■今月1日発売の『ZAITEN』2018年11月号が『クレディセゾン「2トップ共謀」経営18年』(同誌ガバナンス問題取材班)と題し、東証一部のクレジット大手・クレディセゾン(社長・林野宏)に関する記事を掲載した。詳細は同誌記事に譲りたいが、クレディセゾンが約10年をかけ昨年末に始動させた「共同基幹システム」に関し計上したソフトウェア約2000億円の資産性に疑義を投げかけている。
■クレディセゾンは「セゾンカード」と「UCカード」で使用してしているシステムを統合した「共同基幹システム」の開発に08年から着手。当初は11年頃の稼働を見込んでいたが14年に延期された。日経新聞の『ITpro』昨年11月23日付記事によると、「貸金業法や割賦販売法の改正に伴い業務プロセスや要件の見直し」が主な理由であるとされる。ところが14年も始動直前に再延期となり、17年末の始動となった。
■過年度のバランスシートを見ると、08年から「共同基幹システム」に供すると思しき「ソフトウェア仮勘定」の計上額が増加し、12年3月期までに約80,000百万円増加している。このことから当初の「共同基幹システム」の予算は約800億円であった可能性がある。再延期後の始動予定だった15年3月期のソフトウェア仮勘定は142,043百万円で、始動後の18年3月期は本勘定を合わせると210,605百万円がソフトウェア資産として計上されている。
■つまり「共同基幹システム」への投資額は当初予算から約3倍に膨れ上がっている可能性が高い。みずほフィナンシャルグループの新勘定系システムへの投資額が4000億円と言われる。事業内容に違いはあれど、みずほFGの数十分の一程度の規模しか持たないクレディセゾンに、2000億円のシステム投資が回収可能か、という当然の疑念は残る。なお、共同基幹システムが使用されるクレジットカードサービス事業収益はピーク時から縮小している。
■自社利用ソフトウェアは原則的に、5年以内の定額法で償却されることが定められている(ソフトウェア実務指針21項)。クレディセゾンの場合は仮勘定計上されているものを合わせると、向こう5年間は毎期約42,000百万円の償却費がかさむこととなる。同社の純利益は06年3月期と17年3月期を除き40,000百万円を超えたことが無く、この償却額は重い。そこでクレディセゾンは償却期間を「10年から15年」(同社広報)と長期に設定している。
■クレディセゾンの2019年3月期1Qの減価償却費は3,268百万円と前年同期738百万円に比して2,530百万円増加している。この増加分が「共同基幹システム」に関するものと仮定すると、通期で見ると単純計算で約10,000百万円となる。仮勘定となっている分の償却が始まっていないとしても、かなり長期の償却が行われている可能性が高い。
■『ZAITEN』記事でも触れられているが、クレディセゾンの過大なシステム投資の背景には、持分法適用関連会社のセゾン情報システムズ(ジャスダック上場※訂正、社長・内田和弘)へ売上を付けるという目的もあった可能性がある。クレディセゾンは過去10年間に渡り、セゾン情報システムズの5割近い得意先であった。システム開発が終了した後の同社売上高は大幅に減少している。
クレディセゾンの過年度業績(単位:百万円)
決算期 | 2006.3 | 2007.3 | 2008.3 | 2009.3 | 2010.3 |
事業収益 | 274,666 | 333,683 | 345,586 | 327,089 | 306,855 |
経常利益 | 71,149 | 80,157 | 58,111 | 30,953 | 39,106 |
純利益 | 42,219 | 14,821 | 26,755 | △ 55,513 | 18,680 |
総資産 | 2,062,735 | 2,299,607 | 2,450,637 | 2,407,064 | 2,374,129 |
純資産 | 360,717 | 399,828 | 418,661 | 320,595 | 341,405 |
決算期 | 2011.3 | 2012.3 | 2013.3 | 2014.3 | 2015.3 |
事業収益 | 285,712 | 244,009 | 244,405 | 247,577 | 259,076 |
経常利益 | 33,762 | 38,590 | 53,214 | 44,408 | 43,687 |
純利益 | 12,829 | 9,453 | 32,770 | 25,552 | 12,628 |
総資産 | 2,231,246 | 2,155,906 | 2,141,802 | 2,285,943 | 2,373,229 |
純資産 | 347,915 | 355,727 | 394,868 | 422,829 | 447,082 |
決算期 | 2016.3 | 2017.3 | 2018.3 | ||
事業収益 | 269,919 | 278,944 | 292,183 | ||
経常利益 | 43,802 | 53,065 | 56,717 | ||
純利益 | 26,163 | 42,253 | 38,329 | ||
総資産 | 2,550,990 | 2,720,051 | 2,940,027 | ||
純資産 | 418,988 | 446,882 | 480,669 |