住宅ローン「フラット35」不正利用問題、事案の背景に“上場プロジェクト”目論むスタッフサービス創業者の「OGIグループ」


■国交省と財務省所管の独法・住宅金融支援機構(理事長・加藤利男)の低金利の住宅ローン「フラット35」を、一部の不動産業者グループが投資目的に悪用していたことが今年、『朝日新聞』等の報道で明らかになった。機構も5月から本格的な調査に乗り出し、問題の業者グループの融資案件の大半が不正であったことが明らかになった。この事案に関する当サイトの取材で、問題の不動産業者グループが取り扱っていた中古物件の大半が、買取再販首位の㈱ベストランド(港区、社長・村井慎一郎)が売主となるものであることが分かった。同社は数年前から上場を目指しており、そのための業績拡大路線がこの事案の背景にあった可能性がある。
■フラット35は民間の銀行が提供する不動産投資ローンより金利が安いが、自ら居住する目的の物件でなければ融資が出ない。そこで問題の業者グループは、住宅購入者に形式的に住民票を移転させる「なんちゃって」と呼ばれる偽装工作を行っていた。住宅購入者の大半は不動産投資セミナーで勧誘された20代、30代の若者で、住宅価格の相場より過大な融資が実行されていたという。
■問題の業者グループの構成を大別すると、中古物件の売主、セミナーを主催するなど客を連れてくるブローカー、顧客を安心させるためのサブリース業者、住宅金融支援機構の融資を取り次ぐモーゲージバンクの4者に分けられる。ブローカーや仲介業者は多数あり、それぞれが別の売主と繋がっていると思われる。モーゲージバンクは3社ほどあり、審査が緩い取次店に案件が集中している。サブリース業者は行方をくらましており実態が不明だが、問題の業者グループの売主はベストランドのものが大半であった。
■ベストランドは中古住宅の買取再販業者として知られ、業界誌『リフォーム産業新聞』の中古住宅販売戸数ランキングでは近年上位を確保している。同社元社員によると、「長年、上場を目指しており、売りためにはなんでもしてこい、という体質」だったという。ベストランドは当サイトの取材に、不正への組織的な関与は否定している。だが、不正なスキームによって物件を売りさばくことで、売上と利益を得ていたのは事実だ。
■ベストランドの旧社名はマイランドといい、実質オーナーは元スタッフサービス創業者の岡野保次郎率いるGIグループ(旧社名OGIグループ)。実は当サイトは、ベストランドの『上場プロジェクト』について3年前の16年6月22日付レポート『「スタッフサービス」創業者、岡野保次郎 「OGIグループ」で300億超焦げ付く “上場ゴール”で起死回生か』で報じていた。同社は関係者によると、同社グループは多額の損失を抱えており、株式上場で挽回することを目論んでいた。
■むろん、岡野の個人的利益追求のための上場ならば、仮に成就していたとしても株式市場であまり良い結果を残さないと思われる。フラット35不正利用の発覚で、上場はさらに遠のいただろう。フラット35の不正利用自体は不動産業者間で常態化しており、氷山の一角だろうが、明るみに出た今回の事案には、「上場プロジェクト」という複雑な裏側があったのである。
(文中敬称略、つづく)

2016年6月22日付レポート:『「スタッフサービス」創業者、岡野保次郎 「OGIグループ」で300億超焦げ付く “上場ゴール”で起死回生か』

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