“青汁王子”のグループ会社で発覚した元幹部による「背任横領」事件 破綻した「東京ハートセンター」の関係者も浮上


■「青汁王子」として知られる三崎優太が経営していた健康食品会社メディアハーツ(現:ファビウス株式会社)のグループ会社が、元幹部による背任・横領疑惑に揺れている。問題となっているのは三崎が60%の株式を保有する「アスクレピオス製薬」(渋谷区、以下アスクレピオス)。関係者によると、元社長・越山晃次が19年7月頃から今年4月に解任されるまで、会社資産を社外に流出させるなどして合計30億円を超える損害を与えたという。取引の詳細を見ると、別の経済事件の関係者も浮上してきた。
■アスクレピオスは越山が14年に設立した通販会社。16年にメディアハーツのグループ傘下に入りし、2億円程度だった年商は18年6月期で24億円、19年6月期で70億円と伸びた。だが19年2月、三崎が脱税容疑で東京地検特捜部に逮捕・起訴されたことで、越山がレピュテーションリスク等を理由に株式の名義変更を求めるようになる。三崎は難色を示していたが、11月末に真の株主が三崎であるという公正証書を結ぶことで、形式的な株式譲渡契約に応じた。
■だがその直後の19年12月、越山が秘密裏に競合会社を設立していることが判明。調査を進めると、株主総会決議を経ずに役員報酬を年間約2000万円から6000万円に増額していることや、正規の手続きを経ずに会社から多額の資金を借入として引き出していることが明るみに出た。
■さらに、疑惑の取引が続々と発覚する。19年7月に心臓病専門病院「東京ハートセンター」を運営する医療法人冠心会と元理事長に1億7000万円を貸し出していた。冠心会は18年3月末時点で5億円を超す債務超過。東京ハートセンターを巡っては理事長の背任疑惑が取りざたされており、病院経営を巡り事件屋が介入しているとの噂もある問題案件だ。そこに2億円近い金額を貸し込むとは、およそ正常な経営判断とは言い難い。案の定、冠心会は翌8月下旬に民事再生法を申請し貸付金は焦げ付いた。
■また、19年7月、越山はビチェリン・アジアパシフィックアンドミドルイースト(社長・南里清久)から商標権取得名目で1億円を送金しているが、商標権の実態はなかったという。三崎の東京地検による逮捕・起訴に乗じた背任行為であり、自己資本約5億円のアスクレピオスにとって致命傷となる取引と言えた。名義変更要求の動機にはこうした行為を隠蔽する目的もあったと思われる。
■三崎は12月、越山に対し取締役の辞任を求めた。当初、越山は「私が三崎さんの信用を裏切ったことに対して、謝罪したく思っております」と反省の弁を述べていたが、最終的に辞任を拒否し訴訟となった。裁判で越山は、三崎が反社会的勢力であるから株式譲渡は無効だと主張したが、事実とは認められず敗訴した。
■実は、越山は裁判中にもアスクレピオスから資金を引き出していた。会社の現預金を別会社に送金したり、子会社株式を実質無償譲渡するなどの手口で、関係者によると現時点で分かっているだけで32億円の損失を与えたという。前述の実態のない商標権取引の相手方であるビチェリン社には1月にも2億円を支払っていた。アスクレピオスを破綻状態に追い込みながら、自身も1億円の退職金を会社から受領していた。三崎は警察に被害相談し、渋谷署が捜査着手しているという。
(文中敬称略)

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