GPIFや日銀の巨額公的資金を運用「日興アセットマネジメント」の常軌を逸したコンプラ意識(1)CIO・最高投資責任者によるパワハラ、女性蔑視、「賭け麻雀」が常態化


■資産運用部門の「部長会」会場の赤阪「游玄亭」
■資産運用部門の「幹部会」会場の赤阪「游玄亭」

■26兆円もの巨額資金を運用する日興アセットマネジメント(社長・安倍秀雄、三井住友トラストHDグループ、以下日興アセット)の資産運用部門で、最高投資責任者(CIO)によるパワーハラスメントや1日5万~10万円の現金をやり取りする賭け麻雀が常態化していることが、複数の関係者への取材で分かった。日興アセットは11月の内部調査でパワーハラスメントや賭け麻雀の事実を認定したものの、パワハラ発言は「特定個人へ向けたものではない」、賭け麻雀は「違法とまでは言えない」として事実上不問に付しており、上層部のモラルやコンプライアンス感覚にも疑いをかけている。
■パワーハラスメントが指摘されているのは日興アセットで13年からCIOの立場にある辻村裕樹という男で、昨年、専務執行役に就任。関係者によると辻村がCIO就任後、3カ月に一度のペースで赤阪の高級焼肉店「游玄亭」などで、運用部門の幹部クラスの幹部十数人を集めた「幹部会」という飲み会が開催されるようになったという。その席上で辻村は、幹部の男性一人に対し「子供のいない夫婦は欠陥がある。嫁を検査に連れていったらどうだ」「離婚は癖になる。お前は浮気してまた離婚するに決まっている」と、あからさまなハラスメント発言を毎度のように言い放っていたという。
■この幹部会では他にも「女は出産して育休を長々とった挙句に、すぐ会社を辞めるから困る」といった女性蔑視発言が飛び交い、部下たちがそれに調子を合わせるという異様な雰囲気に包まれていたという。女性蔑視的な風潮が人事方針にも影響しているからだろうか。資産運用部門には約200人以上のファンドマネージャーやアナリスト、トレーダーがいるが、日興アセットの運用部門の管理職に女性はおらず、女性社員の割合は1割にも満たないという。日興アセットは女性活躍を掲げる「女性のエンパワーメント原則」に18年に署名しているが、現場はまったく意に介していないのだろう。
■また、辻村は月に一度、数名の部下を連れ立って新宿、渋谷などの繁華街の雀荘で、丸一日賭け麻雀を打っていた。1回の麻雀で10万円程度の現金がやりとりされるため、参加する場合「最低でも5万円程度の現金」持参するように呼びかけられていた。関係者によると、辻村は元々賭け麻雀が好きだが、CIOに就任してからは、「幹部会」参加者や、運用部門で働くヒラ社員数十名が駆り出され、勤務中にも辻村から負け金の取り立てが部下になされるなど、運用部門で公然化させていた。
■パワーハラスメントや女性蔑視発言が幹部たちの会議体で公然と繰り広げられ、賭け麻雀が慣習化しているのだ。日興アセットの運用資産のうち、約1兆円はGPIFから委託を受けているもの。また、日銀は日興アセットのETFを約9兆円保有しており、実質的に10兆円以上の公的資金を預かっていることになる。公的資金を預かる立場にあり、近年、SDGsなどの概念の広がりで高い倫理性が求められている資産運用会社として、到底容認できるものではない。
■ところが、日興アセットは辻村の行為に対して驚くべき裁定をしている。同社は辻村の行為に関して内部通報を受け、今年9月頃から、事実関係の調査を開始。上記のようなパワハラの発言や賭け麻雀の事実を認定した。
■しかし、なんと、コンプライアンスと人事部で構成される「内部通報審議会」は11月中旬、パワーハラスメントは「問題ある発言だが一個人を名指しするものではない」とし、賭け麻雀は「違法とまでは言えない」とする結論を出したという。「辻村に対しては1週間程度の謹慎処分が出たものの、実質的に冬休みが伸びだだけ」(関係者)とのことで、事実上、パワハラや賭け麻雀は不問に付された
■仮に、辻村は個人名を挙げていないにしても、「幹部会」に出席しているメンバーの中で、子供がおらず、離婚歴があるのはパワハラ被害を受けた幹部だけであり、名指しはしていない、と解釈するのは極めて恣意的である。
■賭け麻雀についても、原則的に犯罪行為であるし、年間の負け金が100万円を超える社員もおり、勤務時間中にも負け金の取り立てがメールで行われることもあった。上司部下の間で不適切な債権債務を生じさせている。娯楽の範囲と片付けるのは、世間の常識からかけ離れているし、「多少の違法行為なら許容される」という雰囲気が社内に蔓延してしまうのは、インサイダー取引などのリスクがある資産運用会社として、極めて危険である。
■問題はここからだ。実はこの驚くべき裁定が行われた同じ日、パワーハラスメント被害を受け、辻村の行為を内部通報した幹部の男性が、降格処分を受けているのだ。その理由は「部下に対するパワーハラスメント」。その経緯を精査すると、幹部が内部通報した後に、この男性に対する調査が始まっており、通報に対する“報復処分”の疑いが浮上している。詳細は追って報じる(文中敬称略、つづく)。

GPIFや日銀の巨額公的資金を運用「日興アセットマネジメント」の常軌を逸したコンプラ意識(1)CIO・最高投資責任者によるパワハラ、女性蔑視、「賭け麻雀」が常態化” への3件のフィードバック

  1. セールスでも本部担当には女性を置かない事で、有名です。現場周りにはたくさんいますが。給料も能力ではなく、性差がありそうな感じ。

    1. 日興の別の関連子会社では、パワハラ・セクハラならぬ、中途採用に対する嫌がらせが恒常化していますよ。例えば、
      ・50歳以上の社員に対する問答無用の強制退職、降格
      ・(仕事上の失策もなく、成果も普通に出しているのに)賞与を4分の1まで減額。
      ・(やはり仕事上ではきちんと成果を出しているにもかかわらず)退職金にリンクする基本給を2割近く減額。(長く勤めると退職金が逆に減るよ、という暗黙のメッセージ)
      など。個々の中途社員に応じて嫌がらせを「カスタマイズ」しているという構図です。

  2. なぜ中途社員のみにそのような嫌がらせをするか、ということなんですが、そうやってこじ開けた椅子を、日興証券本体で出世できなかった人間の受け皿に使うためなんですね。日興証券もSMBCの子会社となり、銀行から天下ってきた人間にポジション取られてますから、ポスト対策に必死なわけです。

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