東証2部上場の酒屋チェーン「カクヤス」、顧客飲食店の廃棄物を無許可回収 ごみ処理業者への「下請けいじめ」も


■カクヤス店舗
■カクヤス店舗

■東京23区を中心に酒販店「カクヤス」を全国約170店舗展開し、昨年12月に東証2部に新規上場したカクヤスグループ(社長・佐藤順一)が、顧客の飲食店から店の営業で出たごみを、廃棄物の収集運搬の許可がないにもかかわらず、顧客へのサービスとして回収していたことが関係者への取材で分かった。また、カクヤスが飲食店から収集したごみの処理を発注していた業者に対して、度重なる値下げや業務範囲の拡大など、「下請けいじめ」とも取れる要求を断続的にしていたことも分かった。カクヤスは三代目社長・佐藤順一主導で、店舗での酒の小売りから、居酒屋やレストラン、バーなどの飲食店への業務用酒類の宅配にシフトし業容を拡大したが、その裏で顧客飲食店に対する廃棄物処理法に抵触する過剰なサービスに及び、しわ寄せを下請けに押し付けている構図が浮かび上がった。
■飲食店で出た空きビンやペットボトルは原則、飲食店側で事業系廃棄物として処理しなければならないが、酒販業界の慣行で、得意先へのサービスとして空きビンは酒販業者が回収していた。この点、無許可での廃棄物収集運搬となるリスクがあるが、あくまで販売しているのは中身の酒であり、回収しているのは酒販店が貸し出した容器であり廃棄物ではない、という立て付けで黙認されていた。
■ところが、カクヤスでは空き瓶やペットボトルだけでなく、飲食店の営業で生じた廃棄物まで回収し、処理業者に排出していたという。07年からカクヤスの廃棄物処理を請け負っているごみ処理業者は当サイトの取材に「明らかにカクヤスの取り扱っている商品ではない、調理器具、食器、割れたガラスや紙くずなどが含まれていた。ひどい時には、ギターなどの楽器も押し付けられていた」と証言する。
■前述の通り酒販業界では、空き瓶の無償回収は得意先の飲食店側へのサービスとして続いてきた。しかし近年は酒販業者もコストの負担に耐え切れず、業界団体が飲食店側での処理を求めるなど、酒販・飲食業界の課題として議論されており、一部の酒屋は有償での回収に切り替えるなどの対応をしていた。そうした背景を踏まえると、カクヤスが急速な業容拡大の中で、飲食店に競合の酒販業者からの切り替えを促す際に、サービスのひとつとして飲食店で出たごみを持ち帰っていた可能性はある。
■だが、カクヤスは過剰サービスのツケを下請けのごみ処理業者に寄せていたようだ。処理業者によると、10年頃にカクヤスがごみの収集単価を従前より2割値下げするよう要求されたという。この頃、処理業者は売上の大半をカクヤスからの回収業務に依存しており、拒否できる状況にはなかったという。13年にも、単価のさらなる引き下げの要請を受け、単価は据え置く代わりに、ダンボールの回収をタダで請け負うことになった。
■また、処理業者が収集するカクヤス店舗は、07年頃は約100店舗だったが、12年頃には約160店舗と増加。一部地域はこの業者が収集運搬の許可を得ていない自治体も含まれていた。こうした業務範囲の拡大も、業者に相談無く一方的に決定されたため、やむを得ず一部無許可で回収をせざるを得なかったという。
■こうした買いたたきや取引条件の一方的な変更に不満を持った処理業者は16年頃、取引の見直しを求めた。するとカクヤスは17年頃に処理業者との間に廃棄物管理業者を介在させ、管理業者を通じて再度値下げ要求を行ってきたという。19年には、この処理業者とカクヤスの契約は解除になった。
■カクヤスが介在させた管理業者は廃棄物の収集運搬の許可を持っていないが、一部の期間はこの管理業者がレンタカーを借り、カクヤス店舗を回ってごみを回収していたという。これもカクヤスによる飲食店からのゴミ回収と同様に、廃棄物処理法に違反している可能性がある。カクヤスは昨年頃からごみの回収を取りやめたという。
■処理業者がカクヤスと契約を結んだ頃から、カクヤスの代表は現社長・佐藤順一である。宅配の拡大路線を執る一方で、産業廃棄物処理法や優越的地位濫用規制といったコンプライアンス意識に甘い部分があったと思われる。当サイトはカクヤスに事実確認を求めたが、期日はまでに回答はなかった。
(文中敬称略)

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