東証一部エイベックスGHDの残業代計上額は適切か 法定通り遡及なら17年3月期は赤字


■エイベックスGHDの新しいコーポレートロゴ
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■エンターテインメント大手のエイベックス・グループ・ホールディングス(7860)が苦戦している。2017年3月期は売上高161,592百万円(前期比4.8%増)と増収だが、営業利益は5,728百万円(△21.3%)、親会社に帰属する当期純利益は118百万円(△97.2%)と、危うくで2009年3月期以来の赤字を出すところだった。だがこの「僅かな黒字」は、人件費を不適切に計上することで作り出された可能性が高い。
■エイベックスは今年5月に当期純利益を500百万円から100百万円に減額する下方修正を発表。その理由として持分法投資損失と減損を挙げていたが、同社の損益にとってダメージが大きかったのは労働者の未払い残業代の支払いだろう。エイベックスは昨年12月、所轄の三田労働基準監督署から残業代を支払うよう是正勧告を受けていた。
■この件については社長・松浦勝人がブログで〈時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい〉〈とりあえず場当たり的にやっつけちまえ的な不公平な是正勧告に見えてならない〉と苦言を呈し、話題となった。そこから約半年後の今年5月に新聞各社が相次いで「エイベックスが未払い残業代を支払った」とする記事を掲載した。
■報道内容を総合すると、2016年6月から2017年1月までの7カ月間の従業員約1500人の勤怠を調査した結果、未払い残業代が約700百万円あることが発覚した為これを支払い、さらに3月期末までの分を合わせて、約1,000百万円の残業代を17年3月期の損益に計上する、というものである。同社の過年度の従業員給与及び賞与は6,500百万円前後で推移していたが、17年3月期は7,525百万円(前期6,440百万円)に増加しており、報じられている金額と符合する。
■問題は〈2016年6月から2017年1月〉という期間設定だ。労基法115条は賃金債権の時効を2年としている。本来であれば、2015年1月から2017年1月までの2年間遡及して支払わなければならない。実際に他社で未払い残業代が発覚した際には、過年度に発生したものを含めて2年分の残業代を当期に費用計上している(※)。
■エイベックスの場合、7カ月間の未払い残業代が700百万円ということは分かっている。2016年3月期の従業員数は17年3月期とほぼ同じなので、ひと月あたり100百万円の残業代が発生しているとすれば、最大で支払うべき金額は2,400百万円だ。残業代の発生に季節性があったとしても、少なくとも追加で700百万円程度は支払わなければいけない。つまり、17年3月期は凡そ700百万円から1400百万円の残業代が不適切に計上されていないことになる。
■なぜ7カ月なのか――それはおそらく当期純利益の僅かな黒字を維持するためだろう。適切に計上した場合、2017年3月期は赤字に転落していたはずだ。
(文中敬称略)
2017年4月13日付『毎日新聞』ヤマト運輸未払い残業代支給 法定の過去2年分
2012年2月17日付:東証一部㈱オークワ「特別損失の計上に関するお知らせ」
2008年3月3日付『NIKKEI BP』ミズノ、残業代不払い18億6000万円、精算で業績予想を下方修正

 

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