あずさ監査法人が組織ぐるみで監査調書改竄か 公認会計士協会の「品質管理レビュー」に備え杜撰監査隠蔽目的 パワハラ訴訟で争点化し判明


あずさロゴ■日本の四大監査法人の一つ「あずさ監査法人」(東京都新宿区、理事長:酒井弘行)が、公認会計士協会による検査「品質管理レビュー」等で監査業務の不備を指摘されるのを逃れるために、検査対象となったクライアントの監査調書を不当に改竄していた疑いが浮上している。2014年9月から今年7月まで争われたあずさ監査法人と同法人に所属していた公認会計士とのパワーハラスメントを巡る訴訟で、原告が担当していたSMBCフレンド証券の11年3月期、三井住友フィナンシャルグループの12年3月期の監査調書改変業務が争点化。訴訟資料などから、本来不正をチェックすべき立場にある監査法人が、組織的に杜撰監査隠蔽という不正に手を染めていた可能性が出てきた。
■公認会計士協会の品質管理レビューは、監査法人の監査実施状況を検査し、問題がある場合は処分の対象となる。主な検査対象はクライアント企業の財務データや内部統制の状況を纏めた監査調書だ。監査の基準では監査報告書提出日から整理期間として60日以内に監査調書の最終的な整理を完了し、以後は原則として手を加えてはならず、訂正などを行った場合は理由などを記載しなければならないと定められている。
■原告会計士は、報告書提出日から60日経過後に品質管理レビュー対象となった2社の監査調書改変に従事したと主張。あずさ監査法人は〈監査調書の形式的な事項の訂正等を行った事実はあるものの、監査基準等において監査報告書日以降に監査ファイルを整理すること等は一律に禁止されている訳ではない〉(被告準備書面より)と一部認めていた。
■訴訟資料によれば、11年7月22日、原告会計士が担当していたSMBCフレンド証券が公認会計士協会の「品質管理レビュー」の対象となることが決定した。SMBCフレンド証券の11年3月期の監査報告書提出日は同年5月9日であり、レビュー対象となった時点で60日が経過していた。
■ところが、レビュー対象となったSMBCフレンド証券の監査調書に監査未了の部分や追加監査が必要な点が多数みられたため、不備を指摘される可能性が高かった。そこで原告会計士らは、上司の指示で7月25日から10日ほどかけて改変した形跡が残らないように監査調書の改変作業に従事していたという。
■具体的には、あずさが使用している監査ツール「e-AudIT」に手を加えると履歴が残るため紙の調書を改変した。不足していた稟議書や残高証明など44の資料をクライアントであるSMBCフレンド証券から追加で入手するよう指示され、監査概要書に担当会計士のサインがないなど不備が発見された場合には、日付を5月9日にさかのぼってサインしていたことや、引当金や立替金に関する会計士のコメントを追加で記載していたことなどが原告の提出した証拠資料に記されている。改変を行った範囲は多岐にわたり、実質的な「監査やり直し」と言えるものだ。
■また、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)の12年3月期の監査調書も同様に改変が施されていたことが分かった。三井住友FGの監査に従事する担当者は100人以上おり、それぞれ与信チーム、連結チーム、証券チームなどに分かれて監査をしていたという。12年10月15日、三井住友FGが社内の品質管理レビューの対象となることが決定し、12年3月期に証券チームに所属していた原告会計士はまた、監査調書の改変業務に当たることになったという。
■〈このときの業務内容は、誤ったサンプル抽出及び検証作業について、再度、これらの作業を実施して監査調書を作り直す、不十分な監査手続の監査調書に、追加で新たに分析的手続を実施し、その結果を付け加えるといったものであり、およそ、書類の整理に止まるようなものではありませんでした〉(原告陳述書より)。監査業務の改変作業は11月下旬まで実施されたという。
■あずさは訴訟の中で、原告が監査調書の改変作業とした内容について〈実施された作業の例としては、通常、各監査調書には監査手続実施者が監査調書の作成時に各調書の右上部に、作成日及び作成者のサインを行うところ、そのサインをし忘れている箇所があった場合に、当該サインを追記した作業が挙げられる。また別の例としては、他の者が実施した監査手続に関して作成された監査調書と自分の作成した監査調書との関連性を明らかにするため、各監査調書に付された記号を相互に記載すること(リファレンス)が挙げられる〉(被告準備書面より)と一部を認めたが、原告から証拠提出された追加取得した資料のリスト等については否定したまま、訴訟は和解により終結している。
■こうした過年度の監査調書の改変作業に、公認会計士がかなりの作業時間を割いていたことも分かった。SMBCフレンド証券の監査時間は監査契約上、約2000時間とされているが、11年3月期の監査調書改変作業に従事した時間は約460時間とされており、この点については双方に争いはない。あずさが言うような〈監査調書の形式的な訂正〉程度の作業ならば、なぜこれだけの時間がかかるのか、という当然の疑問もあるが、ここにクライアント企業も関わる重大な問題がある。あずさが改変作業に要した時間を、翌期の監査時間として付け替え、申請させていた形跡があるのだ。
■訴訟資料を総合すると、たとえばSMBCフレンド証券の11年3月期の監査調書を同年7月から8月に行った場合、それに要した作業時間はSMBCフレンド証券の12年3月期監査のためのものと申請させていたという。原告会計士は、原告会計士は、翌期は別のクライアントの担当をしていたため別名目で申請していたが、三井住友FGの12年3月期監査の監査調書改変作業に要した作業時間は、三井住友FGの13年3月期監査の為と申請していたという。
■クライアント企業の監査役は、監査法人から監査概要報告書の提出を受け、その中で監査時間についても報告を受けることになる。この中に前期の監査調書改変作業に要した時間が含まれているとなると、当期の監査時間を過大に報告していた疑いがある。
■あずさ監査法人は「ご依頼がありましたご質問の件につきましては、個別案件に係ることですので、回答は控えさせていただきます」と本日、当サイトに回答した。あずさ監査法人を巡っては、監査調書改竄以外にも、複数のクライアントの監査調書を紛失する事件があったこともわかった。また、今回の監査調書改竄に関与した会計士が、のちに粉飾決算が発覚した企業の監査を担当していたことも分かっている。
(つづく)

あずさ監査法人が組織ぐるみで監査調書改竄か 公認会計士協会の「品質管理レビュー」に備え杜撰監査隠蔽目的 パワハラ訴訟で争点化し判明” への2件のフィードバック

  1. 今更気付くとか…
    品質管理レビュー対応の日付改竄なんて日常茶飯事だし、
    パートナーもそれを承知しとるわ。
    監査法人なんて、こんなことばっかに忙殺されてスタッフは死にかけやわ。

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