■昨日、ジャスダック上場のハコ企業Nutsの前社長・森田浩章が同社の破産を東京地裁に申請し、同日、破産開始決定が下り話題となっている。同社は今年2月、証券取引等監視委員会による強制調査を受け、3月に外部調査委員会を設置していた。同社が突如として倒産した背景事情として、関係者の間では、昨日に開示が予定されていた調査委員会の報告書が、森田にとって厳しい内容であり、開示を阻止する思惑があったと指摘されている。
■関係者によると、社外調査委員会は報告書で、Nutsが19年2月に開示した医療ビジネスに関する業績予想が根拠のないものであり、過年度に計上した医療施設の入会金売上の実態が架空売上であることなどを認定したという。Nutsは上場当初から株主・長谷川隆志の実効支配下にあり、元社長・森田浩章を同社に送り込んだのも、医療ビジネスの看板だったコロンビア大学教授・加藤友朗を同社に紹介したのも長谷川だった。
■だが、偽計容疑につながった医療ビジネスを巡る開示や、架空売上の計上は、元社長の森田浩章が株価対策のために主導したものとされた。Nutsの医療ビジネスの実態は資金還流である。Nutsは20年3月期第3四半期までに、高級会員制医療施設「ヴィデビムスクリニック」の入会金売上を約610百万円計上しているが、この売上の大半は、元社長の森田、長谷川の関係先や、同社の増資を引き受けたIbuki Japan Fundの金融ブローカーが用立て、名義を変えて払い込んだものだった。
■例えば、Nutsは森田が経営する内装会社にクリニックの内装工事の代金を支払っているが、森田はその内装会社から資金を引き出し、他人名義で入会金を払い込んでいた。あからさまな資金還流であり、架空売上と認定された。
■報告書は本来、昨日中に開示される予定だったが、取締役に残っていた森田が反対し、開示を阻止するために破産を申し立てた。報告書を巡る攻防は今後も続きそうだ。
(文中敬称略)
2020年7月7日付レポート【続報】ジャスダック上場Nuts偽計事件、「監査法人元和」に経営陣がカジノ接待、独立性に疑義か
2020年4月27日付レポート:【続報】証券取引等監視委が「偽計」容疑で強制調査のハコ企業Nuts、各方面に波紋
2019年10月23日付レポート:パチンコ版権事業から「医療ビジネス」に乗り出したジャスダックのハコ企業Nuts、“架空増資”紛いの資金還流