【続報】混迷するベインキャピタルの広済堂MBO、経営陣が「監査妨害」したと監査役が抗議


■混迷を極めている東証一部・広済堂(社長・土井常由)のMBO、本日、ベインキャピタルのビーグルである買付主体「㈱BCJ-34」が、3月1日としていた買付期間を同月12日まで延長した。広済堂のMBOには創業家で第2位株主の櫻井美江と、監査役の中辻一夫が2月18日付で反対表明を行い、広済堂はそれに反論していた。昨日にも中辻は、広済堂の経営陣がこの間、「監査妨害」を行っていることを指摘し、抗議する文書を取締役会、東証と記者クラブに提出している。当サイトでも下記の通り全文を紹介しておくこととする。

※参考:2019年2月19日付広済堂「当社監査役のMBOに対する反対の意見表明について」

▼監査役による新たな文書
平成31年2月25日
各位
株式会社廣済堂
監査役 中辻一夫

株式会社BCJ-34による株式会社廣済堂株式(証券コード 7868)に対する公開買付けに関する反対及び同社経営陣の監査妨害に対する抗議のお知らせ

第1 私が本公開買付けに反対した経緯及び監査妨害に対する抗議
株式会社廣済堂(以下、「廣済堂」といいます。)は、平成31年2月18日に「本日の報道について」と題するリリース(以下、「本件開示書面①」といいます。)を、同月 19 日に「当社監査役の MBO に対する反対の意見表明について」と題するリリース(以下、「本件開示書面②」といいます。)を各開示し、私が同年1月17日開催の取締役会において本公開買付けに「異議がないことを明示した」こと、及び私の監査請求に対しては「当該疑念が払拭された場合には、中辻監査役の監査役としての職務遂行に必要な範囲で中辻監査役からの報告請求に応じる意向を有しております。」ことを述べています。そして、廣済堂経営陣は、私に対し、同月21日付け「回答書(2)」を送付し、本日開催の取締役会において「改めて本件に関する事実関係の確認と貴殿の意思を確認させて頂く必要があると考えております」、私の監査請求に応じるか否かについては「まずは貴殿ご提案のこれらの措置が、当社取締役の上記疑念を払しょくできるような態様で実際に実施されるかを見極めたいと考えております。」と述べています。
しかし、私は、同年1月17日午前11時ころ、同日午後1時から取締役会が開催されるとは知らされないまま面談した取締役から、初めて本公開買付けが実施されることを知らされ、その後の昼食時に、取締役会の招集通知を初めて手渡されました。そのような時間的余裕も必要資料も与えられない中で、本公開買付けのような株主の皆様に重大な影響を及ぼす取引について、監査役として責任をもった意見形成をすることができないことは、常識的に考えて、当然のことであると思料します。そこで、私は、同取締役会の時点においては、本公開買付けについて、賛成も反対もしませんでした。
その後、私は、意見形成のために必要な情報を得る必要があると考え、同月24日、取締役と面談をし、改めて本公開買付けについて説明を求めるとともに、同年2月5日付け各取締役宛て「通知書」により、本公開買付けについて私が持った疑問点を記載し、会社法第381条第2項に基づいて監査請求をしました。
しかし、経営陣は、同月12日付け「回答書」で報告拒絶の回答をしましたので、私は、同月13日付け各取締役宛て「通知書(2)」により、代理人の交替や誓約書の提出を提案し、「私がどのような措置を講じれば報告するのか」を照会する通知をしました。にもかかわらず、経営陣からは黙殺され、千代田社外取締役は、同月14日に、私がどのような措置を講じれば報告に応じるのかを回答することもなく、「貴職が本通知書において要求された報告には応じかねます。」と明確に報告を拒絶しました。
このような経緯を経て、私は、約1カ月を経過しても、廣済堂の経営陣及び社外取締役は、私に何らの情報も与えようとせず、私が持った疑問点に回答しようとしないことから、同月18日、正式に本公開買付けに反対する旨の意見を公表しました。
その後、廣済堂の経営陣は、同日に本件開示書面①を、同月19日に本件開示書面②を開示し、また、私宛てに同月21日付け「回答書(2)」を通知し、本日開催の取締役会を向かえましたが、私としては、廣済堂の経営陣の態度は、結局のところ、「監査役に情報提供はしない。しかし、賛成はしろ。」という、白紙委任的な賛成を迫るに等しいものといわざるを得ないと考えます。
最高裁判所や高等裁判所の裁判例がいうとおり、本公開買付けのようなMBOにおいては、株主に対して適切な情報開示が行われる必要がありますし、取締役にはそのようにする責務があります。私は、監査役として、白紙委任的な賛成はできないと考えたことから、必要な情報を得た上で、改めて、本公開買付けに関する意見形成をし、株主の皆様に対する情報開示が適切になるようにしようと考えました。廣済堂の経営陣及び社外取締役が、徒に私を敵対視して必要な情報を与えようとしないことも問題ですが、私としては、情報提供をせずに白紙委任的に賛成をするように迫ってきていると感じており、これは、極めて問題のある態度であると考えます。そのような廣済堂の経営陣及び千代田社外取締役の態度は、監査役の監査機能に対する無理解を露呈し、監査役を形骸化させようとするものであり、最早、監査妨害と言わざるを得ないと考えますので、遺憾の意を表明させていただきます。

第2 監査妨害に対して抗議をするに至った経緯
私は、平成31年1月17日、本公開買付けに係る取締役会決議のわずか2時間前に本公開買付けの事実を知らされ、その詳細及び合理性が不明であったため、同月24日の取締役との面談及び同月5日付け「通知書」により、廣済堂経営陣及び千代田社外取締役に対して、本公開買付けに関する質問をして報告を求めたのですが、彼らは、①特定の株主と利益が相反するおそれがあること、②私が求めた事項を私に報告すると内部情報が漏洩するおそれがあることを理由に私が求めた事項の報告を拒絶し続けています。
そもそも、会社の業務上の秘密が漏れるおそれがあることを理由に監査役の質問に応答することを拒否することは違法と解されています(稲葉威雄ほか編『実務相談株式会社法3新訂版〕』957頁〔慶田康男〕(商事法務研究会、1992))。また、廣済堂経営陣は、廣済堂の株式を保有して廣済堂の内部情報を共有しているにもかかわらず、他の株主に対しては、利益が相反する「おそれがある」との理由で本公開買付けに関する情報を私に報告することができないとのことです。
私は、彼らの主張には合理性がないと考えます。
しかし、私は、公開買付期間との関係で緊急を要することから、彼らの主張を考慮して、廣済堂経営陣には、同月13日付け「通知書(2)」により、「そもそも報告する意向がないのか、又は、私が講じる措置いかんによっては報告する意向があるのか、報告する意向があるであれば、私がどのような措置を講じれば報告するのか」を照会する通知をしました。
しかし、廣済堂経営陣は、私の請求を無視し、千代田社外取締役に至っては、同月14日付け書面により「貴職が本通知書において要求された報告には応じかねます。」と明確に報告を拒絶しました。
私は、1か月を経過しても、廣済堂経営陣及び社外取締役が私の監査請求に応じないことから、同月18日、正式に本公開買付けに反対する旨の意見を公表し、そのことが日本経済新聞や東洋経済にも報道されました。
廣済堂経営陣及び千代田社外取締役は、私に対する報告を無視又は拒絶していたものの、上記各報道に危機感を感じたのか、この報道の翌日(19日)に、私への従前の態度を翻して、対外的には、本件開示書面②〔4頁〕で「中辻監査役からの報告請求に応じる意向を有しております。」などとリリースするに至りましたが、結局、私に対しては、「具体的にどのような措置を講じれば、私が請求した事項を報告するのか」について、何も回答していません。
そして、廣済堂経営陣は、私に対し、同月21日付け「回答書(2)」を送付し、私の監査請求に応じるか否かについては「まずは貴殿ご提案のこれらの措置が、当社取締役の上記疑念を払しょくできるような態様で実際に実施されるかを見極めたいと考えております。」と述べています。
廣済堂経営陣及び千代田社外取締役の、この期に及んで期限を区切らないまま「見極めたい」という態度からは、私としては、更に時間稼ぎを行って本公開買付期間を経過させ、このまま私が求めた事項を報告する意向を有していない可能性が大きいと疑わざるを得ません。
そこで、私は、廣済堂経営陣及び千代田社外取締役が監査妨害をしていると考えるに至り、同月22日に、廣済堂経営陣に対して抗議をするとともに、改めて、「そもそも報告する意向がないのか、又は、私が講じる措置いかんによっては報告する意向があるのか、報告する意向があるのであれば、私がどのような措置を講じれば報告するのか」を具体的に回答するよう請求しました。
しかし、廣済堂経営陣は、本日まで、いまだ私が求めた事項に対する報告をしていませんし、私がどのような措置を講じれば監査に応じる(報告)するのかについても回答していません。

第3 廣済堂の開示に含まれる投資者に誤解を生ぜしめ得る記載
1 本件開示書面①及び本件開示書面②に記載されている私が本公開買付けに賛同等したとの点
本件開示書面①〔2頁〕には、「実際に中辻監査役は、当該取締役会において本MBOへの賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して本公開買付けへの応募を推奨する旨の決議を行うことに対して異議がないことを明示した上で、決議の直後に、『成立に向けて頑張って下さい』と述べて、改めて異議がないことを示すとともに、他の取締役を激励する発言をされております。……なお、平成31年1月17日開催の取締役会において中辻監査役が以上のとおりの言動をとったことについては、中辻監査役からいただいた質問状に対する当社書簡の中でも既に中辻監査役にお伝えしております。」と記載されていて、本件開示書面②〔2 頁〕にも同様の内容が記載されています。
しかし、私は、廣済堂に対し、その翌日である同月13日付け通知書で、同回答書に記載された事実が誤りであることを通知しています。
私は、意見形成のために必要な時間も情報提供もされていないのに、白紙委任的に賛成意見を述べるような、無責任なことはしていません。

2 本件開示書面①及び本件開示書面②に記載されている私の正式な本公開買付けの反対意見がないとの点
本件開示書面①〔2頁〕には、「なお、その後同年1月31日及び2月8日に開催された当社取締役会においても、中辻監査役から本MBOに対して反対である旨の意見はいただいておらず、その他、本日まで中辻監査役から本MBOに対して反対である旨の正式なご意見はいただいておりません。」と記載されていて、本件開示書面②〔2頁〕にも同様の内容が記載されています。
確かに、平成31年2月8日の時点においては、私は、廣済堂の監査役として本公開買付けについて意見形成をするために必要な情報を与えられていなかったことから、会社法第381条第2項に基づく報告を待っていた状態であり、正式に反対の表明はしておりませんでした。
しかし、廣済堂経営陣が、正当な理由なく、会社法第381条第2項に基づく報告をせず、私が本公開買付けに対して抱いた疑問点を解消しようとしないことから、私は、正式に、本公開買付けに反対するという意見を持つに至り、同月18日に、正式に、本公開買付けに反対する旨の意見表明もしています。
また、私は、廣済堂に対して、本公開買付けに反対する旨の通知もしています。

3 本件開示書面②の報告請求について廣済堂が報告を拒絶していることを記載していない点
本件開示書面②〔4頁〕には、「なお、当社としては、まずは上記のような疑念を払拭するための対応を適切にとって頂く必要があると考えておりますが、当該疑念が払拭された場合には、中辻監査役の監査役としての職務遂行に必要な範囲で中辻監査役からの報告請求に応じる意向を有しております。」と記載しています。
しかし、私は、廣済堂経営陣に対し、平成31年2月13日付け通知書(2)で、「OMM法律事務所とは異なる法律事務所に所属する弁護士を代理人に選任するなどして利益相反を回避する措置を講じることを検討します。」「また、報告があった事項のうち、当社の内部情報(秘匿性が高いもの。)を、監査役としての善管注意義務に抵触しない限りにおいて、第三者に開示しない旨の誓約書を提出することも検討します。つきましては、各取締役におかれては、そもそも報告する意向がないのか、又は、私が講じる措置いかんによっては報告する意向があるのか、報告する意向があるのであれば、私がどのような措置を講じれば報告するのかについて、直ちに、書面により御回答ください」と通知しています。
それにもかかわらず、廣済堂は、本日に至るまで、私がどのような措置を講じれば報告するのかについて回答せず、私の報告を拒絶し続けています。

第4 まとめ
以上のとおりですので、私は、改めて、本公開買付けに反対し、株主の皆様に対しては、本公開買付けに応募しないようにお願いをするとともに、既に応募された株主の皆様に対しては、速やかに本公開買付けに係る契約を解除するよう、お願いします。
また、私は、廣済堂の経営陣及び社外取締役が私の監査請求に応ぜず、情報提供をしないまま、白紙委任的に本公開買付けに賛成するように迫ることは、監査妨害といわざるを得ないことから、強く抗議します。
なお、本書面は、本日開催の取締役会に提出しております。
以 上

※問い合わせ先は顧問弁護士のOMM法律事務所 大塚和成弁護士(03-3222-0330)となっている。

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