■不動産大手・森トラスト(非上場)の社長に君臨していた森章が、2016年6月の株主総会でその座を長女・伊達美和子に継承し、代表権を持ったまま会長に就任、世襲の体制を整えた。今月12日には80歳の傘寿を迎える森会長だが、その裏で今、数十年間眠り続けていた“負の遺産”の処理を巡る問題が再燃しそうだ。
■リゾート地、妙高高原(新潟県妙高市)。夏は避暑地として、冬は温泉地やスキー場として富裕層に親しまれているが、ここには別の意味の“名所”がある。心霊スポットマニアの間で有名な廃墟「妙高高原ホテル」だ。別荘が立ち並ぶ通り沿いに地上4階、地下2階の巨大な廃墟が佇んでおり、周囲の景観を害している。
■この妙高高原ホテルを現在の所有者が取得したのは1991年。取得同日に東証一部・若築建設(1888)の7億5千万円の抵当権が打たれている。それが現在のような廃墟ホテルになぜなったのか、事情を知る関係者が言う。「実は妙高高原ホテルは、森章主導で『ラフォーレ妙高高原ホテル』となる計画だったので、その信用力で若築が資金を出した経緯がある。ところが、森や現所有者との間で食い違いが起こり、計画はとん挫してしまった。若築は資金を回収できないまま、建物は長い年月をかけて朽ちていった」
■20年以上この「ラフォーレ妙高高原ホテル」計画の後処理は没交渉となっていた。ところが昨年、北陸新幹線開業に伴い、ホテルに近い上越妙高駅ができたことで、問題が再燃する。「地元自治体は妙高高原ホテルの存在を元々問題視していたが、新幹線の開通を契機に廃墟問題の処理を求めてきた。ここでさらに、ホテルの資材にアスベストが使われていることが分かり、解体にかかる多額の費用をどこが負担すべきか、という新たな問題も出ている」(前出・関係者)。
■森トラストは取材に対して「随分と昔の話なので、資料がない」と否定も肯定もしなかった。(続く)
(文中敬称略)
森トラにしてみれば、微々たる案件。