東証一部エスクリ、償却方法変更で28年3月期を「黒字化」 有利子負債が急増で実質「自転車操業」


エスクリ■東証一部に上場するブライダル関連事業のエスクリの業績が芳しくない。今期2Qの連結売上高は13,049百万円と前期比17.1%の増収だが、本業のブライダル事業の収益性は悪化の一途だ。セグメントの営業利益率を見ると、26年3月期2Qは12.68%、27年3月期2Qは9.74%、28年3月期2Qは3.48%、今期2Qは2.52%と推移している。原因は単価の下落とみられる。従来型の挙式と、28年3月期1Qより開示している単価の安い挙式「New Bridal Service」を合わせた単価は27年通期は1件当たり4,196千円、28年3,152千円、今期2Q累計で3,255百万円と大幅に下落している。リクルート・マーケティングパートナーズの調査では、平均的な挙式や披露宴の総額は26年3,337千円、27年3,527千円、28年3,597千円と上昇傾向にあり、時代に逆行する形で低価格攻勢をかけたようだ。
■エスクリは27年3月期に連結売上高23,228百万円、純利益1,439百万円の最高益を達成したが、28年3月期は売上高26,226百万円、純利益359百万円と大幅に業績が悪化、配当を7.5円から4.5円に減配した。この責任を取る形で、創業者である岩本博が会長に退き、25年入社で同年にエスクリが連結子会社化した株式会社渋谷の渋谷守浩が社長に就任した。28年4月には、岩本体制でナンバー3だった15年入社の安藤正樹も退任。事実上、現在のエスクリの経営は渋谷が握っている。
■さて、当サイトの試算によると、27年3月期の最高益や、28年3月期の僅かな黒字は、業績が良くなったからではなく会計方針の変更によりもたらされたものである。エスクリは、平成27年3月期から固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更したのだ。決算説明資料では1行も触れられていないが、決算短信の注記によると27年3月期利益への影響額は+417百万円とのことで、会計方針がそのままなら純利益は1,021百万円と減益であった。
■そして、28年3月期に至っては本来の赤字を黒字化した。有報で追うことのできる限りでは、26年3月期の単体の期首有形固定資産計上額(建物、工具器具)は7,186百万円で、償却費は987百万円計上されており、耐用年数は16年か17年と思われる。27年3月期の有形固定資産に対して計上されている定額法の償却費と、定率法で計上した場合の償却費との差額は318~478百万円となる。28年3月期の場合、有形固定資産11,905百万円に対して償却費1,024百万円が計上されているが、耐用年数が17年の場合は差額が463百万円となり、28年3月期は104百万円の赤字となる。
■会計方針変更は、平成25年5月発表の「中期経営計画」を理由としているが、発表から1年経過しているという点で後付け感がぬぐえない。理由を詳述すると、〈平成25年5月10日に発表した中期経営計画を達成するため、出店エリアをこれまでの首都圏、名古屋、関西の大都市圏から全国の都市部へと拡大して行くことを契機に、当社グループの有形固定資産の使用実態を見直したことによるものであります〉と記されている。具体的に、〈年間約2施設前後(6バンケット程度)の新規出店〉する計画と記されていたが、この計画は平成28年時点で事実上の白紙となっている。
■新規出店路線に伴う過大な投資は今後もエスクリの収益を圧迫するが、得をしたのは、渋谷の出身である内装工事会社の㈱渋谷である。エスクリが新設した式場の内装工事の大部分は㈱渋谷が請け負っている。子会社なので連結決算への影響はないが、渋谷からすれば父親から受け継いだ会社や取引先を大きくすることができる。また、信用調査会社の情報によると、㈱渋谷は28年3月期に約50百万円の役員報酬を支出しており、その全部ないし一部を渋谷本人か、あるいはそのファミリーが受け取っている可能性が高い。
■エスクリの固定資産計上額は25年3月期5,742百万円から28年3月期13,660百万円と大幅に膨れ上がっている。この設備投資の大半は借入により調達して行われたが、返済という問題が起こっている。28年3月期の有利子負債は11,179百万円で、1年以内返済予定額は2,843百万円、2年後は2,735百万円である。
■しかし、同社のフリーキャッシュフローはこの返済予定額に追いついていない。当サイトで試算(※)した27年3月期のFCFは△219百万円、28年3月期は△1,024百万円とマイナスだ。このうち、新規出店に係る支出を除いたFCFは27年3月期で1,249百万円、28年3月期で2,162百万円となるが、いずれも返済予定額に及ばない。つまり当面の間、エスクリは自転車操業を続けるか、新たな資金調達を迫られる可能性が高い。実際、今期2Qまでの半年で約5億円の社債を発行、有利子負債残高は1,105百万円(10.1%)増えた。
(文中敬称略)

※FCF=営業利益+営業CF計上減価償却費-PL計上法人税±運転資金増減-投資CF計上有形固定資産取得額

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です