■香川県を地場とする百十四銀行(東証一部8386、頭取・綾田裕次郎)でまたスキャンダルだ。10月31日、同行は「不祥事件の発生について」と題するプレスリリースにて、行員が漏洩した顧客情報が詐欺事件に悪用された可能性が高いとして、警察の捜査を受けた事実と漏洩に関与した行員を懲戒解雇したことを公表し、同日専務らが記者会見した。リリースや会見だけを見ると、社内調査の結果、事態を重く受け止め自主的に不祥事を公にしたように見える。だが実際は、今月1日発売の月刊誌『ZAITEN』12月号にこの事案が掲載されることが避けられないと判断し、やむを得ず公表に踏み切ったのが真相のようである。
■『ZAITEN』12月号は「百十四銀行『行員が任意同行』隠蔽疑惑」と題して、百十四銀行の事案を詳しく報じている。記事によると、今年の夏頃に香川県警が摘発した反社会的勢力の絡む詐欺事件の捜査の過程で、百十四銀行の元行員と、今回懲戒解雇された百十四銀行東大阪支店の行員の関与が浮上。捜査の結果、詐欺事件に顧客名簿が使用されたことが判明したという。元行員と現役行員が組む詐欺という点で、当サイトで扱った野村証券詐欺事件と似た構図とも言える。
■百十四銀行はこの事件を隠蔽しようと最後まで抵抗していたと思われる。香川県警が東大阪支店を捜査に訪れたのは9月頃である。『ZAITEN』編集部が東大阪支店の支店長に取材を行ったのは10月中旬で、支店長は取材を拒否していた。通常なら警察の聴取があった時点で、速やかに処分が下るだろうが、2か月ほど経った10月末に懲戒解雇となったのは、『ZAITEN』で記事が出てしまうことを受けての判断だったのだろう。
■百十四銀行を巡っては、ちょうど1年前の昨年10月末、渡辺智樹会長(当時)が自行の女子行員が取引先社長のセクハラ被害に遭っているのをただ傍観していたというスキャンダルが発覚し、渡辺が相談役に退いた。この事案、当時の新聞報道では、昨年2月にセクハラ事件発生、5月の社内調査で発覚し6月に報酬・賞与を減額。その後社外取締役の再調査によって10月末に辞任とされていた。しかし実はこれにも、『ZAITEN』編集部から取材を受け、ノーコメントで貫いていたが、記事掲載を受けて辞任したという裏側があった。
■不祥事をできる限り隠蔽し、それが無理となるや、あたかも同行の内部統制が有効に機能したかのようなシナリオをでっち上げる、という行為を繰り返しているのである。往生際の悪さがそうさせるのだろうか。この体質は、もはやトップの首を挿げ替えるだけでは変わらないのではないか。
(文中敬称略)
2018年10月30日付:【ミニ情報】香川県のトップ地銀「百十四銀行」会長辞任、『ZAITEN』12月号掲載の「女子行員セクハラ事件」記事が引き金か