ジャスダック上場アスラポート・ダイニング、親会社阪神酒販との巨額M&Aで収益性悪化の一方、今期から親会社決算を不開示に


■牛角やどさん子などの飲食店運営のアスラポート・ダイニング(JQ:3069)の28年3月期は売上23,495百万と前期比110.4%の大幅増収だが、営業利益は816百万(16.7%増)と微増。営業利益率は前期6.2%→3.4%と収益性は悪化している。特に、有利子負債が5,220百万から10,734百万と倍増しているが、この主な理由は親会社・阪神酒販(とその関係会社)との間で行われた相次ぐM&Aである。これにより、阪神酒販側には27年3月期と合わせて40億円以上の現金とアスラポート株が渡っている。上場会社として独立性は大丈夫か。
■28年3月期、最初のM&Aは5月の元々特定目的会社だった在英3法人である。T&S Enterprise(London)Limited、S.K.Y. Enterprise UK Limited、Sushi Bar Atari-ya Limitedの三社をそれぞれ27%から90%、21%から71%、30%から100%に買い増しするため、阪神酒販の子会社であり、アスラポートの兄弟会社・東洋商事に合計700百万を支払った。DCF法による評価で、株価算定はアストライズ会計事務所が行った。
■10月には九州乳業㈱を取得。これも東洋商事からで、清新監査法人がDCF法により1400百万と評価。334百万の支払いと、1,065百万分の新株を発行(1株当たり510円、2,090,000株)。東洋商事は割当られた株をすぐさま売却している。
■今年2月、今度はハワイのPacific Paradise Foods,Inc.(PPF)を東洋商事から取得。評価額は5百万米ドルで、算定はDCF法で松村公認会計士事務所。1ドル113.33円とし日本円で566百万を、100百万の支払いと、466百万分の新株を発行(1株当たり399円、1,169,724株)。九州乳業買収の際に東洋商事に対して発行した分を合わせると、15.07%の希薄化が生じたことになる。
■ちなみにこの直後の22日、東洋商事は夢真ホールディングスのオーナー・佐藤総合企画が持つ小僧寿し株13.76%を818百万で取得しており、その原資の一部にPPF買収対価と新株の売却代金が充てられたと考えられる。22日提出の大量保有報告書には、小僧寿し株取得資金のうち500百万をHSIG(=阪神酒販)が貸し付けたとあったが、25日提出の訂正報告書ではその旨が削除されている。
■3月下旬には㈱DSKグループなる会社の90.71%をHISGから730百万で取得している。DSKグループの純利益は25年3月期△396百万、26年△81百万、27年93百万と買収直前まで赤字だった(純資産は25年3月期106百万、26年286百万、27年379百万と増加)が、松村会計事務所のDCF法による算定で730百万と評価された。
■前々期の26年9月には、阪神酒販からレゾナンスダイニング㈱を670百万で取得している。算定はアストライズ会計事務所だった。ここ数年のレゾナンスダイニングを含めた5件のM&Aで阪神酒販側に流れた現金と株式は4,066百万にも及んでいる。
■結果として、のれんは1,810百万から3,814百万に膨らんでいる。もちろん企業価値評価に絶対はなく、割高か割安かなどは意見が分かれるだろうが、親会社との間でこれほど巨額かつ頻繁なM&Aが行われるのは稀だ。
■アスラポートは5月16日、阪神酒販が親会社に該当しない、とするIRを出した。子会社の東洋商事の持ち分を合わせて40%を保有していたが、〈東洋商事が阪神酒販の子会社にあたるかどうか社内で再度精査〉した結果、東洋商事は阪神酒販の子会社ではないということにすることで、40%を下回ったという。だが、東洋商事と阪神酒販の間で資本関係に変化はなく、阪神酒販のホームページでは依然として東洋商事、その親会社の田中文悟商店はグループ会社と記載されており、親子関係解消は形式的なものに過ぎない。これにより、アスラポートは毎年8月頃に公表されていた阪神酒販の財務諸表を不開示とする方針だというが、作為的な情報統制であり、情報開示の姿勢は批判されるべきだ。
(文中敬称略)

阪神酒販の6月23日付けの組織図
阪神酒販の6月23日付けの組織図

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