パチンコ版権事業から「医療ビジネス」に乗り出したジャスダックのハコ企業Nuts、“架空増資”紛いの資金還流


■Nutsと達山の資金還流の相関図
■Nutsと達山の資金還流の相関図

およそ2年前、パチンコ版権ビジネスから高級会員制医療施設の運営という、性質の全く異なる事業への進出を決めたジャスダック上場Nuts(社長・森田浩章)。旧社名をコモンウェルス・エンターテインメントといい、赤字続きで債務超過寸前のボロ会社であったが、医療事業のトップに著名な外科医である加藤友朗・コロンビア大学医学部教授を据えたことで、低迷していた株価は高騰。度重なる増資により自己資本を回復した。しかしながら、その裏に増資資金還流のカラクリがあった。
■Nutsは2016年3月期末時点で純資産13,756千円と債務超過寸前であったが、16年5月同年11月18年1月今年6月の4度のエクイティファイナンスにより資本を充足した。しかしその間の財務状況を見ると、経営陣は調達資金を食いつぶしていると思えてならない。
■例えば、2018年3月期の売上高は147,007千円(前期892,568千円)しかないのにも関わらず、交際費が前期比の約3倍の125,104千円、支払手数料も2倍の134,685千円に膨れ上がっている。役員の人数が1名増員しただけなのに、役員報酬は171,060千円(前期36,540千円)と激増。2019年3月期はさらにひどく、売上高121,288千円と減収だが、役員報酬は230,160千円、支払手数料は353,321千円と売上の2倍以上だ。(※一部訂正)
■Nutsのバランスシートを語る上で最も重要なのが、全額貸倒引当金が計上されている約14億円の「長期貸付金」である。この大部分にあたる約13億円が㈱ジャパンアミューズメントエージェンシー(社長・石原一孝、以下JAA)という会社に対する不良債権だ。
■JAAはNutsの元子会社でもある。02年8月にJAAの第三者割当増資を引き受け、03年3月に株式交換で連結子会社化。ところが05年6月、NutsはJAAの株式を1株1円(16,100円)で、JAAの〈現任の役職員〉に譲渡し、連結除外してしまう。貸付はこの間の04年から05年にかけて実施された。債権は回収されることなく、時だけが過ぎた。
■問題はここからだ。JAAの株式譲渡の相手方であり、JAAの実質経営者である可能性の極めて高い人物が、連結除外から10年以上経った16年に、Nutsのエクイティファイナンスを引き受けているのだ。Nutsは同年11月、コロンビア合同会社と長谷川隆志という個人に、それぞれ1株72円の新株発行(9.9億円調達)と行使価額72円の新株予約権を発行。長谷川に割り当てられたストックオプションは行使されることなく償却されたが、コロンビア合同会社に匿名組合出資していたため、17年3月に現物分配により14.5%の大株主となった
■実はこの長谷川は、JAAがNuts子会社となった頃から16年9月まで同社の代表取締役で、13年3月期までNutsの大株主の一人であった達山隆志と同一人物だ。いわばNutsにとって最大の債務者が増資を引き受けているのである。しかしながら、第三者割当増資の適時開示(21頁等)では、達山とNutsの関わりは1行も触れられていない。Nuts取締役会にはJAA出身者もいるはずで、知らないはずはないのだが。
■達山との関係はこれにとどまらない。Nutsは16年5月に、現社長の森田を割当先とした増資で調達した資金で、ブロスジャパンという会社からコンテンツ事業の営業上の地位を取得した。Nutsは08年3月期中に、ブロスジャパンに対して敷金・保証金・前渡金などの名目で合計3億円を貸し付けているが、不良債権化していた。これに2億円の譲渡対価を上乗せした5億円で、前出・コンテンツ事業の地位を取得。増資と貸倒引当金戻入益3億円を計上した。ところが、その後このコンテンツ事業の地位により実現した収益はなく、18年3月期にこの事業譲受に係り計上された権利金は減損。結果として、価値のない権利を使った利益計上が17年3月期中に行なわれた。
■実はこのブロスジャパンの設立にも達山が関与している可能性がある。ブロスジャパンは08年6月27日、当時JAAが入居していた渋谷区神宮前3-1-30に設立された。同じ日、同じ場所に達山が代表を務める㈱CSSが設立されている。そしてこの㈱CSSにも、Nutsから2億円の資金が間接的に流れている。
■Nutsは17年2月、江東区豊洲の高層マンション2部屋を大阪の不動産会社清和ハウジング㈱から約2億円で取得している。これについて説明したIR「固定資産の取得に関するお知らせ」によると、医療事業に係る来客者の滞在場所として使用するとのことであった。実はこの2物件はNutsが取得する同じ月に、前出・達山の支配する㈱CSSから清和ハウジング㈱に名義変更されていた。しかも約半年後の17年9月、物件は港区渋谷区広尾の男性にさらに譲渡されている。そもそも物件を取得する必要性はあったのか。
■JAA、CSS㈱、ブロスジャパンを達山の関係先と仮定すると、Nutsとの間で一部の資金が一回転している。つまり04年から05年にかけてのJAAに対する貸付、08年のブロスジャパンへの貸付、16年5月のコンテンツ事業の地位譲渡対価の支払いにより合計約18億円が達山サイドに流れのちに、コロンビア合同会社を通じて第三者割当増資により9.9億円が還流(うち、達山の出資分は6.6億円)。その後、CSS㈱との不動産取引で2億円が再度、達山の関係先に戻されたことになる。なお、達山は72円で割り当てられた株式を160円~190円台で売却していたようである。
■貸付金が増資資金への還流し、さらに調達した資金が引受先に流れている――世間ではそれを架空増資という――可能性が濃厚である。当サイトは10月7日、Nutsに取材を申し込んだが、同社から期日までに回答がなかった。
(文中敬称略)

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