■東証スタンダード上場ジェイホールディングスは、20年の第三者割当増資で調達した資金でSDGs事業を始めるとして、1.7億円で太陽光発電所案件を取得したが、1年後に案件を第三者に譲渡、今年2月には9000万円の未収が明らかになった。短期間で損失を結果したこのSDGs事業の背景を探ると、ジェイホールディングスから発電所の代金を受け取った先と、増資引受先に接点が浮上した。
■ジェイホールディングスでは20年1月に不動産事業で不正会計が発覚。経営体制が変更され、同年3月に眞野貞也が社長に就任した。同年10月には第三者割当増資を実施し、アースマテリアル、濱田雄史、エスティエンジニアリング等に新株と新株予約権を発行することで4.7億円を調達した。この増資の資金使途として掲げられていたのが前述のSDGs事業である。
■当サイトは昨年10月、ジェイホールディングスが太陽光発電所を取得した相手方は、実質的に、東京地検特捜部が21年に摘発した太陽光関連のテクノシステムであり、同社と関係を有すると思われる太陽光関連のサンエレメント（社長・伊地知宣雄）から、眞野が20年9月に熊本県阿蘇市の太陽光発電所を取得していたことを述べた。
■その後の取材で、実際にサンエレメントとテクノシステムが多額の取引をしていたことが分かった。関係者によると、20年2月頃にサンエレメントのビークルが、テクノシステムに熊本県葦北郡の太陽光発電所を合計12億円で譲渡する契約を締結。また、同年6月には、反対にテクノシステムがサンエレメントに青森県上北郡の太陽光発電所を合計9億円で譲渡する契約をしていたという。
■10億円近いカネが、太陽光発電所売買で短期間に両社を行き来していたのである。テクノシステム社長の生田尚之は、逮捕直前に事件について記した直筆の書面にて、関係先としてサンエレメントの社名を挙げており、複雑な関係があったと思われる。
■さらに、サンエレメントは、ジェイホールディングスの増資割当先である濱田雄史の所属先、プレンティー・ランドスケープとも取引関係がある。サンエレメントはプレンティー・ランドスケープに対し、19年4月末時点で1.8億円を貸し付けていた。20年4月末時点では貸付金は計上されていないが、両社は貸付以外でも様々な取引があったようだ。
■ジェイホールディングスの増資に際しての適時開示によれば、ジェイホールディングスと濱田雄史を繋いだのは、20年3月に取締役に就任した塩田卓也であるという。実は塩田は、前述の熊本県葦北郡の発電所売買に使用されたサンエレメントのビークルの業務執行者であった。実際のところ、増資先を繋いだのはサンエレメントであると思われる。
■つまりSDGs事業を巡っては、ジェイホールディングスの社長、実質的な投資先のテクノシステム、増資の割当先のプレンティー・ランドスケープ、それぞれがサンエレメントと取引関係を有しているのである。念のため補足しておくと、サンエレメントは太陽光業界関係者なら誰もが取引するような規模の企業ではなく、従業員数名の伊地知の個人会社である。利害関係を有していたからこそ投資を実行し、損失を生じさせたのではないか。
■ジェイホールディングスは20年の不正会計を受け、同年8月に東証に改善報告書を提出し、その中で新規事業を行う場合はコンプライアンス委員会による審議をすることを定めている。しかし、改善策の実施状況を見ると、コンプライアンス委員会はSDGs事業の投資に際して、登記情報や契約内容については審議したようだが、投資先との利益相反等については検討したと記されていない。
■サンエレメントが絡む案件で損失を出した上場会社はジェイホールディングスだけではない。ピクセルカンパニーズは21年11月に、太陽光発電所の造成工事費用の一部として支払っていた前渡金2.5億円について、相手方の破産により全額貸倒計上すると開示した。
■相手方はアラインジャパンで、当サイトの取材では、破産直前の20年4月末時点でサンエレメントに7.2億円の前渡金を計上していたことが分かっている。伊地知は、14年にピクセルカンパニーズに入社し、翌年には取締役に就任するも、18年に辞任していた。
（文中敬称略）
2022年10月12日付【ミニ情報】東証スタンダード上場ジェイホールディングス、実態不明「SDGs事業」の裏側に「テクノシステム人脈」
2022年1月4日付レポート：【続報】ジャスダック上場ピクセルカンパニーズ「宮古島リゾート計画」驚愕の裏側 貸倒れた前渡金の大半は社長の借金返済に充当
2021年11月17日付レポート：ジャスダック上場ピクセルカンパニーズ「宮古島リゾート計画」驚愕の裏側 貸倒れた前渡金が社長と大株主に還流