■今月13日に親会社のSGホールディングス(9143)が東証一部に上場した佐川急便が、東京急行電鉄株式会社(東急電鉄)から個人情報漏洩などで今年8月に提訴されていたことが分かった。SGホールディングスを巡っては近年、残業代未払いや駐車違反の「身代わり出頭」などが明るみに出ており、宅配現場の混乱が懸念されている。
■訴訟資料によると、東急グループの広告代理店㈱東急エージェンシーは2011年から医薬品メーカー・ホーユー㈱のキャンペーン事業を受注しており、16年4月、東急電鉄は佐川急便に抽選キャンペーン当選者へのプレゼント賞品約600件の出荷を依頼した。
■佐川の営業所に届いた賞品のうち、貼付された発送伝票(5枚綴り)の一部に宛名が印字されていないものがあることが発覚した。東急電鉄は佐川急便から「宛名のない荷物だけを抽出するのは労力がかかるため、発送伝票を一度すべて剥がし、新しい発送伝票(ラベルシール)への張り替えをする」と提案を受け了承した。
■ところが発送の直後、クライアントのホーユー顧客相談室に「賞品の発送伝票の下に、別人の顧客伝票が張り付けられていた」というメールが入った。調査の結果、発送伝票を剥がす作業が徹底されておらず、5枚綴りのうち上の2枚しか剥がしていなかったことが分かったという。おそらく送り主控えと取扱店控えのみを剥がしたのだと思われる。
■結果、東急エージェンシーはホーユーから個人情報保護体制に問題があるとされ、一切の取引が中止された。東急電鉄は佐川急便が個人情報取扱事業者としての安全管理措置義務に反しているなどとして、実損など約2500万円を求めている。一方佐川急便は、訴訟提起に先だってあった民事調停で和解案として50万円を提示しており、両者の間で大きな隔たりがある模様だ。金額的に小さい訴訟だが、大企業との紛争は佐川急便の信用に影響を及ぼす恐れがある。