■昨年の秋、東京地検特捜部が着手した東北復興工事を巡る汚職等の捜査で浮上した「豊田建設」。着手後に同社顧問・斎藤弘正が焼身自殺したことなどが影響し、汚職絡みの起訴などはなく捜査は終結したが、同社が破産手続きに入ったことで経営実態が明るみに出つつある。その中で、商工中金と政策金融公庫が豊田建設による融資詐欺の被害に遭っていた疑いが浮上している。
■関係者によると、捜査当局は東北復興工事を国から受注していた大成建設の下請けであった豊田建設が、大成建設へのキックバックや地元政界・反社会的勢力への裏金を支払っていたと睨んでいたようだ。実際、豊田建設の破産時点のバランスシートに計上されている有価証券や貸付金およそ十数億円は裏金捻出のための支出と見られる。関係者は「11億円の貸付先として登場する㈱オーディーエー(現・エコアップ)は豊田建設社長・豊田裕之の子飼いが経営しており、豊田建設から直接使途不明金を出すのは憚られたので、ここから多方面に金を配っていた」と指摘する。オーディーエー社は民事再生中であり、豊田裕之はこの貸付による財産上の損害について法的責任を問われてもおかしくない状況にある。
■また、豊田建設は南相馬市の寄宿舎10棟の建設資金として、2015年末に商工中金から2億円、16年2月に政策金融公庫から1億円の合計3億円の融資を受けている。寄宿舎は16年6月に登記されているが、実態は外観を整えただけのものだったことが明らかになっている。前出の報告書にはユニットバスや配管が未整備で、屋根さえつけられていないなどの状況が記されていた。「融資を得るためにコンテナを積んで階段をつけただけで、寄宿舎を完成させることは当初から考えていなかったはず」(前出・関係者)。融資金は本来の目的とは別に費消された可能性が高い。
■東京地検特捜部は昨年10月から今年5月まで、ダンボール67箱に及ぶ豊田建設の資料一式を押収しており、こうした実態を把握しているはずだ。捜査の過程で死人を出し、政府系金融機関の融資金も詐取された疑いがあり、多数の経済犯罪の端緒がありながら、幕引きして本当によかったのか。
(文中敬称略)
本年5月31日付レポート:【ミニ情報】「豊田建設事件」に巻き込まれた愛知の優良企業「アバンセコーポレーション」、本社ビル差押えの悲劇