【ミニ情報】決算発表延期の東証一部ブイキューブ、更なる財務制限条項抵触は不可避の状況か(追記あり)


■ウェブ会議システム大手の東証一部ブイキューブが、明日予定していた当期第3四半期決算の発表を来週14日に延期し、関係者に動揺が広がっている。延期理由は〈当社の保有する資産の会計処理〉に関する監査法人との協議に時間を有するためと説明している。同社の前期業績は売上7,239百万円(前期比19%増)、営業利益36百万円(前期比△89.5%)、経常利益△197百万円(前期179百万円)の赤字。当期第2四半期時点では売上3067百万円(前期比△9.7%)、△427百万円の営業損失と赤字幅を広げる中、監査法人と争点になっていると思われるのが無形資産だ。総資産9,860百万円の半分の5,027百万円はソフトウェア(仮勘定含め3,007百万円)やのれん(2,015百万円)などの無形資産で、純資産3,111百万円を超過している。
■減損損失の額によっては、借入金に付されている財務制限条項に抵触する恐れがある。三菱東京UFJ銀行が幹事行のシンジケートローン1,602百万円と三井住友銀行の581百万円の合計2,183百万円には、①過年度の決算期の末日における純資産の部の金額を、直近の決算日末日における純資産の部の金額の75%以上に維持すること(連結)、②2期連続して営業損失を計上しないこと(連結)、③各年度の決算期の末日における有利子負債/(営業利益+減価償却費+のれん償却費)を0以上~3.5以下に維持すること(連結)、の三つの財務制限条項が付されている。
■ブイキューブは16年12月期の時点で③の有利子負債・キャッシュフロー倍率の条項に抵触しているが、〈財務制限条項に係る期限の利益喪失につき権利行使しないことについて当該取引金融機関の内諾を得た、もしくは合意に向けて前向きな話し合いを進めております〉としていた。当期に新たに抵触すると思われる条項は①の純資産残高だ。前期純資産計上額は3,979百万円であり、既に当期第2四半期時点で837百万円の純損失を出しているブイキューブは、あと126百万円の赤字を出すと財務制限条項の①に抵触する恐れがある。増資などをしない限り赤字体質に陥ったブイキューブにとって抵触は不可避だ。(※11/9追記:同社は本年9月にひふみ投信マザーファンドへの第三者割当増資を行っていることを付記しておきます
■営業損失について定めた②については、ブイキューブは2013年12月にマザーズ上場を果たして以降、前期に初めて最終赤字を計上しているが、営業利益は黒字だった。過年度の連結営業利益率を見ると12年12月期5.2%、13年12月期10.9%、14年12月期8.6%、15年12月期5.7%、16年12月期0.4%(36百万円)と稀に見る僅かな黒字であった。
■しかし、16年12月期にはソフトウェア減損損失が180百万円特別損失計上され、バランスシートにソフトウェア仮勘定が921百万円資産計上(15年12月期計上額は67百万円)されていることに留意する必要がある。仮に減損の対象となったソフトウェアが定期償却(5年の定額法)されるか、仮勘定計上されているソフトウェアが本勘定として償却が開始されていた場合、販管費計上されている減価償却費が増加し営業損失となっていた可能性が高い。その場合、当期も通期決算で営業損失を出すことで財務制限条項の②に抵触する恐れもあった。
■なお、16年12月期中には、殆ど開示がされていない奇妙な動きもある。中国における販売代理店で連結子会社のBRAV International Limitedの代表、陳志剛がBRAV社の新株予約権を行使し、陳に発行された株をブイキューブが881百万円で買い戻しているのである。BRAV社は13年8月に連結子会社化しており、13年12月期の持分は30%だったが、過年度に少しずつ直接・間接の持分を増加させてきた。14年12月期に持分を54%となり(追加取得価額236百万円)、15年12月期に100%となっていた(追加取得価額305百万円)。にもかかわらず昨年に追加コストを余儀なくされたのは、どのような理由があったのだろうか。
(文中敬称略)

【ミニ情報】決算発表延期の東証一部ブイキューブ、更なる財務制限条項抵触は不可避の状況か(追記あり)” への1件のフィードバック

  1. お言葉ですが、既に期中でグループで17億ほどひふみ他で調達してますので、純資産の見込みが間違ってると思いますよ。

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