【続報 第5弾】東証一部「東レ」不正会計疑惑、日覺社長の代表者印の真偽が争点化 飛ばし先に融資の金融業者との訴訟


■日本を代表する企業、東証一部・東レ株式会社(社長・日覺昭廣)の環境・エンジニアリング事業セグメントの水処理システム事業部にて浮上した不正会計疑惑を巡り、東レに債務保証の履行を求めた金融業者との訴訟で、日覺の代表者印の真偽が争点化している。
当サイトが6月に報じた通り、水処理システム事業部の不良在庫の飛ばし先オリエントコミュニケーション㈱に在庫の取得代金を融資した金融業者が、今年4月に東レを相手取り訴訟を提起していた。その証拠資料として、債務保証契約に係る日覺の委任状等に押印された代表者印は真正なものであるとする3月付の簡易印章鑑定書を提出していた。
■これに対し東レは、委任状の押印されている代表者印は真正な印鑑とは異なるという6月13日付の結論の鑑定書(鑑定人・本間利行=元神奈川県警科学捜査研究所文書鑑定科長)を7月末に証拠提出した。東レは7月末の準備書面で、金融業者の委任状にある代表者印は真正なものではなく、印鑑証明書の印影から偽造したものと主張している。また、取引にかかわった社員Fは事業部長ではないとも述べている。
■金融業者はこれを受け、東レ側の鑑定は出所不明の印影を比較対照用として使用しており、印鑑証明書の印影との整合性も不明であることや、朱肉の付着過多などを持って真正なものと異なるとする鑑定は無効だと反論している。
■たしかにこれまでの経緯を踏まえると、この東レが提出した6月の鑑定書は、偽造という「結論ありき」で出されたものである可能性が高い。東レは債務保証履行を求める金融業者からの内容証明に対し、1月30日付の回答書で次のように「印鑑が偽造された」と断定していた。
■〈当社が実施した調査によれば、本件各契約の契約書に記載されている当社のオリエントの債務に対する債務保証(以下「本件連帯保証」といいます。)を含め、当社の元従業員であるF(筆者注=イニシャル)が、貴社に対して、当社の名義及び水処理システム事業部営業部長または事業部長等の肩書を使用して行った書類の作成その他一切の行為等は、すべて当社の承諾なく全くの無権限で行ったものであることが判明しています。また、本件各契約に際して貴社に提出されたと思われる当社代表取締役名義の各委任状やこれらに押印された印章は、いずれもF(イニシャル)によって偽造されたものです〉
■これへの返事として、金融業者側が鑑定書の有無や、印章鑑定のために真正な代表者印を押捺した書面の交付を求めたところ、東レは2月12日付で中央署への告訴を公表し、金融業者への内容証明でも告訴を理由に一切の情報開示を拒んでいる。
■東レが主張する「社内調査」が適正に行われた結果、最大の争点である印鑑の偽造が明らかになったのであれば、内容証明が作成された1月30日以前の鑑定書や、偽造を決定づける証拠が存在してしかるべきである。それが訴訟でも提出されないということは、東レは事業部長Fが持ち歩いていた委任状の代表者印が偽造されたものであるという決定的な証拠を有していないと思われる。
■さらに「印影偽造」の線で辻褄があわないのはFの解雇理由だ。東レは18年11月22日付で、事業部長Fを懲戒解雇しており、内容証明に記載されている解雇理由は三つ。

  1. 自部署の予算達成のため、東レの立場を利用し関係会社・協力会社を巻き込んで不適切な取引を実施した。
  2. 会社の印鑑を不正に使用し、決裁権限に反して独断で当社に多大な損害を与える各種契約を締結した。
  3. 事案調査時に真実を説明せず、問題を複雑化させた。

■これを見ると、解雇時点の東レの事実認定は、事業部長Fの「罪」はあくまで代表者印の不正使用であり、偽造ではないことは明らかである。18年11月の懲戒解雇、19年2月の中央署への告訴という3カ月の間に、印鑑偽造を認定したことになるが、前述の通り東レが証拠提出している印章鑑定は6月のものだ。
■東レの不正会計疑惑は真相が有耶無耶のまま、年の瀬を迎えることとなった。この事案は不可解な出来事が多い。当サイトが7月に記事にしたソーシャルレンディング会社との和解もしかり、問題の事業部長Fは行方不明のまま、裁判所の呼び出しに応じていないのも奇妙だ。
■そのような中にあって、当の日覺本人は、財界のご意見番として社外取締役の導入や四半期決算開示を否定する発言を繰り返している。例えば今年10月28日付『日経ビジネス』のインタビューなどでは、「一番嫌いなのは、『外部の目』とか『第三者で』という言葉ですね」と述べている。不正会計疑惑を抱えた社長が言うことか、と思わざるを得ない。
(文中敬称略、つづく)

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