SMFGが戦慄「ブラジルレアル・トルコリラ仕組債」の惨禍(2)仕組債のカラクリ 秘密の「マル管料」 金融庁が問題視「銀証連携」の杜撰


1280px-SMFG_logo.svg■一般的に、金融商品で発生した損失を巡る個人顧客と証券会社のトラブルは、営業マンによるリスクの説明不足が原因であることが多い。往々にして営業マンがリスクを過少に表現したり、将来予想を都合よく盛ったりしているからだ。なぜなら証券会社はお客様の資産の相談にただ乗るだけではなく、商品を買わせて手数料を稼がなければいけない。いきおい、現場の営業マンは上司から有形無形のプレッシャーを受け、不相応な投資商品を嵌め込もうとする。
■しかし、SMBC日興証券(社長・清水喜彦、以下日興証券)が販売していたトルコリラデュアル債、ブラジルレアルリンク債などの新興国仕組債は、〈購入対価のみをお支払いいただきます〉ということで、手数料は徴収されていないことになっている。日興証券は問題の新興国仕組債を、100万円単位から投資できる公募仕組債で約2万件、約2600億円も販売した。富裕層向けの2500万円単位からの私募仕組債を合わせると販売額は合計5000億円にもなるという。一体なぜ、手数料のない仕組債がこれほどまで売りさばかれたのか。
■実は、仕組債を買う顧客は、本人は債券投資のつもりでも、事実上プットオプションを証券会社に売っていることになっている。顧客が「利息」と思っている4.82%~10.65%の利回りは、プットオプションを売ることで負うリスクの対価である。証券会社はその裏で、顧客に払うオプション料より高い利率でプットオプションを金融市場で売り、利ザヤを稼いでいる。
■顧客からすれば、負うリスクに応じてもっと高いオプション料が得られるのに、金融機関の儲けを差っ引いたオプション料を提示されているわけである。情報格差に立脚したビジネスであり、証券会社がどれだけ利ザヤを取っているか、顧客が知る手立てはない。営業マンですら知らないブラックボックスとなっていた。しかし今回、当サイトは関係者への取材で、その一端を知ることができた。
■「マル管料」と、それは呼称されている。日興証券が仕組債の販売で認識している利益で、16年頃までは「650銭」と定められていた。6.5%と言えば、顧客が受け取っていた「利息」とほぼ同等額である。「マル管料」という隠語を使用しているのは日興証券に限らず、野村證券、大和証券、みずほ証券でも同様で、16年頃の料率は5%~6.5%程度。「マル管料」は、証券界が長らく情報の非対称性に乗じて得てきた秘密の利益の正体だ。三井住友フィナンシャルグループ(社長・太田純、以下SMFG)は取材に対し「マル管料をお客様から頂戴している事実はない」と述べた。6.5%という利益率はきょうびの証券会社にとって極めて大きいことは言うまでもない。
■SMFGが新興国仕組債を大規模に売った理由は、「マル管料」の稼得だけではない。新興国仕組債が売られた2013年から2015年は、SMFGにとって特殊な時期であった。SMFGは09年に日興証券を5500億円で買収。三井住友銀行と日興証券のホールセール(法人向けサービス)での「銀証連携」が始まった。13年頃からはリテール(個人向けサービス)分野での連携も進められた。これにより、銀行員が預金者から同意書を取ったうえで、日興証券の営業マンを紹介することが可能となった。

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■当時の日興証券社長・久保哲也は13年4月の日経新聞のインタビューで「営業マンを2割増やす」と意気込んでいた(右写真)。15年1月の日経新聞の報道によると、14年末から三井住友銀行と日興証券の全店で顧客の相互紹介が始まり、同年末までに銀行紹介の日興証券口座は2万8000件開設され、預かり資産は6000億円増加したという。経営陣としては、買収によるシナジー効果を示したい時期だったのだろう。現場では、数ある投資商品の中でも、高いマル管料を稼得できる仕組債が好んで営業されたと思われる。
■さらに、三井住友銀行は日興証券に顧客を紹介することで紹介手数料を得ていた。関係者は「銀行が得る紹介手数料は『ダブルマル管』と呼ばれていた」と証言する。問題の仕組債は、日興証券の営業マンや銀行員にとって、営業成績を荒稼ぎできる魅力があったに違いない。増加した預かり資産の一定の割合は問題の仕組債販売によるものと思われる。その結果、前回のレポートで指摘した通り、2万件の一般投資家に1000億円を超える損失がもたらされた。
■金融庁はSMFGの銀証連携の在り方を問題視していた。当サイトの取材によると、金融庁は2018年末の検査で、SMFGのホールセールにおける銀証連携について、優越的地位の濫用、業務範囲規制等の在り方が不適切と指摘した。内情を知る関係者は「銀証連携で三井住友銀行の融資先に日興証券のEB債(他社株転換可能債)を販売し、損失を出させて問題になっていた」という。そして同じ時期のSMFGの調査で、リテールも不適切な運営がされていたことが明らかになった。
■2019年頃の日興証券の社内アンケートでは、銀証連携により〈顧客ニーズよりも収益獲得を優先するような事例〉や、〈銀行からお客さまを紹介してもらっていることから、銀行からの不適切な要請であっても受入れ、あるいは連携して業績を上げようとするような事例〉が認められた。ありていに言えば銀行員と証券マンが一体となって、客に不相応な商品を売り付けていた実態があったということだ。こうした背景があってか、三井住友銀行は19年からリテールのノルマを廃止した
■問題の新興国仕組債で損をしたのは、当サイトが知る限り70代の顧客ばかりで、60代後半になって日興証券の営業を受けていたことになる。よく分からない投資商品に手を出した顧客の落ち度もあるだろう。だが、前述したような現場の営業マンや銀行員の荒稼ぎの実態を見ると、損失の責任を全て、顧客に帰すわけにはいかないだろう。1000億円を超える損失は、SMFGの日興証券買収の「負の側面」と言えるのではないか。
(文中敬称略)

2020年2月28日付レポート:SMFGが戦慄「ブラジルレアル・トルコリラ仕組債」の惨禍(1) 2万超える一般投資家に1000億超の損失 一部の顧客が脅迫事件も

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