【ミニ情報】東証1部THEグローバル社、懸案のホテル事業「簿外リース債務」を連結除外により解消


■コロナ禍で経営危機に陥っていた東証1部上場THEグローバル社が先月13日、21年6月期決算を公表した。前期が売上高257億円、純損失48億円だったのに対し売上高183億円の減収、純損益は40億円の赤字を計上。依然として赤字体質だが、注目は、同社にとって懸案だったホテル事業に係るオペレーティング・リース契約の未経過リース料が、前期157億円から28億円と大幅に減少している点である。これは子会社だったホテル運営会社を連結除外したことによると思われる。
■THEグローバル社は「ウィルローズ」などのブランドのマンションを開発・販売していたが、地価高騰を受け18年頃からホテル事業に着手した。京都を中心にホテル用地を取得、建設し、子会社によるリースバック契約付きで投資家に販売するというもので、THEグローバル社はホテル売却時に売買代金を一括売上計上し、ホテル収益を継続して計上できるスキームだった。これにより18年6月期は本業の減収分をホテル事業でカバーし、増収と黒字を維持した。
■ところが、コロナ禍により業績と資金繰りは悪化。ホテルの建設会社等への支払いが滞り20年6月期には継続疑義注記が付された。スポンサー探しの末、ジャスダック上場不動産会社アスコットへの第三者割当増資により当面の資金繰りを改善し、継続疑義を解消した。だが、同社にとって資金繰りよりも本質的な問題はホテル事業のリース契約である。THEグローバル社はホテルを販売した投資家との間で、相当な期間のリースバック契約を締結しており、ホテル収益が得られなければ、リース料負担だけがのしかかることになる。
■実際、THEグローバル社のホテル事業セグメントを見ると、セグメント売上がほとんどない会計期間であるにも関わらず、セグメント損益は数億円~十数億円の赤字を呈している。リースバック契約はオペレーティング・リース取引と認識されオフバランスとなっており、有報の注記によれば解約不能の未経過リース料は18年6月期91億円、19年6月期146億円、20年6月期157億円にも上る。THEグローバル社の再建の最大の懸案はこのリース料負担と言えた。
■今回、21年6月期決算でリース料負担が大幅に解消されたのは、おそらく、投資家とのリースバック契約の主体であった子会社グローバル・ホテル・マネジメント(以下、GHM)を連結除外したためである。THEグローバル社は昨年11月、GHMを「Rマネジメント合同会社」という同月に設立されたばかりのビークルに売却している。これにより、THEグローバル社は簿外リース債務の大部分を解消したが、ホテルを買った投資家へのリース料支払いは、連結除外と同時に終了した可能性が高い。
■というのも、連結除外した後のGHMの経営状態は芳しくないようだ。THEグローバル社の貸借対照表に計上されている長期貸付金勘定は、21年6月期1Qが15億円だったが、GHMを連結から除外した後の同年2Qには41億円に増加している。THEグローバル社は20年6月期中にGHMに13億円の貸付を実行し、期末時点の貸付残高は22億円となっていた。増加した貸付金の大部分はGHMに対するものであると考えられる。
■2Q時点でGHMを含む長期貸付金の大半は貸倒引当金が計上されており、ほとんど回収可能性がないと認識されている。さらに21年6月期末には長期貸付金のうち約27億円が破産更生債権に振り替えられている。破産更生債権とは、相手方が実質的に経営破綻している場合の債権である。9月3日に開示された定時株主総会招集通知によると、当期中にGHMへの貸付金は4億円増加しているとのことで、GHMへの貸付金は破産更生債権に振り替えられた債権額とほぼ一致している。GHMが破綻したのであれば、THEグローバル社からホテルを購入した投資家は誠に気の毒であるし、買収直後に破綻したGHMを取得した「Rマネジメント合同会社」の意図は不可解だ。

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