「水のクリクラ」で知られる東証一部ナック、業績悪化 60億円を投じた「本庄工場」は過剰投資ではないのか


クリクラ本庄工場(撮影・筆者)
クリクラ本庄工場(撮影・筆者)

■「水のクリクラ」でお馴染みの東証一部・ナック(コード:9788、社長・吉村寛)の経営が悪化している。28年3月期は売上80,302百万円(前期比△6.01%)、営業利益は701百万円(△53.7%)で、4Q期間中の有価証券売却による益出しがなければ純損失を出していた。把握できる限り、ナックは十数年以上赤字を出したことがない。またセグメントを見ると、クリクラ事業と住宅事業が赤字に転落。26年3月期を境に坂道を転げ落ちるように業績が低迷している一方、有利子負債は増大している。25年3月期は2,229百万円(借入金+リース債務)だったものが、28年3月期は11,821百万円となった。
■財務悪化の理由は2つの大型投資にある。平成24年のクリクラ本庄工場(埼玉県)新設への投資60億円と、平成25年にナックとはなんらシナジーがあると思えない通販事業会社「JIMOS」をサイバードから60億円で取得したことだ。通販セグメントは26年3月期から黒字を出しておらず、失敗は目に見えている。注目すべきは本庄工場だ。
■本庄工場新設が開示されたのが平成24年11月で、当初の投資額は44億円。年間1200万本の製造が可能で、既存の生産能力(年間約1700万本)から大幅な増産が図れる予定だった。さらに25年5月、16億円を追加投資して見学施設と地熱設備を作るとした。本庄工場は27年4月から稼働をはじめた。ここに2つの問題がある。
■一つ目の問題は、結果として過剰投資ではないか、という点だ。ナックは平成25年以降の出荷本数を開示していないが、約1700万本を出荷したとされる25年3月期のクリクラ事業売上高は13,235百万円であり、28年3月期は13,090百万円と縮小している。生産高も24年3月期2,605百万円、25年3月期2,567百万円、26年3月期2,639百万円、27年3月期2,477百万円、28年3月期2,663百万円である。生産高も横ばいだ。
■ナックが投資を決定した24年頃のウォーターサーバー市場は、顧客数、市場規模が毎年20%~30%で上昇を続けていた。その成長が続けば増産した分の需要があったかもしれないが、25年頃から成長が鈍化している(㈳日本宅配水&サーバー協会統計参照)。このような観点から、本庄工場は減損の兆候があるのではないか。
■もう一つは、見学施設の必要性である。そもそもナックには創業の地・東京都町田市に「クリクラ中央研究所」などの見学施設が存在している。いま同社の工場見学案内を見ると、町田と本庄の二つが提示されるという、謎の状況になっている。なぜ、借り入れをしてまで2つめの見学施設をつくったのか。この点については、代表取締役会長・寺岡豊彦と創業者で名誉会長・西山由之の深刻な対立が遠因となっていると思われるが、そのことについては追って詳報したい。(続く)
(文中敬称略)

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