【ミニ情報】“秋元銘柄”として知られる東証マザーズ上場イグニス 本業低迷の中、使途不明「営業貸付金」が急増


■イグニスは“秋元色”を前面に出していた(子会社パルスHPより)
■イグニスは“秋元色”を前面に出していた(子会社パルスHPより)

■2014年7月にマザーズ上場を果たしたスマホゲームアプリ開発等㈱イグニス(社長・銭錕)は13日、2019年9月期第1四半期決算を発表。売上高1,289百万円(前期比△9%)、営業利益△247百万円と減収・15年9月期以来の赤字転落であった。同社と言えば、音楽プロデューサーの秋元康が子会社パルス㈱に「資本参加」することが材料視され、16年11月頃まで1300円程度で推移していた株価は同年12月中旬に6000円台まで高騰し話題となっていたが、現在株価は高騰前の水準に戻り始めている。
■業績悪化の要因は主力のネイティブゲームアプリ事業の失速と広告宣伝費・手数料等のコスト増と考えられる。ネイティブゲームアプリ事業の1Qあたりの売上高は、最盛期の16年9月期4Qの1,349百万円に比べ、当期1Qは799百万円(△40.7%)と減収。なお投資家の耳目をさらったVR事業は子会社設立(16年11月)からいままで殆ど業績に寄与していない。そのような中、同社のバランスシートには奇妙な兆候が表れ始めている。使途不明の営業貸付金が急増しているのである。
■同社BSに営業貸付金が計上されたのは16年9月期2Q、金額は70百万円と軽微なものであった。ところが17年9月期1Qに379百万円、同期2Qに641百万円、同期4Qには1,286百万円と膨れ上がっていった。当期1Qの計上額は1,422百万円だが、これとは別に立替金計上されているものが269百万円あり、流動資産計上されている金融資産は1,692百万円と、純資産の4割を占める重要なものになっている。
■短期貸付金ではなく“営業貸付金”ということであれば、イグニスはベンチャーキャピタルや消費者金融のような投資・金融事業を16年2Qに始めたという事になるが、そのような記載は同社ホームページにも過年度の決算説明資料にも殆どされていない。イグニスに金融ノウハウに長けている者が就職した、などという話も聞かない。イグニスに取材したところ、「IR的に情報を発信できる段階ではないが、水面下で新規事業への投資を行っている」として、具体的な内容は不開示だ。これは同社の体質を考えると妙な話である。イグニスは未だ事業化できていないVR事業などは些細な情報でも派手に開示していたではないか。
■有価証券報告書の注記によれば、この使途不明の営業貸付金のうち、60百万円は16年9月期からイグニスの持分法適用子会社の㈱ロビットに貸し付けられたものであり、17年9月期も同額が計上されている。16年9月期2Qから計上されている70百万円の大半はここに対する債権、ということになる。
■流動資産計上されているということは1年以内に返済期限が来ているはずだが、㈱ロビットは返すことができなかったのだろう。㈱ロビットは16年7月に「目覚ましカーテンmornin’」をリリースしたが、17年9月期2Q以降は持分法投資損失が計上されており、㈱ロビットが利益を出せていないことが分かる。同様に赤字ないし回収可能性に疑義のある貸付先が今後、出てくる恐れがある。なお現時点でイグニスは営業貸付金への引当はしていない。
■たしかに、本業が低迷する中で新機軸を模索するためにやむなく資金を投じているならば致し方ない。だがこの多額の営業貸付金の原資は、本来別目的の資金使途として調達されたものだ。16年5月、同社はドイツ銀行ロンドン支店に行使されれば最大で4,314百万円調達できる新株予約権を発行、その資金使途を①人材の採用・育成に係る人件費940百万円、②無料ネイティブアプリ事業の広告宣伝費1,118百万円、③ネイティブソーシャルゲーム事業の広告宣伝費2,256百万円、としていた。同年11月、ドイツ銀行ロンドン支店が新株予約権の一部を行使し、約1734百万円が払い込まれた。
■ところが払込のあった17年9月期の通期営業キャッシュフローによると、法人税の支払い(1,253百万円)と営業貸付金(1,216百万円)の大きなキャッシュアウトがある一方、資金使途としてあげられていた人件費はといえば、17年9月期は635百万円(前期549百万円)と僅かな伸びで、広告宣伝費も1,389百万円と前期948百万円と増加額は441百万円。17年1Qの営業貸付金と立替金の合計額は前述の通り1692百万円であるから、増資で得た約1700百万円の大半が本来の資金使途とは違うものに充てられていることは明らかだ。
(文中敬称略)

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