東証1部ランド、太陽光発電所が「反対運動」で難航、系統連系の期限切れで売電価格大幅減 出資金の回収可能性に疑義


■東証1部ランド(横浜市、社長・松谷昌樹)が出資する大分県のメガソーラー発電所計画が地元の反対で難航し、電力会社への売電価格の大幅な下落が不可避となり、同社の資産の大半を占める出資金の回収可能性が危ぶまれている。また、開発の遅れにより売電価格が下落し、収益性が見込めないことは今年3月時点で明らかだったにも関わらず、2020年2月期決算の有価証券報告書(5月末提出)で出資金を減損しなかったことにも疑義が及びそうだ。
■問題の太陽光発電所は、株式会社ティーティーエス企画(福岡県飯塚市、社長・野見山俊之)が開発する大分県臼杵市野津町における案件で、開発区域は70ヘクタール、出力は約50メガワットにのぼる。ランドは連結子会社のTTSエナジー等を通じ、ティーティーエス企画に対して約58億円を共同事業出資金として拠出しており、大部分が問題の太陽光発電所の開発に供されている。ティーティーエス企画への出資金は20年2月期で総資産の65%を占め、ランドにとって極めて重要性が高い。
■問題の太陽光発電所は規模が大きく、周囲の自然環境への影響が懸念されることから、環境影響評価(アセスメント)の対象となっていた。ティーティーエス企画は17年7月に大分県に環境アセスメント計画書を提出し、昨年3月にアセスメントに係る手続きを完了。実質的なゴールである林地開発許可の取得まであと一歩というところまできた。
ところが昨年7月頃、地元の自治会が森林伐採による湧き水への影響や、土砂崩れの危険を理由に反対を表明。ここで、ランドが火に油を注いでしまう。臼杵市議会議事録によると昨年8月、ランドが「ティーティーエス企画から事業を引き継いだ」という立場で説明会を開催し、自治会長や地元全体に対して、反対運動を続けるなら損害賠償請求を行うと宣言したという。
■このランドの強硬姿勢に反対運動の中心を担っていた日本共産党が反発。市議会で追及を受けるだけでなく、大分県議や地元選出の国会議員が動き、九州経済産業局に計画の中止を申し入れるなど事態を混乱させた。その結果、当サイトが大分県に取材したところ、今年9月末時点で問題の太陽光発電所への林地開発許可は「審査中」だという。
■今現在、林地開発許可が出ていないということは、問題の太陽光発電所の価値は当初想定の半分以下に下落している可能性が高い。経済産業省は2018年12月、過去に高い売電価格を設定した未稼働の太陽光発電所について、一定期限までに電力会社との系統連系申込が提出されない場合、売電価格を最近の相場に変更する対応を決定した。系統連系の申込は林地開発許可を取得していることが条件である。
■問題の太陽光発電所のような環境アセスメントが必要な案件の期限は今年3月末とされている。現時点で林地開発許可が取得出来ていないということは当然、系統連系の申請も間に合わなかったことになる。関係者によると、問題の太陽光発電所の売電価格は36円に設定されていた。間に合わなかった案件の売電価格は最近の相場に合わせられるので、価格は半分以下になるという。
■今年3月までに林地開発許可が取れなかった時点で、この案件は完全に失敗に終わったと言える。だが、4月に公表された20年2月期の決算短信や、5月末の有価証券報告書では、出資金の減損などの損失は計上されていない。売電価格の下落は議論の余地なく、出資金の回収可能性に影響すると思われるが、損失が認識されていないのである。この点、同社の会計監査人の監査法人元和が出資金を適切に監査したかという疑惑も浮上する。当サイトはランドに対して、出資金額や回収可能性について取材したが、期日までに回答はなかった。
(文中敬称略)

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