■電気利用者が支払ったFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)賦課金を電力小売事業者から徴収し、再エネ事業者に分配する業務を経済産業省から請け負っている一般社団法人「低炭素投資促進機構」の理事長で、国立大学の東京工業大学教授・柏木孝夫が、「政界フィクサー」として知られるシンクタンク「大樹総研」グループ会社と、個人的に顧問契約を締結していたことが分かった。
■当サイトの取材によると、柏木は2016年頃から、大樹総研のグループ会社「大樹環境システム」や、大樹ホールディングスと顧問契約を締結している。毎月顧問料を受け取る見返りに、大樹総研の進める事業に関する援助、助言(毎月1回程度の面談指導を含む)や、大樹総研の勉強会、講演会等における講演及び機関誌への寄稿などの業務を提供していたようだ。柏木は2015年頃から、大樹総研が主催する勉強会に講師として呼ばれており、関係を深めていったと思われる。
■FIT制度では、再エネ業者が作った電力を、電力会社が固定価格で買い取っている。電力会社が再エネ業者に払うコストは最終的に、電気代を支払う全ての国民に転嫁されている。小売電力業者は電気料金に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を上乗せして徴収し、太陽光やバイオマス発電などの再エネ事業者に分配している。この再エネ賦課金の徴収分配を「費用負担調整業務」という。柏木が設立時から理事長を務める低炭素投資促進機構は、FIT制度の開始当初から経産省の指定法人として費用負担調整業務を請け負っていた。柏木は経産省の再エネ政策のワーキンググループの座長を務めるなど、FIT制度の成り立ちに深く関与している。
■大樹総研は菅義偉総理や自由民主党の二階俊博幹事長と昵懇で、旧民主党の野田佳彦元総理とも深い関係を持つ「政界フィクサー」として知られる。財務省や経産省などの「霞ヶ関官僚」とも関係が深く、2016年に開かれた大樹総研の主宰者・矢島義成の結婚式には、現・経産省事務次官の多田明弘をはじめとした経産省幹部が出席していた。
■大樹総研は様々な事業会社からコンサルティング料を受け取っており、顧客には再エネ事業者も多い。また、関連会社でも再エネ関連事業を営んでいる。融資型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)で一般投資家から200億円超を集め、大半を返済することなく破綻した再エネ会社「JCサービス」からも、5億円もの業務委託費を受け取っていた。
■低炭素投資促進機構は費用負担調整業務だけでなく、クリーンエネルギー認証のための第三者機関など、再エネ政策で重要な位置づけを担っている。そのような団体の理事長が、一部の再エネ関連会社と私的に顧問契約を結ぶことについては、コンプライアンスの観点から説明責任があると思われる。だが、低炭素投資促進機構は顧問契約の有無についての取材に、「ノーコメント」との回答。大樹総研からは期日までに回答はなかった。
(文中敬称略)
※9/13追記:昨年2月の「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」により、費用負担調整業務は、今後、電力広域的運営推進機関に承継されることとされております。