■野村証券東京支店の営業マンが多数の顧客にIPO株への投資名目で詐欺行為を行っていた問題に関連し、野村証券は11月1日にホームページで、社員の詐欺行為についてニュースリリース「お取引等に不審な点がございましたらお申し出ください」を発表した。問題の発覚から1ヶ月以上経過したが、ようやく注意喚起に踏み切った。
■ニュースリリースは「お客様が金融詐欺等の被害に遭われないよう、お取引の際には以下の点にご留意いただくとともに、不審な点がございましたら、お取引店の総務課長にお申し出くださいますようお願いいたします」と始まり、なぜこの注意喚起がこの時期にされるのか一切記されていないが、当サイトなどによる一連の報道を受け、やむを得ず対応に出たと思われる。このような社員との取引に関する注意喚起が野村から出るのは当サイトが知る限り今回が初めてだ。
■だが、野村証券は既に報じたとおり、実際に詐欺被害にあった顧客への救済は「社員個人の問題」として行わない方針を伝えている。リリースには支店の総務課長に申し出るよう書かれているが、現状では〈当社社員の詐欺行為による被害については、当社は責任を負いかねます〉という一文を付け加えるのが適切だろう。
■また、末尾には「当社社員がお客様とのお取引の際に、個人所有の携帯電話、個人のメールアドレス、個人のLINEなどのソーシャル・ネットワーク・サービスの番号やアカウントなどを使用することは、厳に禁止しています」と記されているが、当サイトが入手した東京支店の別の営業マンが一部顧客に渡した名刺には、携帯番号とLINEのIDがご丁寧に記されている。野村が営業上、顧客に個人の連絡先を伝えることが、広く一般的に行われている証左だ。
■もちろん、個人顧客への営業をすべて杓子定規に行うべきではなく、接待など様々な局面で個人の連絡先を使う必要が出てくるだろう。リリースでも社員が個人の連絡先を伝えることは否定していない。しかし、そこには社員による詐欺行為のリスクが潜在しており、その点について野村が負うべき責任があるのではないか。
(文中敬称略)
2016年10月13日付レポート:【続報】野村証券詐欺事件 会社は被害顧客の救済しない方針を伝達 「社員の個人的問題」として処理か
2016年10月7日付レポート:野村証券東京支店の営業マンが多数の顧客から金銭詐取 IPO株購入名目で被害総額は数億円規模か 野村は「警察に相談」
2016年6月1日付レポート:野村証券が上場ゴール「Gumi」担当者を左遷 役員コース「京都支店長」から「お客様相談室長」に(一部訂正)