東証一部・阪和興業、海外出資先「OMホールディングス」が経営危機で貸倒リスク高まる


■独立系商社の阪和興業(東証一部・8078)の株価が高騰している。10月19日には一時年初高値の670円台に達した。2016年3月期の当期純利益は25,469百万円と26年ぶりに最高益を更新。しかし、丸紅、伊藤忠、三井物産など大手商社が相次いで海外の資源ビジネスに関する巨額の減損を強いられているのと同様に、阪和興業の海外における事業にも危険な兆候がある。阪和興業が約25億円を出資しているオーストラリア証券取引所上場のOMホールディングスについてだ。
■OMホールディングスはシンガポールに本社を置き、マレーシアや南アフリカにマンガン鉱山を所有する資源会社。阪和興業は2012年2月末に出資契約を締結し、OMホールディングス株9,767千AU$と同社転換社債21,450千AU$(当時のレートで合計約26億円分)を引き受けた。16年3月期は同社を発行体とする非上場外国転換社債が2,416百万円計上されている。だが、OMホールディングスが黒字だったのは出資直前の10年12月期(税引後純利益48,751千AU$)までで、以降は15年12月期まで赤字を垂れ流し続けている(当期純利益、単位千AU$:11年△11,733、12年△60,860、13年△49,093、14年△66,428、15年△125,041)。15年12月期時点の純資産は87,167千AU$(自己資本比率7.8%)であり、赤字体質を脱却できなければ近く債務超過となる。
■OMホールディングスのアニュアル・レポートによると、この転換社債の転換価額は0.80AU$である。11年は一時1.60AU$の高値を付けたこともあったが、阪和興業の引き受け後の株価は下がり続け、13年1月時点で0.30AU$台だったものが現在0.07AU$台に下落している。
■本来、この社債の償還は16年3月だったが、阪和興業は償還時期を2020年にロールオーバーしている。理由はおそらく、OMホールディングスは社債を償還できる資金を持っていなかったからだろう。現金残高は15年末時点で12,711千AU$、16年6月末時点で11,352千AU$である。だが仮にそうならば、阪和興業は相応の貸倒引当金を計上すべきではないか。いずれにせよ、近い将来相場が好転するかOMホールディングスが劇的な改善をしない限り、阪和興業は損失を表面化する必要に迫られるだろう。
■ちなみに、16年3月期の最高益達成は、16年2月23日開示の千葉・習志野市にある阪和流通センター東京の土地・建物の譲渡益によるところが大きい。帳簿価格6,389百万円を18,846百万円で売却することで、税効果を合わせて17,457百万円分純利益を押し上げた。
■実は、非開示となっている譲渡先は三井住友ファイナンス&リースである。売却した物件は今も継続使用されており、阪和興業のオペレーティング・リースの未経過リース料の総額は、15年3月期454百万円から8,870百万円と約80億円増加している。大部分は阪和流通センター東京に関するものと思われ、実質的なセール&リースバックによる利益計上の可能性が高い。譲渡価格がリース料総額に対してかなり高くなっているので利益の一括計上に問題はないだろうが、この取引がなければ純利益は前期より少なかった。
(文中敬称略)

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