■東証一部上場のカタログ通販大手ベルーナが開業を予定している「銀座グランベルホテル(仮称)」の建設計画が、少なくとも一年以上遅延している事が分かった。予定地は銀座七丁目の不二家ビル跡地で、連結子会社テキサスが2014年末に取得した885㎡の土地周辺。15年末の建設計画では、着工を16年5月、竣工を18年1月としていたが、この5月現在で未だに駐車場のままである。また、15年に追加取得した角地の物件では、現在もテナントが営業している。
■ベルーナはこの土地を米Fortress Investment GroupのSPCから約95億円(推定)で取得し、さらに15年末に連結子会社カリフォルニアのSPCがコリドー通りに面した角地の土地・建物(南欧ビル七号館、写真左)を追加取得した。ホテル計画の全体像はこれらの土地をあわせたものと思われる(ベルーナは計画の詳細について回答を留保)。用地取得金額は100億円近くかそれ以上と推定される。しかし、南欧ビルの一部の賃借人とは現在も立ち退き交渉中であり、角地を含めた計画ならば着工はまだ先となりそうだ。工期を20か月程度と見込んでいたことから、開業は凡そ1年以上後ろ倒しになる可能性が高い。
■ベルーナは14年3月期以降、不動産投資に注力しており、全体のポートフォリオに占めるプロパティ事業セグメントの資産計上額及び総資産に占める割合は、14年3月期13,759百万円:10.53%、15年3月期31,667百万円:20.8%、16年3月期40,335百万円:25.04%と推移している。
■過年度の有価証券報告書に記載されている賃貸等不動産の期末簿価は14年8,719百万円、15年23,252百万円、16年24,085百万円で、収入及び費用から表面:実質利回りを出すと14年10.59%:5.13%、15年5.04%:2.09%、16年5.92%:2.80%と推移している。今回取り上げた銀座の物件のような開発計画の遅延が資産効率低下の一因と考えられる。
■ベルーナが2015年5月に策定した「第三次中期経営計画(平成29年3月期~平成31年3月期)」には、基本方針として掲げられた4項目の一つにプロパティ事業の強化が挙げられており、プロパティ事業セグメントの売上高目標は16年6,100百万円、17年8,100百万円、18年8,600百万円、19年9,200百万円だ。
■だが、16年のセグメント売上高は4,419百万円で達成率は72%。17年度も先月開示の「3月度月次売上高前年同月比(速報値)に関するお知らせ」によればプロパティ事業+その他事業の売上高は前年比△5.2%で、今期3Qの実績を勘案するとプロパティ事業セグメント売上高は今期も目標未達となる可能性が高い。
■ベルーナは海外でもリゾートホテル計画を進めているが、15年3月に進出を決めたスリランカ・ゴールにおけるホテルの開業も遅延が生じている。当時の開示などによれば、事業費は12億円でベルーナの出資比率は85%で、開業は今年春の予定だったが、こちらも開業が18年に延期となっている。ベルーナはスリランカで2件目と、モルディブでリゾートホテル建設を計画中。現在、海外で運営しているホテルはないが、プロパティ事業セグメントの在外子会社への出資額は増加している。筆者が把握している在外子会社及び出資額は次の通りだ。
■INYA CAPITAL PTE. LTD.(シンガポール)9,020千米ドル、BELLUNA CAPITAL,INC.(米国)35,964千米ドル(2016年3月期中に増資)、BELLUNA LANKA PVT. LTD.(スリランカ)4,460百万LKR(2015年9月に増資)、MIRIANDHOO MALDIVES RESORTS PVT. LTD.(モルディブ)17,679千米ドル(2016年9月に出資)。1ドル112円、1LKRを75銭とすると、対外投資額は約100億円となる。プロパティ事業セグメント資産の膨張は、銀座グランベルホテル及び対外投資が主な要因と考えられるが、両事業とも計画に遅れが出ているということだ。
(文中敬称略)