民事再生の「HOOTERS」運営会社、元社長による「融資詐欺」疑惑が浮上 倒産寸前に5000万円の借入、全額不正出金


■「HOOTERS」1号店の赤坂店
■日本における「HOOTERS」1号店の赤坂店

民事再生手続きに入っている米国発飲食店「HOOTERS」(フーターズ)運営会社㈱エッチジェー(新宿区、社長・松田進一)を舞台として、元社長による融資詐欺疑惑が浮上していることが分かった。同店は銀座、赤坂などの繁華街を中心に展開し、タンクトップにホットパンツ姿のチアリーダー風の若い女性が、接客やパフォーマンスをすることが知られていた。
■信用調査会社のレポート等によると、エッチジェーは2008年6月に米国Hooters of Americaのフランチャイザーとなり、10年10月、一号店となる赤坂店を出店。その後、出店と共に業績を拡大し、16年9月期は6店舗の運営で売上高17億円、当期純利益3千万円だった。しかし、人員不足や店舗戦略などの失敗から減収が続き、18年9月期は売上高15億円、純損失が約1億円で、債務超過と資金ショートの危機に陥っていた。
■そうした中で今年1月、エッチジェーで尋常ならざる事態が発生する。同社代理人の報告書によると〈平成31年1月には、当社の代表者が、取締役会の承認を経ることもなく、申立人と無関係な業者から、申立人名義の預金口座に5000万円の入金を受け、同日、無関係な第三者(行政書士)に5000万円を送金〉したのだという。
■18年9月期の現金及び預金残高は約2800万円程度であり、同社にとって金額的に小さくない。かつ、問題の5000万円は短期融資であるから、無関係な行政書士に払い込むことは自殺行為である。案の定、この「5000万円問題」が引き金となり、エッチジェーは民事再生手続きに進んでいった。
■この事案の詳細を見ると不可解な点が浮かび上がってくる。5000万円の調達をしたのは、エッチジェー創業時から長く取締役を務めてきた田辺満男である。田辺は、18年7月にエッチジェーの社長に就任。同年9月頃、報告書で〈無関係な業者〉とされている、インバウンド向け決済サービスのN社(イニシャル)に「短期融資」を申し込んでいた。
■田辺がN社に示した資料を見ると、「年間売り上げも高水準でキープ」していると好業績をうたい、「年間の最大ピークである年末年始~春節での集客を先行して強化する為」「ナイトスポット準備(人材確保&育成)費用、ナイトスポットBrand展開等で先行して資金を投入する為」として、5000万円の融資を引き出した。
■だが、前述の通り田辺はその5000万円を入金後すぐに、行政書士・荻原秀介に送金する。その使途は明らかになっていないが、関係者の取材で意外な事実が判明した。実は田辺と荻原は、N社による融資実行前から、金融ブローカーの仲介で知り合っていた。つまり田辺は、会社の運転資金として5000万円の借入を行いながら、実際には運転資金には使わず、知り合いの行政書士に送金したということになる。これは融資詐欺ではないか。
■田辺は「5000万円問題」が発覚した今年1月に代表取締役を解任されている。同じ時期に松田進一も取締役を辞任するが、2月にまた代表取締役に戻っている。「5000万円問題」の最も不可解な点が、エッチジェーが田辺や荻原行政書士を法的に追及しないことである。倒産の引き金を作った人物らの責任を有耶無耶にしたまま、再スタートは図れるのか(つづく)。

(文中敬称略)

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