東証一部UKCホールディングス、粉飾の「南京ビジネス」関係者の処分巡り紛争 香港子会社代表が「不正にタッチしていない」と弁明


■田口雅章取締役(元副社長)
■田口雅章取締役(元副社長)

■半導体商社で東証一部上場のUKCホールディングス(社長・栗田伸樹、コード3156)は昨年7月、子会社 UKC ELECTRONICS (H.K.) CO., LTD.(UKC香港)において焦げ付いた売掛金の回収偽装など不正会計を行ったとして、過年度の決算を訂正。代表取締役社長だった福寿幸男が退任、副社長の田口雅章は平の取締役に降格し、UKC香港の董事長総経理だった河端敬一も8月14日付でUKCホールディングス執行役員を退任した、と適時開示されている。だが実は、河端は同日付で「退任」したわけではなく、8月28日に14日付にバックデートされた「解任通知」が送付されており、不正の認識を巡って河端と会社側で意見対立あることが分かった。
■会社側発表では、河端は昨年7月31日付でUKC香港の董事長総経理も退任したことになっているが、この処分を巡っても争いがある。本体の執行役員の退任を巡っては、河端は14日の適時開示でその事実を知り、8月22日に田口らから「執行役員を退任してもらうかわり、月額100万円で3か月間顧問とすることをお願いしたい」と申し出があるも拒否。その結果、UKCホールディングス社員から8月28日にメールで、8月14日付解任通知が送付されている。自らの意思で身を引いた「退任」ではないことは明らかだ。
■実は、傍目には不正会計の責任を取らされている河端だが、第三者委員会による調査や、処遇を巡る会社との紛争で「UKC香港の代表者として関わりを持っていたが、一切不正と評価されるような行為はしていなかった」と主張しているのである。
■昨年に問題となったのは、旧共信テクノソニック(09年UKCに経営統合)南京事務所OBが経営する代理店が、香港のQuatius Limitedに液晶パネル(LCDパネル)を販売する取引に、UKC香港が介在する「南京ビジネス」と呼ばれた取引である。「商社金融」に似たもので、Quatius社への債権管理は代理店が行い、商品のLCDパネルもUKC香港を通さずに直接Quatiusに納められている。UKC香港は営業も与信管理もせず、ただ代理店に前渡金を支払うだけで、売上と利益が乗ってくるものだ。
第三者委員会の調査報告書によれば、2013年頃からQuatius社との取引が拡大しはじめ、14年4月以降は月の売上高が10~30百万米ドルにまで膨らんだという。14年3月期のUKC香港の売上高は35,462百万円、15年3月期は41,480百万円と連結売上高の10%を超えていた。
■ところが2015年3月に売掛金46百万米ドルが滞留する。ここから貸倒引当金の計上を逃れるために、代理店へ支払う前渡金を売掛金の回収偽装に流用させるなどの不正が始まったとされる。UKCホールディングスは昨年3月にQuatius社の転換社債100百万米ドルを引き受けているが、一連の不正な取引の解消を狙ったものである可能性が高い。この社債の評価額も不当なものであったと認められている。
■UKC香港においてQuatius社を相手方とする「南京ビジネス」が本格化したのは2013年頃であり、河端が入社する以前であった。河端は14年6月から顧問としてUKCに雇われ、UKC香港の董事長に就いたのは同年10月。第三者委員会の調査報告書を見ても、UKC香港の売掛金問題に関する重要な協議は主に社長の福寿、副社長の田口が携わっており、入社したての河端に「南京ビジネス」をハンドリングできていたとは言い難い。むしろ会計事務所出身の田口は専門知識を有していたという点で悪質度は高いが、現在もUKCホールディングスにおいてナンバー2の取締役に収まっている。
■UKCホールディングスは当サイトの取材に対し、「弊社は、河端氏につき、平成29年7月31日付けでUKC香港董事長の任を解き、同年8月14日付けでグループ執行役員の職を解きました。よって、各日に河端氏は、解職され各職を退任されたものです。この各解任の事実は、河端氏本人に通告しております。グループ執行役員の解任について、河端氏本人は納得されず、文書をメールでくださいと要求されたため、念のため『8月14日付けでグループ執行役員の職を解いた』旨、8月28日にメールいたしました」と回答。また、河端の前任者について取材したが、「開示致しかねます」とのことであった。
■当サイトの調べによると、UKC香港における河端の前任者は、UKCホールディングスにおいて14年12月まで取締役海外営業統括だった山下隆明である。12年6月より以前は元社長の丸山保夫が就いていた。それが不正発覚直前に入社間もない河端をUKC香港に置いたのは、何らかの思惑があったのかもしれない。
(文中敬称略)

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