【ミニ情報】ユーグレナのバイオジェット燃料製造設備、既存技術よりコスト面で劣る NEDOの研究事業で判明


■微細藻類ミドリムシ由来のバイオジェット燃料の商業化を目指すユーグレナが、燃料の製造技術として米シェブロンから技術供与を受け採用しているアイソコンバージョンプロセス技術(BICプロセス)が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による実証研究で、既存の製造技術である水素化処理技術(HEFA)より製造コストの面で劣っているとされたことが分かった。
■バイオジェット燃料を航空機で使用するためには、燃料の精製方法がASTMインターナショナル(旧米国試験・材料協会)の規格に準拠したものでなければならない。ユーグレナは2015年、米シェブロンから技術供与を受け、精製技術にBICプロセスを採用したが、当時、BICプロセスはASTM規格の認証を取得していなかった。
ユーグレナはASTMの規格の取得を2017年中に行うとし、同年には、神奈川県横浜市にBICプロセスによるバイオジェット燃料製造の「実証プラント」の建設に着手し、約60億円かけて2018年に竣工した。だが、ASTM規格の取得は遅れ、2020年1月にようやく規格取得に成功。初めて航空機に使用されたのは2022年3月となった。
■バイオジェット燃料は高い製造コストがネックとなっていた。2020年10月、ユーグレナのバイオジェット燃料製造設備がNEDOが実施するバイオジェット燃料生産技術開発事業に採択され、BICプロセスによるバイオジェット燃料の製造コスト低減の可能性の研究が行われた
■しかし、出てきた結果はネガティブなものであった。昨年11月にNEDOが公表した中間評価には、「商業プラントにおけるプロセス選択の方向性については、実証プラントでの運転実績及び次項で得られた情報を踏まえ、HEFAプロセスの優位性を確認するに至った」と記されているのである。すなわち、BICプロセスは既存の製造技術に対して、コストの面で劣っていると確認されたのである。
■別の箇所では、ユーグレナは2025年に稼働予定の商業プラントではHAFAプロセスを採用する方針であると記されている。これはBICプロセスを放棄したに等しい。ユーグレナが2015年にシェブロンから技術供与を受けた際には、日本経済新聞がこれを1面で報道。〝石油メジャーとの提携〟を好感し、翌営業日の株価はストップ高近くまで高騰した。しかし、今回のネガティブな結果についてはリリースなどはなく、政府専用機にジェット燃料が使われたことなど、耳ざわりの良いニュースが流されている。
■ユーグレナを巡っては、世界で初めて成し遂げたとされるミドリムシの屋外大量培養技術や、上場時に設置するとしていた大量培養施設は有耶無耶となっていて、「バイオベンチャーの成功例」という印象だけが独り歩きしている。その間に、社長やCFOの出身母体である投資ファンド・インスパイア(代表・成毛眞)はユーグレナ株を売り抜けている。(文中敬称略)

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