■農畜産物商社でジャスダック上場の太洋物産(東京都中央区)の社長・柏原滋に、利益相反取引や不適切な設備投資の疑いが浮上している。太洋物産は柏原の祖父にあたる故柏原正夫が1936年に創業、バブル崩壊直後の93年3月に店頭公開したが、株価は低迷し現在の時価総額はわずか7億円程度である。市場から見放されたこの商社で、三代目社長による会社私物化が横行しているようだ。
■柏原は、前社長で正夫の長男の故柏原弘が2010年5月、心不全で亡くなった(享年79歳)ため、後を継いで社長に就任した。直近に取引先の破綻などで巨額損失を出していたため、22年9月期は△279,916千円の債務超過だった。その後、増資により自己資本を充当するも、業績は改善せず12年9月期、16年9月期に債務超過に陥った。
■直近期は資産超過を維持しているが、三代目の体制になった11年9月期から19年9月期までの累計の純損益は△42,626千円。問題は、長期にわたる赤字体質の中で、柏原が会社資金を使って不可解な設備投資を敢行したり、利益相反取引が横行しているという疑惑が近年、社内で浮上していることだ。
■関係者によると、柏原の社長就任後、『横浜ラボ』(上写真)という研究開発施設が設置された。太洋物産で扱っている商品の試食や新商品の開発を行うとされていたが、約10年間で成果物らしきものはなく、2名いるはずの専従職員の勤務実態も不明だったという。当サイトが現地を訪れると、事業との関連性が薄いキャンピングカー等が多数、駐車されていた。これも会社の経費で取得したものだという。
■さらに問題視されているのが、太洋物産株を23.5%持つ柏原の資産管理会社・太洋不動産(渋谷区笹塚)との取引だ。太洋物産は太洋不動産に対して、保有する不動産の管理業務や、損害保険代理業務を委託している。信用調査会社の情報によると、太洋不動産の売上高は千数百万円程度で、販売先は太洋物産だけだ。
■一般的に、発行体の代表者が代表を兼任する支配株主との取引は、利益相反取引とならないよう取締役の承認が必要だ。しかし関係者によると、『横浜ラボ』設置や太洋不動産との取引は柏原の独断で実行されており、取締役会に諮られたことはなかったという。太洋物産は時価総額こそ低いが、銀行負債が約80億円あり、経営危機となれば影響を受ける利害関係者が多そうだ。
(文中敬称略、つづく)