【コラム】日本の株式市場で「空売り屋」の活動が活発化


■今年に入り、日本でも本格的に「空売り屋」の活動が活発化してる。日本株式市場への参入を宣言してた米国ファンド「GLAUCUS RESEARCH GUROUP」(グラウカス)は27日、伊藤忠商事に関するレポートを発表した。伊藤忠が海外の関係会社に関する会計上の区分を意図的に変更することで、損失の隠蔽と利益の過大計上を行った、とするものだ。
■グラウカスが指摘した案件は具体的に3つ。南米・コロンビアで炭鉱事業を運営する米Drummond Campay傘下のDrummond International,LLC(ドラモンドJV)への出資持分の減損損失の隠蔽、香港市場に上場しているCITIC Ltdを連結することによる利益の過大計上、持分法適用会社であったTing Hsin Holding Corp.(頂新)を投資区分と認識することによる評価益の計上である。どれも指摘は理論的かつ具体的で、伊藤忠の有報や説明資料に基づいたものだ。
■特にドラモンドJVに関して、伊藤忠は27年3月期第3四半期に、ドラモンドが優先株を発行することで持分が希薄化するとの説明をしていたのにもかかわらず、実際に履行はされなかった点は言い逃れが難しいだろう。伊藤忠は27日に、グラウカスに対する反論として問題の案件に関する会計上の認識を説明しているが、持分が希薄化していないことは否定していない。
■グラウカスは空売りの立場を明確にした上で、伊藤忠に対する批判を行っている。日本取引所グループCEOの清田瞭は28日の会見で、グラウカスの投資行動を「倫理的に疑問がある」などと寝ぼけたコメントをしたようだが、提灯記事ばかり溢れている日本の株式市場を考えると、「空売り屋」の登場は歓迎すべきである。
■先月初めにマザーズ上場ジグソー(コード3914)の株価暴落のトリガーとなった米系「Well Investments Research」(ウェルインベストメント)も、空売りを明言しているわけではないが、上場会社に対する批判的言説を展開している。ジグソーのレポートは不正会計を指摘するものではないものの、客観的な分析を基に「(ジグソーの)株価はいかなる測定基準においてもばかげている」とぶった切った。株価はレポート発表前9150円から本日終値で5870円と、約35%下落した。ウェルインベストメントは他にも、丸紅やサイバーダインに言及しており、今後も注目すべきアクターとなるだろう。
■こうした企業に対する批判的言説は、提灯記事を書くことよりも非常に労力を伴う。私共のような媒体で展開しようものなら「ブラックジャーナリズム」と括られ、株主総会で発言すれば「特殊株主=総会屋」と認定されるかもしれない。例えば物言う株主として知られる村上世彰も、事実上の総会屋リスト「担当者必携」(2004年版)に掲載されてしまっているのは有名な話だ。
■極論、企業側からすれば、どのような人物であろうと行動が都合悪ければ犯罪者、という認識なのである。過去、エナリス事件を報じた際に当時の社長・池田元英が筆者らを「風説の流布」と指弾したように、この現状は今も変わっていない。日本取引所の清田がグラウカスを批判するために「倫理」を持ち出したのも、そういう深層心理の表れだろう。
■資金力と時間、人員を持つ大手マスコミも、基本的に自ら企業の不正を調べたり、発表することを手控えるようになっており、「不正追及」に動く場合は往々にして捜査当局と一体となった“護送船団方式”である。「空売り屋」の存在は、こうした一方的な日本の言論状況を変えうるものである、と期待している。また私共も、企業の批判的分析に力を注いでいきたい。
(文中敬称略)

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