項(KAM)に該当するとして、取引の合理性などの確認を行ったという。だが、誠心会がSBCMと取引を行っていたとなれば、SBCM→Waqoo→誠心会→SBCMという一連の資金循環がされている可能性がある。当サイトはWaqooに対して、誠心会の位置づけや、誠心会とSBCMとの取引について取材したが、期日までに回答はなかった。(文中敬称略)