仕手株「クレアホールディングス」を高値掴みする東証1部ナック創業者、 ナック株を担保に信用取引か


■昨年6月頃から急騰するクレア株
■昨年6月頃から急騰するクレア株

■ウォーターサーバー「クリクラ」事業やダスキン事業の東証1部ナックの創業者で、同社株を約12%保有する西山由之が今月20日、東証2部上場のハコ企業「クレアホールディングス」(社長・黒田高史、以下クレアHD)株式を7.04%取得したとする変更報告書を提出した。西山は昨年12月22日に5.02%の大量保有報告書を提出しており、1月中にもクレアHD株を買い増したことになる。
■クレアHDを巡っては、過年度に増資を割り当てるなど友好的な関係にあったセノーテキャピタル(社長・岡本武之)が昨年、経営権の取得に乗り出したため、プロキシーファイトが繰り広げられている。セノーテキャピタルは西山について〈私どもの株主提案に賛同し、今後も株主として支援、協力していきたいとのご意向を頂きました〉と述べており、セノーテ側の陣営としてクレアHD株を取得したと思われる。
■時価総額220億円のナック主要株主ともあれば、潤沢な資金力を有するように見えるが、実際の懐事情は厳しそうだ。変更報告書によると7.04%の取得代金約13億円のうち、自己資金はわずか4560万円で、大半は野村證券との信用取引により調達されている。
■西山は東京都町田市や新宿区に不動産を保有しているが、大半は銀行の担保に入っているため、信用取引の担保に供されているのは西山が保有するナック株と思われる。西山は個人と資産管理会社㈱キャピタル、西山文江の共同で12.51%を保有しており、その時価総額は約28億円ともなるから、まだ追加取得できる余地はあると思われる。
■だが、問題は、西山のクレアHD取得価格が、同社株式の実質的価値より相当高値だということだ。西山のクレアHD株の持株数は17,559,300株で、取得代金で割ると平均取得価格は74.3円となる。クレアHDの1株当たりの純資産は直近の21年3月期第2四半期で9.32円。今後も業績が急拡大する確証もないことから、ファンダメンタル的に見て74円は実質価値との乖離が大きい。
■とはいえ、長年、20円から40円程度で推移していたクレアHD株だが、昨年6月頃から急騰している。だがこれは、ZOZOTWONの前澤友作の親族がクレアHDに経営参加するという情報が材料視されたためだ。だが実際は前澤自身は否定し、その後も前澤の親族や会社関係者が経営参加している事実はない。実態のない情報で株価形成がなされたものであるから、株価は元の水準に戻る可能性が高い。
■つまり定量的・定性的に見ても西山の取得価格は高値掴みと言わざるを得ず、そのような冒険的な取引にナック株が担保となっている場合、クレアHD株が下落するとナック株が処分されるリスクが高い。
■なお、西山はナックの代表を11年5月に、「世代交代」を理由として退任しており、13年3月期に「創業者功労金」5億円を受け取っているが、退任後から直近期まで名誉会長として1人あたりの役員報酬を超える6000万円もの“給与”を貰い続け、ナックに自身の西山美術館のチケットを年間約4000万円分買わせるなど、深い関係にある。当サイトはナックに西山によるクレアHD株取得のリスクや、多額の給与の計算根拠などについて取材したが、期日までに回答はなかった(文中敬称略)。

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