■昨年に中国での不動産開発を巡る不正会計が明らかになったジャスダックの明豊エンタープライズ(社長・梅木隆宏、以下明豊エンター)を、50%超保有する親会社・ハウスセゾン(京都市、社長・井元義昭=明豊エンタープライズ会長)が証券会社や金融屋の担保に供している明豊エンター株数が増加している。2020年4月9日付大量保有報告書によると、三田証券、大和証券、築インベスト(世田谷区、社長・高塚優)に合計12,200千株差し入れており、ハウスセゾン名義で持つ約12,717千株のほぼ全てが担保となった。ハウスセゾンの財務状況が、明豊エンターの財務や株主構成に与える影響が大きくなりつつある。
■ハウスセゾンは12年に、明豊エンター株を10,000千株、滋賀銀行に差し入れていたが、18年8月までに担保を解除していた。しかし19年1月頃からふたたび三田証券などへの担保提供が増加しはじめた。一方、明豊エンターもハウスセゾンに対して、18年7月期第3四半期(17年1月~18年4月)から約20億円の貸付を実行しており、直近期も約15億円の残債がある。18年10月には、明豊エンターがハウスセゾンの自社ビルを取得している。ハウスセゾンにおいてここ数年の間に、多額の資金調達をしなければならない何らかの事情が起こったと思われる。
■明豊エンターの貸付は利益相反となるリスクがあり、株を担保とせざるを得ない状況を見ると、回収可能性にも懸念がある。昨年に中国の不正会計問題を調査した第三者委員会(委員長・森本大介弁護士=西村あさひ法律事務所)は、類似取引の有無を調査した際、ハウスセゾンへの貸付を検討していた。9月の調査報告書は、ハウスセゾンが返済をリスケしているものの〈財務内容評価法に基づき債務者であるハウスセゾンの支払能力を総合的に判断した結果、貸付金及びその利息について回収可能性に明らかな疑義を抱かせる状況ではない〉(38頁)としていた。
■しかし、直近のハウスセゾンの財務状況は怪しい。15年頃まで不動産業で20億円程度の年商があったようだが、16年3月期は約12億円、17年3月期は約6億円と減収、18年3月期は売上がゼロだった。19年3月期で3期連続営業損失となった。ポートフォリオを見ると、17年3月期から仮払金勘定が増え始めている。19年3月期時点で総資産の6割を占め、自己資本45億円に対して約41億円という規模になっている。仮払金の資産性が重要な論点となりつつある。
■問題は、明豊エンターからの借入や株式担保により調達した資金を一体、何に投じているかだ。当サイトが6月4日に明豊エンターに取材したところ、「親会社ハウスセゾンあての貸付金は同社による新規開発事業資金に充てられています」と本日、回答があった。通例であればハウスセゾンの決算は今月末に開示される予定だ。
(文中敬称略)