【続報】湘南信金が“冒険的融資”の残土処分場、土地の売主が“反社”理由に取引拒否、訴訟へ 融資金の回収可能性に暗雲


■去る5月15日に当サイトがレポートした、湘南信用金庫(神奈川県横須賀市)が巨額融資を実行した千葉県市原市の残土処分場を巡り、土地を買収した㈱リアルランドエステートが、売主㈱ライジングを相手取り7月末に訴訟を提起していたことが分かった。訴状等によると、ライジング側が土地売買契約後、暴力団関係者の存在を理由として取引を拒否。リアルランドエステート側は事実無根として所有権移転登記の履行を求めて提訴している。
■この事案は、新たに残土事業を行う許可が下りていないのにもかかわらず、湘南信金がリアルランドエステートに対し残土処分場の担保価値を大きく上回る金額を融資したもので、回収可能性や融資に至る経緯に疑問があった。今回、売主サイドと紛争が表面化したことで残土事業の推進が暗礁に乗り上げている。
■訴状等によれば、リアルランドエステートはライジングから残土処分場の土地を1億2000万円で取得したが、5月17日、ライジング側が内容証明で〈貴社の代理人と称する人物、広域指定暴力団神戸山口組に所属していた元暴力団員の某氏により脅迫に準じる連絡が〉あったと主張して取引を拒否。リアルランドエステートは事実無根であると主張していたが、7月31日に千葉地裁に訴訟提起するに至った。
■なお、訴状に添付されている資料によれば、リアルランドエステートが取得した残土処分場の固定資産税評価額は43,611,799円で、湘南信金が実行したとされる融資額約6億円(関係者談、極度額は合計7億2000万円)の回収は残土事業が実施されなければ不可能といえる。以下に、千葉地裁に提出された訴状の要旨を掲載する。

訴状

平成29年7月31日
千葉地方裁判所 御中
原告訴訟代理人 弁護士 遠藤政尚
【当事者の表示】別紙当事者目録記載のとおり
【事件の表示】所有権本登記手続請求等
【訴訟物の価格】金1516万1514円
【貼付印紙額】金6万8000円
第1 請求の趣旨
1 被告株式会社ライジング及び被告アイケン工業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録記載1ないし28の不動産についてされた千葉地方法務局市原出張所平成28年6月10日受付第9732号所有権移転登記請求権仮登記に基づく平成28年6月10日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ
2 被告株式会社ライジング及び被告アイケン工業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録記載36の不動産についてされた千葉地方法務局市原出張所平成28年6月10日受付第9733号所有権移転登記請求権仮登記に基づく平成28年6月10日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ
3 被告株式会社ライジング及び被告アイケン工業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録記載37の不動産についてされた千葉地方法務局市原出張所平成28年6月10日受付第9734号所有権移転登記請求権仮登記に基づく平成28年6月10日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ
4 2 被告株式会社ライジング及び被告アイケン工業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録記載38および39の不動産についてされた千葉地方法務局市原出張所平成28年6月10日受付第9736号所有権移転登記請求権仮登記に基づく平成28年6月10日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ
5 被告株式会社ライジング及び被告アイケン工業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録記載40の不動産についてされた千葉地方法務局市原出張所平成28年6月10日受付第9737号所有権移転登記請求権仮登記に基づく平成28年6月10日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ
6 2 被告株式会社ライジング及び被告アイケン工業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録記載41ないし108の不動産についてされた千葉地方法務局市原出張所平成28年6月10日受付第9739号所有権移転登記請求権仮登記に基づく平成28年6月10日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ
7 被告株式会社ライジング及び被告アイケン工業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録記載109ないし143の不動産についてされた千葉地方法務局木更津支局平成28年6月10日受付第12225号所有権移転登記請求権仮登記に基づく平成28年6月10日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ
8 被告株式会社ライジングは、原告に対し、第1項ないし前項の各所有権移転登記手続について承諾せよ
9 訴訟費用は、被告らの負担とする
の判決を求める。
第2 請求の原因
1 売買契約の成立
原告は、平成28年6月10日、被告株式会社ライジングおよび被告アイケン工業株式会社(以下「被告ら」という。)の共有する別紙物件目録記載1ないし143の各土地(以下「本件土地」という。)を、金1億2000万円で買い受けた(以下「本件売買契約」という。甲1:登記事項証明書。甲2:不動産売買契約書)。
この代金は、契約と同時に内1200万円を支払い、残代金1億800万円は同年11月30日までに支払うとの約定であった(甲2)。
2 仮登記手続
原告および被告らは、本件売買契約に基づき、売買代金の完済を条件とする仮登記手続を行った(甲1)。
3 代金の支払状況
(1)原告は、平成28年6月10日、本件売買契約の代金として内1200万円を支払った(甲4の1:領収書)
(2)原告および被告らは、平成28年10月2日、残代金1億800万円について、同年同月4日限り内1200万円を支払い、その余の残金は別途協議により支払方法を決めるとの合意をした(甲3の1:合意書)。なお、被告アイケン工業株式会社は、被告株式会社ライジングに対し、上記合意につき委任している(甲3の2:委任状)。
原告は、同日、被告らに対し、上記残代金の内1200万円を支払った(甲4の2:領収書)
(3)原告および被告らは、上記合意に基づき別途協議を行い、原告は被告らに対し、平成29年2月22日に残代金の内2000万円を支払った(甲4の3:振込受付書)
(4)その後、原告は、被告らとの上記合意に基づく別途協議の結果、平成29年4月末日限り残代金の内2000万円を支払うことになっていたため、同年同月24日に、被告らに対し、この支払の準備をしたことを告げた。しかし、被告らは、この受領を拒否した。
(5)そこで、原告は、上記経緯及び後述の被告らからの解除通知書により残代金の受領拒否が明らかとなったため、金融機関からの融資を受け、平成29年7月28日、残代金合計7600万円を供託した(甲5:供託書)
4 仮登記後の移転登記
被告アイケン工業株式会社は、平成29年6月16日、本件土地全てにおける自身の共有持分を被告株式会社ライジングに全部移転する登記手続を行っている(甲1)。
被告株式会社ライジングは、被告アイケン工業株式会社から各持分移転を受けたため、登記利害関係人として、原告の被告アイケン工業株式会社に対する登記請求につき承諾義務を負う。
5 まとめ
よって、原告は、被告らに対し、本件売買契約に基づき、別紙物件目録記載1ないし143の各土地について本件売買契約を原因とする、売買代金完済を条件とする所有権(共有持分)移転本登記請求権を有する。
また、原告は、被告株式会社ライジングに対し、本件売買契約における仮登記に基づき、被告アイケン工業株式会社の共有持分における上記本登記請求に係る承諾請求権を有する。
第3 関連事実
1 本件売買の重要性
本件売買契約の対象である各土地は、株式会社エヌ・ティ・エルが、千葉県市原市および木更津市の境付近に存したゴルフ場跡地において、平成13年から残土受け入れ事業の許可を受けて実施したものの、残土処理の極めて杜撰な管理のため近隣地への土砂及び水害を生じさせ、その後、同社が破綻したため残土が放置されたままとなり、当時、社会的問題となった場所である。特定事業の対象地は、全体で約100万㎡に及ぶ広大な場所である。
長年放置され続け、千葉県庁等の行政及び近隣住民がこの対処に難航していたところ、原告が、平成28年からこの特定事業(建設残土受入事業)の許認可を継承し、当該事業を遂行するための準備を行ってきた。
原告は、本年11月には最終的な許認可を受ける予定であり、それまでに、本件土地の所有権を取得する必要があり、もし間に合わない場合には、当該事業が遅れることとなり大きな損害が生じてしまう。
このように本件売買契約の本件土地は、原告のみならず多くの利害関係人が関与する重大な特定事業の対象地であり、本件売買契約の完了は極めて大きな使命を負っているものである。
2 被告らの妨害
従前、売買代金の支払方法の協議によいて、被告株式会社ライジングの前代表三橋圭一および現代表川原英之などが関与していたところ、平成29年4月頃から、同川原英之は、上記特定事業における利益分の一部を供与するよう求めてくるようになった。
上記第2の3(4)のとおり、同月下旬、被告株式会社ライジングは、原告からの残代金の支払いにつき受領を拒絶するようになり、また、上記川原英之およびその周辺の者が、本件売買契約を解除する、第三者に本件土地を売買する、上記特定事業の許認可について原告が所有者でない場合には現所有者の同意が必要であるところこの同意をしない、といった発言をして、本件売買契約の履行をせず、上記特定事業に支障を生じさせる言動を示すようになった。
その後、被告株式会社ライジングの代表者は、平成29年5月17日付けで三橋圭一から川原英之に変更しており、川原英之が権限を持つようになっている(甲6)。
また、被告ライジング株式会社は、原告に対し、同日付通知書により本件売買契約を解除する旨の通知をしてきた(甲7:通知書)。
これに対し、原告は、平成29年6月13日付け通知書により、上記解除は認められないため、本件売買契約の履行をするように求めた(甲8の1:通知書、甲8の2、甲8の3)。
その後、同年6月16日付け受付により、本件土地における申立外アイケン工業株式会社から各共有持分を被告株式会社ライジングに全部移転する登記手続までされている(甲1)。
なお、上記原告からの通知書に対しては、被告アイケン工業株式会社から通知書(甲9)により一切の売買契約の地位及びこれに関する債権を被告株式会社ライジングに譲渡した旨の返答があった。また、被告株式会社ライジングについては、本店所在地宛の郵送が返送されてしまったため、代表者宛に再送したものの保管期間満了により返戻されてしまい、その後、同社の送達場所に再送している。
このように被告らは、本件売買契約の履行または特定事業の遂行を妨害する旨の発言のみならず、実際に行動にも移している。
3 上記のとおり、被告らは、本件土地の本登記について全く協力する姿勢がないことから、本件訴訟に及んだ次第である。

(文中敬称略)

本年5月15日付レポート:湘南信用金庫が“冒険的融資” 未認可の残土処分場に巨額融資

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