ハコ企業の末路(2)上場廃止のインスパイアー 仕組まれた巨額簿外負債「ケースタイル」の罠


■前回、ハコ企業として終焉を迎えたインスパイアー株式会社の第二回債権者集会が6月に東京簡裁で開かれ、同社を巡る上場廃止・倒産のドサクサの裏で「ケースタイル」なる巨額債権者が突如として浮上したことを報じた。この間、ケースタイルが有するとされる債権について詳細情報を得ることができた。その債権債務関係にはインスパイアー経営陣による詐欺あるいは倒産関連犯罪が潜在していると思われる。
■筆者が入手した「督促事件記録」(東京簡裁平成26年(ロ)07609号)などの資料によると、㈱ケースタイル(港区六本木4)がインスパイアーに対して持つ債権の原因は、2010年6月30日付の準消費貸借契約で、2008年7月にエニワン㈱の事業買収にかかり立替えた2億円、とのことである。毎月150万円ずつ返済の契約で、連帯保証人には「ピエラジェンヌ株式会社」がなっており、一時期インスパイアーの業務提携先だったピエラレジェンヌとは一文字違い。
■だが、2010年以降のインスパイアーの有報にはこの㈱ケースタイルへの負債の発生が一切計上されておらず、2008年の有報を見ても「エニワン㈱」なる会社の事業買収を行った形跡はない。資料によると、インスパイアーより150万円の返済がされたのは2010年7月末の一度きりとされており、支払督促の申立が初めてされたのが14年5月26日付である。この直前である14年3月に約6億5千万円の増資に成功し、債務超過を解消したとして、7月には合同会社エコより提起されていた破産申し立てが棄却されている。
■仮に、㈱ケースタイルへの負債が実在していたとすれば、2010年から巨額の簿外負債が存在していたことになり、12年3月期も債務超過で、14年の第三者割当増資でも債務超過を脱することはできなかった筈だ。つまり粉飾決算が施された財務諸表を用いて資金調達を行った点において、08年から役員であり、14年から倒産に至るまで社長であった駒澤孝次は詐欺罪に当たる可能性が高い。
■ここで「仮に」としたのは、そもそもこの負債に実態が伴っているか大いなる疑問があるからである。有報に記載がないのは事実であるし、準消費貸借契約の発生から14年の申立に至る4年間、㈱ケースタイルが督促を行った記録がないからだ。
■問題はこの㈱ケースタイルの役員にもある。同社の役員は大脇高志、安藤敬太郎、川崎孝樹、黒木正文などが就任している。詳細を省くが、これらの人物は㈱アイナチュラル、㈱プライムコーポレーション、㈱セブンヒルズ、そして同じ社名の「㈱ケースタイル」など複数社で交錯しており、その中にはインスパイアーと過去、債権債務の関係を持った会社が存在しているのである。特に大脇は、インスパイアーと同様に合同会社エコへの保証債務を負っていたオックスホールディングスの社長でもある(続く)。
(文中敬称略)

2016年6月17日付レポート:ハコ企業の末路 上場廃止のインスパイアーが第二回債権者集会 6億の現金が雲散霧消

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です