東証一部オープンハウス、富裕層向け「節税商品」米国不動産販売事業の強欲


■去る昨年11月27日、東証一部オープンハウス(社長・荒井正昭)の株価が一時15%超まで下落する局面があった。日本経済新聞が同日朝刊で「海外住宅投資の節税認めず 政府・与党、富裕層課税強化へ」と報じ、富裕層向けの米国中古不動産販売を収益の柱の一つと位置付けていたオープンハウスの業績を直撃すると見られたからだ。また、オープンハウスの米国不動産事業を巡っては、一部の投資家が販売手法を問題視している。
■米国や英国の中古物件は短期間で多額の償却費を計上することができるなどの利点から、課税所得の多い富裕層の間で節税商品として好まれていた。しかし、この節税スキームは会計検査院が2015年度決算検査報告で問題視していた。一方、オープンハウスは17年頃から「米国に家を持とう」をキャッチコピーに米国不動産販売事業を強化していた。
■昨年7月、オープンハウスのセミナーで米国不動産投資の勧誘を受けた50代の個人投資家によると、同社の物件はまさに節税目的のものだったという。この投資家が提示された収益計画を見ると、物件価格は281,000$で、表面利回り7.37%、実質利回り3.81%の物件。オープンハウスの子会社アイビーネットが196,700$を3.8%の金利で融資するもの。計画では賃料や売却益を合わせても赤字となるが、利息と減価償却費により課税所得を減じた分で利益になるものだ。
■「オープンハウスからは、約2000万円を3.8%で借金させて、元本分は少ししか返済しなくて良い、と説明されました。元本が殆ど減らないので高金利分の返済が赤字を大きくし、収支計画上では、建物分の減価償却の赤字と合算されて、マイナスが大きくなり、個人所得税を大きく節税できるようになっています」(投資家の男性)。だが、減価償却が終わった後の売却価格に疑問があった。
■当該物件は、売却価格が取得価格の-20%となった場合でも、税効果を合わせればわずかに黒字となる計画となっていた。だがこの投資家が対象物件の相場を米国不動産データベースサイト『Zillow』で検索したところ、当該物件が215,000$で取引されていることが判明した。この投資家は相場より30%高値で取引した価格を前提とした収益計画の実行性に疑いを持った。
■そこで11月上旬、オープンハウスに問い合わせたところ、担当者から別の不動産データベースサイト『Redfin』での当該物件の相場は225,000$であり、修繕費が20,000$上乗せされており、相場と乖離は8.7%であるが、相場の上昇が期待できると説明した。こうした内訳の説明は問い合わせをするまで担当者からなかったという。
■用心深い投資家ならば米国の相場を確認し、収益計画を見直せば損失を回避できるかもしれない。だがオープンハウスの場合、投資を見送ると一定の損失を負うことになってしまう。この男性は、7月のオープンハウスのセミナーで担当者から、当該物件の投資を検討するに際して物件価格の2.5%を支払うコンサルティング契約を締結するよう求められ、申込金感覚で約82万円を同社に支払っていた。
■この投資家は前出のような経緯で売買契約締結前に投資の見送りを担当者に伝え、支払ったコンサルティング料を返金するよう求めたが、オープンハウスは「買主都合の理由で解約する場合はコンサルティングフィーの返金は不可」と述べ返金を拒んでいるという。投資家は「実質的な申込金であるし、仮にコンサルティング料としても、たった1時間の面談で80万円以上は法外」と述べている。
■冒頭の日経報道通り、12月中旬の政府与党の税制改正大綱では、海外中古不動産投資を利用した節税は規制される運びとなった。オープンハウスの米国不動産の節税商品としての魅力は、殆どなくなったと思われる。
(文中敬称略、つづく)

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