■今年8月に兵庫県警姫路署に詐欺容疑で逮捕された野村證券元社員・中村成治による一連の詐欺事件に関連し、約7000万円を詐取された八千代市の男性に中村を紹介した野村證券船橋支店の営業マンS(イニシャル)が、兵庫県警の調べに自分が中村を紹介し、詐欺の橋渡し役を担ったことを認める供述をしていることが、関係者への取材で分かった。
■この事案を整理すると、中村は野村證券時代のネットワークを生かし、2018年春頃から担当していた顧客や元同僚の顧客に対して、架空の投資商品を勧める詐欺行為を行っていた。同年10月、中村は船橋支店のSの担当顧客である八千代市の男性宅をSと共に訪問し、3500万円を詐取した。その後もSを通じて“金利”と称して投資の成果が上がったかのように数十万円の現金を交付しながら、投資の増額を提案し、最大で約7000万円を詐取していた。
■Sは詐欺の発覚に前後して、転勤と偽り連絡を絶とうとし、さらに自分は中村を紹介した事実はないと男性顧客に事件への関与を否定していた。当サイトが6月にSと面談した際も、弁護士同席でなけば取材に応じないとしていた。ところが、Sが中村の逮捕後の兵庫県警の事情聴取に対して、男性顧客に中村への投資勧誘をしたことや“金利”の運搬など詐欺案件への関与を認める供述をしていことが分かった。
■野村證券は男性顧客からの被害相談を受けて行った社内調査で、Sが男性顧客に中村を10月に紹介したことは認めたが、その後“金利”と称した現金を運んだことや投資の増額を勧めたこと、転勤と虚偽説明していた事実は認められないとの結論を、今年8月に男性顧客に電話で伝えていた。
■すると、Sの警察への供述は、野村證券の社内調査結果とは異なる内容ということになる。一般的に、証券会社は不祥事案が発生した場合、金融庁にその事案概要を報告しているが、社内調査結果と警察への供述が食い違っている以上、野村證券は自社の社員が詐欺案件に関与していない、という事実と異なる内容の報告書を金融庁に提出している恐れがある。
■野村證券はこの事案について、当サイトや他のマスコミの取材に対して「警察に相談しておりますので、コメントを控えさせていただきます」などと回答していた。それならば、警察の捜査が一定程度終結し、神戸地検が中村を詐欺罪で起訴した後に取材に応じるべきであるが、起訴後に当サイトが野村證券に取材したところ、今度は「個別の案件にはお答えできない」と述べだしている。「警察云々」は結局のところ、取材を拒否する出鱈目な言い訳にすぎない。
■平気で顧客に嘘をつくSのような末端から、不誠実な理由で取材を拒否する広報部、何度も行政処分を受ける経営陣というのが野村證券の実情であり、不祥事体質はもはや手の施しようがないレベルに達していると思われる。今回の事案に限らず、野村證券は過当取引や社員による詐欺行為が発生した際に、まず顧客自身の責任を追及し、それが難しくなるや、社員と顧客が個人的に行ったもので、会社は責任を負わないという対応を繰り返していた。しかしSの供述が出てきた以上、今後の民事訴訟などで、野村證券の責任が一定程度、認定される可能性が出てきた。(つづく)
(文中敬称略)
2019年8月26日付レポート:【続報】野村證券詐欺事件、兵庫県警姫路署が元社員を逮捕 「動機」に謎残る
2019年7月19日付レポート:【続報】野村證券詐欺事件、船橋支店のほか名古屋、高槻支店の顧客も被害 本店勤務の社員も詐欺に加担
2019年6月18日付レポート:野村證券でまた詐欺事件 船橋支店営業マンが担当顧客を詐欺話に勧誘、運用資産の大半が被害 野村は「警察に相談」
2018年4月9日付レポート:【ミニ情報】野村証券営業マンが「過当取引」、70代顧客が提訴 短期間で資産の大半消失、損失の3割は「手数料」
2017年3月13日付レポート:【ミニ情報】ジャスダック上場ナガセ、破綻したFC加盟企業経営者は永瀬社長の「野村証券時代の先輩」 最上恒産会長らから13億円詐取で有罪
2016年11月4日付レポート:【続報】野村証券詐欺事件 当サイト等の指摘を受け、野村が社員の詐欺行為について注意喚起を開始
2016年10月13日付レポート:【続報】野村証券詐欺事件 会社は被害顧客の救済しない方針を伝達 「社員の個人的問題」として処理か
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野村證券詐欺師は常識である!!