ハコ企業の末路(3) 上場廃止のインスパイアー 増資資金流出の“荒業”続々


■今から約4年前の2014年3月、インスパイアー㈱(社長・駒澤孝次)は、主要な売上がゼロ、債権者から破産申立を受けるなど瀕死状態の中、奇跡的にスポンサーを捕まえ650百万円の増資を敢行。500百万円の債務超過を脱したが、一時会計監査人を見つけることができずに同年8月、あえなく上場廃止となった。スポンサーの林功が経営する倉庫会社・TNDウェアハウスは増資に充てた高利の資金調達が仇となり、昨年3月に東京地裁に破産開始決定を受ける悲劇的な結末を迎えた。後にインスパイアーに約200百万円の簿外負債があったことが判明しており、結局増資しても債務超過だったわけで、上場廃止は運命的と言えた。
■そして、このインスパイアー事件にはもう一つ見逃せない側面がある。14年3月に650百万円の現金は入金されたのだが、債権者・合同会社エコに対する請求異議訴訟への供託金150百万円を除く現金の大半が、瞬く間に消失していた事実だ。
■増資後の14年3月期の総資産665百万円に対して、現金は599百万円、負債総額は(合)エコに対するものを合わせて533百万円。これが上場廃止時の8月には、総資産90.2百万円に減少、うち現預金10.8百万円のみで、対する負債総額は簿外のものを含めて約900百万円に膨れあっていた。事業がない会社である。資金が流出した背景には、現金強奪ともいえる“荒業”の数々が繰り広げられていたことが、破産管財人による調査等でわかった。
■事が始まったのは増資から一週間後の月曜日、14年4月7日である。インスパイアーの提携先で、元々大口債権者であったピエラレジェンヌ㈱という会社がある。同社は債権の大半をデッドエクイティスワップ(債務株式化)し、残債の40百万円を12年3月30日に債務放棄したはずだった。ところが14年2月28日付「合意書」により、提携解消などを理由にこの債務が“復活”したとして、4月7日に利息を含めた47.5百万円が支払われた。
■さらに同日、インスパイアーはJパートナーズ合同会社から米国のWaxassHoldings社株262,107個を約50百万円で取得(1株当たり約194円)した。だがその後の調べで評価額は1株当たり0.01米ドル=約1円に満たないことが判明している。資産を時価よりも意図的に高い金額で購入し裏金を捻出する、いわゆる「預け」に近い行為だ。この合計1億円の“出金”は同日付で開かれた取締役会で、社長の駒澤、役員の野瀬有孝、監査役の浦野道郎の全会一致で承認されている。
■次に来たのが“赤字スルー取引”だ。同月10日、インスパイアーは全く畑違いの生花・雑貨卸売取引に乗り出したが、仕入先・販売先がそれぞれ1社しかない帳合(スルー)取引である。実際の取引の総額を見ると、10日から同年8月15日までに、㈱プライムコーポレーションから合計268百万円を仕入れ、ラポール㈱へ合計185百万円で販売した。上場廃止の8月時点での在庫・買掛金の計上はなく、ラポールへの売掛金64百万円は残っていることから、この取引はキャッシュフロー上▲147百万円の赤字になる(なお売掛金は9月に回収されたので、最終的に83百万円の赤字)。一般的なスルー取引ならば、微妙な利益ないし赤字を出しながら売上が拡大していくものだが、インスパイアーのそれは大幅な赤字と資金流出が伴っている。
■ここで販売先として登場するラポールは昨年10月に破綻(民事再生法の適用申請)しているが、先述のJパートナーズ合同会社はラポールの株主であり、社長は同一人物。また、プライムコーポレーションの社長と後述する㈱ケースタイルの社長も同一人物だった。これらの取引が連なったものであることを臭わせている。さらに、林功を増資に引き込んだとされるファイナンシャルアドバイザーの星野智之も「開示支援コンサルティング業務」を受託したとして11百万円の支払いを受けていたことが分かった。
■そして疑惑の核心が㈱ケースタイルに対する“簿外負債”である。前回のレポートで詳述してあるが、2010年6月に締結した準消費貸借契約を原因とする200百万円の負債で、14年5月26日に支払督促申立があり、同月28日に送達。対するインスパイアーは異議申立することなく仮執行宣言が発令された。ケースタイルはインスパイアーが合同会社エコとの訴訟で供託した150百万円に差押えをかけた。
■いわば忽然と浮上した簿外負債に対してインスパイアーは「無血開城」を許したわけだ。しかし、これに先立つ14年4月3日に、麻布税務署がケースタイルとの債権債務関係を照会したところ、インスパイアーは「0円」と回答していたから辻褄が合わなくなっている。本当に債務は存在していたのか、していなかったのか。
■なお、資産流出が進行していた最中の14年5月初旬、資金を出した林功は社長の駒澤ら経営陣、ADCCの星野、Evolution Japan証券幹部らと面談している。当然、駒澤たちから“債務の復活”や米国株購入、“赤字スルー取引”等についての説明はなく、「会社は守れるが、業績が伸ばせない」などと嘯いていた。ほとんど共同謀議に近い形で資金流出に関与していたのだから、関係者はさぞ笑いが止まらなかっただろう。(つづく)
(文中敬称略)
2016年8月2日付レポート:ハコ企業の末路(2)上場廃止のインスパイアー 仕組まれた巨額簿外負債「ケースタイル」の罠

2016年6月17日付レポート:ハコ企業の末路 上場廃止のインスパイアーが第二回債権者集会 6億の現金が雲散霧消

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