【ミニ情報】監査法人トーマツ、若手会計士の間で修了考査対策テキストの「海賊版」が蔓延か 著作権法違反の恐れ


トーマツ■監査法人トーマツ(東京都港区、包括代表:觀恒平)に勤務する公認会計士試験合格者十数名の間で、公認会計士になるための修了考査試験に向けたテキストが不正に複製・販売されていたことが、同法人関係者への取材で分かった。複製されたのは資格予備校TACが今年度の修了考査対策講座で配布した会計実務、監査実務、税務実務などの問題集やテキスト11冊で、取りまとめ役のトーマツのスタッフがこれらの海賊版テキストを利用するスタッフから現金を徴収していた形跡があり、著作権法に違反する可能性が高い。若手会計士のモラルが問われている。
■修了考査は、公認会計士試験合格者が実務経験などを経た後、会計士資格を得るために受ける最後の試験である。関係者によると、海賊版テキストを購入したのは三菱UFJフィナンシャルグループの与信業務を担当するNSAという監査チーム(担当は郷田英仁パートナー)に所属するスタッフで、今年度の修了考査試験を受ける公認会計士試験合格者約30名のうち分かっているだけで15名。NSAチームのスタッフ1人が6月にTACの試験対策講座を受講しテキストを入手し、取りまとめ役のスタッフが7月末頃に印刷業者に発注、8月9日までに全員にTACの海賊版テキストが送付された。
■TACの講座は1人あたり十数万円以上の料金がかかるが、海賊版テキストは1人あたり1万数千円で販売されていた模様。証券チームなど他のセクションにも打診がされており、トーマツ内部の海賊版利用者全員の正確な人数は分かっていない。TAC側からすれば、本来得られたであろう受講料を害されているという点において、トーマツのスタッフが行った行為は著作権法に違反している可能性が高い。
■会計士の一人は一連の不正行為についてこう語った。
「海賊版テキストの利用は会計士業界では半ば慣行化している。トーマツであれば1年目から年収600万円以上は間違いないので、お金がなくて仕方なく手を染めたというより動機は単純にケチな根性だ。おそらく不正をしているという意識は希薄だろう。今時の会計士は一般就職に抵抗がある方や、高収入狙いの方々が消去法的な観点で目指しているのが大半で、公認会計士試験に合格すれば9割以上が大手監査法人の内定をもらえる。会計士一般に求められているような高度な倫理観を持ち合わせている(あるいはそのような動機をもって志す)人の方が珍しく、プロフェッショナリズムや職業的懐疑心のような志は空文化しているからこそ、ケチな犯罪がまかり通っているのだろう」
■また本件に付随して、海賊版テキストの取りまとめ役をしていたスタッフは、同僚に対してハラスメント行為を行っており、それが原因で退職者が出ているとの情報もある。スタッフの一部は上司へ相談をしていたようだが、「彼(取りまとめ役)は元々、ブラック企業のユニクロで働いていたからしょうがないんじゃないか」と取り合わなかったという。ブラック企業出身だから仕方ないという論理は浮世離れと言うほかないが、こうしたガバナンスの欠如が、組織内での不正行為の蔓延を招いているのかもしれない。なお、トーマツは当サイトの取材に対して、事実関係を確認中とし、取りまとめ役スタッフの在籍については「個人に関する情報のため、回答できかねます」と述べた。
(文中敬称略)

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