■東証2部上場クレアホールディングス(社長・黒田高史、以下クレアHD)と同社株主「セノーテキャピタル」(社長・岡本武之)が昨年夏頃から繰り広げている経営権争いが、近く決着を見そうである。セノーテキャピタルが昨年から請求している臨時株主総会が、2回の中止を経て、ついに今月21日に開催されるからだ。
■セノーテキャピタルとクレアHDは増資を割り当てるなど友好的な関係にあったが、今日の対立関係に至った原因として、新型コロナウイルス対策ビジネスとしての鳥類のダチョウの抗体スプレー販売事業が挙げられる。セノーテキャピタルの公表文書によると、スプレー事業をクレアHDで取り扱うよう提案したが、不熱心だったため、経営陣の解任を求めるに至ったとされている。
■だが、クレアHDは最近、このダチョウスプレー事業が、セノーテキャピタルによる詐欺スキームであったと非難している。クレアHDによると、岡本は昨年6月頃にクレアHDに対し、スプレーを岡本の関係先ジールコスメティックから仕入れるよう求め、販売代金約5500万円を振り込ませたが、その裏で岡本は、ジールコスメティックに増資で手に入れたクレアHD株式を6000万円で売却したという。つまり、クレアHDの資金がジールコスメティックを経て、岡本に還流していたようだ。
■岡本は当初、スプレーの販売先を用意すると述べていたものの、クレアHDによる仕入代金支払いと同時に会社の敵側に回り、スプレーの大半は不良在庫のままになっているという。セノーテキャピタルはクレアHDがスプレー事業に不熱心なため経営権取得に及んだと主張するが、実際はスプレー事業が始まる前に敵対行為を準備していた可能性が高い。
■クレアHDは岡本が会社資金を自身に還流させるために欺罔行為を働いたとして、詐欺罪などで検察に告訴しており、3月末に受理されたという。結局のところ、株主提案というまっとうなプロセスを執っているようだが、やっていることは極めて山師的である。
■セノーテキャピタルが経営権取得を成就したとしても、株主グループが経営権を取得したジャスダック上場「五洋インテックス」と同様に、クレアHDの経営が安定する日は長くは続かないと思われる。そもそも上場維持が難しいからだ。クレアHDの4月9日付のプレスリリースによると、19年から同社の会計監査人である公認会計士が、もしセノーテキャピタルが経営権を取った場合、監査人を降りる旨を通知しているという。
■クレアHDの会計監査人はここ数年で交代が相次いでいた。15年12月、東京中央監査法人が解散により辞任し、後任に赤阪・海生公認会計士共同事務所が就いたものの、同事務所も上場会社監査事務所の準登録事務所名簿から取り消されたため16年6月に辞任。17年6月に北海道札幌市の監査法人銀河が就任するも1年と続かず、翌18年6月に監査法人アリアに交代するとしていたが、土壇場で史彩監査法人に変更となった。しかし、19年6月からは公認会計士2名が会計監査人を務める現在の体制になった。
■関係者は「期末を跨いだ今の時期に、新しい監査法人を見つけるのは一般の上場会社でも難しい。クレアHDはただでさえ誰も引き受けたがらない案件であるから、監査を引き受ける事務所を見つけるのは至難で、上場維持は危うい」という。
■クレアHDは97年にキーイングホームとして上場後、途方もない「ソチ人工島計画」の舞台装置となり、グッドウィル・グループの巨額脱税事件に巻き込まれた。ハコ企業としては最古参と言え、日本の株式市場の裏側を象徴する銘柄が、ついに墜ちる日がくるか。
(文中敬称略)
2021年2月1日付レポート:仕手株「クレアホールディングス」を高値掴みする東証1部ナック創業者、 ナック株を担保に信用取引か