ジグソー(東マ:3914) 上場前に業務委託開発費返還請求訴訟に実質敗訴、訴状&和解調書全文公開


■今月1日発売の『ZAITEN7月号』(財界展望新社)に〈マザーズ「ジグソー」株価乱高下に喧しい“怪しげな噂”〉と題する、ジャーナリストのジェイク・アデルシュタインのレポートが掲載されたのを受け、2日の同社株はストップ安となった。レポートは、IoTを謳う同社の技術力に疑問を投げかけるとともに、上場時の株主にインターネットの仮想空間を巡り投資を募ったとして2011年に金商法違反で摘発された「ビズインターナショナル」の元役員が入っていたことなどを指摘している。
■ジグソーは同社の提携先が月面探査プロジェクトに参加したことに関連し宇宙関連の提灯記事が出たことや、AKBの秋元康がIPO時株主だったことなどで話題をさらい、株価が高騰していた。が、15年12月期の総資産1,039百万のうち、設備関連は32百万だけで、残りは現金、売掛金や有価証券などの金融資産。その設備の大半は26年12月期中に投ぜられた北海道のデータセンターの「内装費」だ(15年3月期は期首約20百万で償却後約16百万)。ちなみに13年12月期は総資産185百万のうち半分の94百万は社長の山川真考への貸付金。同社に「宇宙開発」を担えるだけの技術力があるのか疑問が残る。
■ジグソーは上場前の2010年に㈱クオリティから業務委託開発費返還請求訴訟を提起され、80百万で13年7月に和解、現在もその支払いが残っている。ここで、筆者が過去に東京地裁で謄写した訴状、及び和解調書を下記に掲載する。

【訴状】
平成22年4月23日
東京地方裁判所 民事部 御中
原告訴訟代理人弁護士 大塚一郎
同 山田裕香
同 千葉友美
〒102-0093 東京都千代田区平河町一丁目4番5号
原告 クオリティ株式会社
上記代表者代表取締役 浦聖治
〒106-0032 東京都港区六本木一丁目7番27号 全特六本木ビル5階
東京六本木法律特許事務所(送達場所)
原告訴訟代理人弁護士 大塚一郎
同 山田裕香
同 千葉友美
〒060-0809 北海道札幌市北区北九条四丁目10番地3
被告 ジグソー株式会社
上記代表者代表取締役 山川真考
業務委託開発費返還請求事件
訴訟の価額 金1億3748万4000円
貼用印紙額 金43万4000円
第1 請求の趣旨
被告は、原告に対し、金1億3748万4000円及び内金3150万円に対する平成20年5月30日から、内金6342万円に対する平成20年8月4日から、内金2100万円に対する平成20年12月25日から、内金2100万円に対する平成21年6月1日から、内金56万4000円に対する平成21年10月1日から、それぞれ支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
第2 請求の原因
1 当事者
原告は、コンピューターソフトウェア及びハードウェアの製作、販売等を業とする株式会社であり、被告は、インターネット・イントラネットのシステム構築支援及び開発等を業とする株式会社である。なお、被告は、平成20年8月20日に、その商号をアイピー・テレコム株式会社からジグソー株式会社に変更している。
2 業務委託契約の締結
(1)本件の業務委託は、原告が、新製品として、新たな手法でサーバーデータのバックアップを行うことを可能にする製品を開発・販売することを計画し、被告にこの製品開発に関する業務を委託したものである。原告と被告は、この業務委託に関連して、下記の契約を締結している。
原告と被告は、平成20年1月25日、原告を発注者、被告を受注者として行われる委託業務の基本事項について、業務委託基本契約(以下「基本契約」という)を締結した(甲1)。
原告と被告は、同日、基本契約に基づき、原告が被告に対し、バックアップシステム(以下「本件システム」という)開発のために要件定義業務等を委託し、この業務の結果に対して原告が被告に業務委託料として3000万円及びこれに係る消費税を支払うことを内容とする業務委託個別契約(以下、「第1個別契約」という。)を締結した(甲2)。第1個別契約では、被告が、本件システムを開発するために、本件システムに関する要件仕様書、画面・機能一覧、画面遷移フロー、商品構成概要書及びプロジェクト計画書(以下「要件仕様書」という)を作成して、平成20年3月31日までに原告に提出することが定められた(甲2、第2条)。
そして、原告と被告は、平成20年5月1日、基本契約に基づき、原告が被告に対し、本件システムの開発業務を委託し、この業務の結果に対して原告が被告に業務委託料として1億2000万円及びこれに係る消費税を支払うことを内容とする業務委託個別契約(以下、「第2個別契約」という。)を締結した(甲3)。この第2個別契約においては、被告が、平成20年6月30日に本件システムの詳細設計書等を納品し、同年9月30日に本件システムの開発を完成させ、その他の納品物全てを納品することが定められた(甲3、第2条3項)(以下、第2個別契約における納品物を総称して「本件システム納品物」という)。
(2)このように、第1個別契約と第2個別契約は別個に締結されたが、第1個別契約は、本件システムを開発するために、本件システムの要件仕様書等を作成することを目的とするものである(甲2、第2条)。一方、第2個別契約では、被告が本件システムを開発することを目的とするものである。つまり、第1個別契約は、本件システム開発業務を開始するにあたりその開発の初期業務を行うためのものであり、第2個別契約の目的を達成するための前提となるもので、両契約はその目的とするところが相互に密接に関連付けられており、第1個別契約は第2個別契約の一部となるものであった。以下、第1個別契約と、第2個別契約を総称して「本件個別契約」という。
3 原告の被告に対する業務委託料等の支払い
(1)被告は原告に対して、第1個別契約の納期を過ぎた平成20年4月に入ってから、「Quality製品機能分析」と題する報告書、及び製品概念図の一部と思われるエクセルファイル等を提出したが、これらは第1個別契約の納品物としては不完全なものであった。
しかし、原告は、本件システムの開発を促進するために、被告に対し、平成20年5月30日に、第1個別契約に基づき、業務委託料として、以下のとおり合計1億542万円(消費税込み)を支払った。
① 平成20年8月4日 6342万円(消費税込み)
② 平成20年12月25日 2100万円(消費税込み)
③ 平成21年6月1日 2100万円(消費税込み)
第2個別契約の最終納期である平成20年9月30日の納期を過ぎても、被告による納品は完了していなかった。しかし、原告は、被告から、「開発パートナーの資金繰りが苦しくなった」との説明を受け先払いを懇請されたことから、上記のように平成20年12月25日に2100万円の支払いを行った(上記②の支払)。ところが、被告は翌年になっても、不完全なものしか納品せず、そのうえ、原告に対し、「平成21年6月末に本件システムのプログラム開発を完了し、同年9月には原告が本件システムを販売できるように最後の開発を行っている。その納期遵守のために作業メンバーを確保したいので、2000万円(消費税抜き)の前払いをしてもらいたい」旨、さらに懇願してきた。納期を大幅に遅延しているにもかかわらず、被告が前払いを度々要請することから、原告は、被告に対し、原告がこの前払いをする代わりに、被告が平成20年9月30日までに納品すべきであった本件システム納品物を平成21年6月30日までに納品することを要求した上、上記平成20年6月1日(上記③)の2100万円(消費税込み)の支払いを行った。そのような内容の覚書が平成21年6月29日に原告と被告の間で締結されている(甲4)。
(3)さらに、業務の遂行のために必要となる被告の出張旅費・宿泊費等の諸費用の負担につき個別契約に定められていない場合は、被告が負担することとなっていたが(甲1、第7条第2文)、原告は、被告より委託を受けて、本件個別契約の業務の遂行のため必要となった被告従業員及び被告の下請け会社の従業員の宿泊費56万4000円を、被告に代わって原告子会社をして支払わせた。原告は、被告に対し、原告子会社が立替払いした宿泊費を平成21年9月30日までに原告に支払うよう請求したが(甲8)、被告からの支払はなされていない。
(4)このように、原告は被告に対し、本件個別契約に基づく業務委託料及び立替旅費として総額1億3748万4000円を支払った。
4 被告の債務不履行による契約の解除
(1)しかし、被告は、前記覚書(甲4)において確約した平成21年6月30日になっても本件システム納品物を納品しなかった。
原告は繰り返し履行を求め、平成21年10月20日には最低限の機能に絞った仕様だけでも同年10月中に完成させてほしいと被告に申し入れた(甲5)。しかし、被告は、同月22日、原告に対し、システム仕様を落とすだけでも一ヶ月はかかり、更に開発期間は約束できないので、本件システムの開発受託を放棄したいと述べた(甲5)。
(2)そこで、原告は平成21年10月30日付け内容証明郵便をもって、すでに支払った業務委託料の返還を求めたが(甲5)、被告は、平成21年11月12日付けの文書で、これに回答し、原告が被告から納品を受けた仕様書やプログラムを検収したことを理由に、返金に応じなかった(甲6)。しかし、被告が検収であると主張するものは、本件システムの開発途中の進捗を確認する意味合いのものに過ぎず、原告が本件システムの完成品の納品を受け、その仕様が要求水準に至っていることを確認したものではない。開発途中の段階で納品された成果物があったとしても、完成品が納品されなければ業務委託契約の目的を達することができず、それらの成果物は無価値である。
(3)なお、被告は第1個別契約については要件仕様書等の一部を納品している。しかし、前述のとおり、第1個別契約にの目的とするところは第2個別契約の目的と相互に密接に関連付けられており、両契約は密接不可分のものである。本件システムが完成しなければ、第1個別契約に基づいて作成された要件仕様書等が納品されたとしても、社会通念上契約を締結した目的は全体として達成されないのである。そのため、被告が第2個別契約に基づき本件システム納品物を納品しない以上、第2個別契約の債務不履行を理由として、その目的とするところがこれと密接に関連付けられている第1個別契約も併せて原告は解除することができるものである。同一当事者間の債権債務関係がその形式は複数の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、いずれかの契約が履行されるだけでは契約を締結した目的が全体として達成されないと認められる場合には、一方の契約の債務不履行を理由に、当該契約と併せて他方の契約も解除することができることは、最高裁判所判決も認めるところである(最判平成8年11月12日民集50巻10号2673頁)。
(4)そこで、原告代理人弁護士である大塚一郎らは被告に対して、平成22年4月1日付内容証明郵便をもって本件業務委託個別契約を解除する旨の意思表明をし(甲7の1)、同内容証明郵便は同年4月2日に被告に到達した(甲7の2)
5 よって、原告は、被告に対し、本件個別契約の解除に基づく支払済み業務委託料の原状回復請求として1億3692万円及び内金3150万円に対する委託料受領の日である平成20年5月30日から、内金6342万円に対する委託料受領の日である平成20年8月4日から、内金2100万円に対する委託料受領の日である平成20年12月25日から、内金2100万円に対する委託料受領の日である平成21年6月1日から、それぞれ支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による利息の支払、並びに被告の委託を受け原告が被告に代わって原告子会社をして支払わせた被告従業員及び被告下請け会社従業員の宿泊費56万4000円及びこれに対する支払期限の翌日である平成21年10月1日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による利息の支払を求める。

【和解調書】
第24回弁論準備手続調書(和解)
事件の表示 平成22年(ワ)第15281号
期日 平成25年7月19日午後4時40分
場所等 東京地方裁判所民事第31部準備手続室
受命裁判官 舘内比佐志
受命裁判官 中田萌々
裁判所書記官 坂本真也
出頭した当事者等
原告代理人 大塚一郎
同 千葉友美
被告代理人 齋藤一之
当事者の陳述等
第1 当事者の表示
東京都千代田区平河町1丁目4番5号
原告 クオリティ株式会社
同代表者代表取締役 浦聖治
同訴訟代理人弁護士 大塚一郎
同 千葉友美
同訴訟復代理人弁護士 西岡志貴
札幌市北区北九条4丁目10番地3
被告 ジグソー株式会社
同代表者代表取締役 山川真考
同訴訟代理人弁護士 井上晴孝
同 桜井美佐
同 齋藤一之
同 中神綾子
第2 請求の表示
請求の趣旨及び原因は訴状記載の通り
第3 和解条項
1 被告は、原告に対し、本件和解金として8000万円の支払義務があることを認める。
2 被告は、原告に対し、前項の金員を、平成25年9月から平成29年6月まで各年3月、6月、9月及び12月、いずれも末日限り(ただし、当該日が銀行営業日でないときは、その直前の銀行営業日限り)、500万円ずつ分解して、原告「クオリティ株式会社」名義の三井住友銀行麹町支店の当座預金口座(口座番号2004548)に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は被告の負担とする。
3 被告が前項の分割金の支払を1回でも怠ったときは、当然に期限の利益を失い、被告は、原告に対し、第1項の金員から既払金を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年10パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
4 原告はその余の請求を放棄する。
5 原告及び被告は、原告と被告の間には、本和解条項の定めるもののほか何らの債権債務がないことを相互に確認する。
6 訴訟費用は各自の負担とする。
裁判所書記官 坂本真也

(文中敬称略)

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