【続報】オリックス宮内会長・長男が経営する東証1部ビーロット、「江坂ビル」押込み先私募REITを「関連当事者」に訂正


■ビーロットが提出した訂正有報
■ビーロットが提出した訂正有報

■オリックスの宮内義彦会長・長男の宮内誠が経営する東証1部上場不動産会社ビーロットが6月10日、2020年12月期有価証券報告書を訂正し、同期連結売上高の半分を占める販売先「ビーロットリート投資法人」(代表・外川太郎=ビーロット取締役、以下ビーロットリート)を関連当事者として注記した。
■ビーロットは昨年11月末、ビーロットリートに大阪府吹田市のオフィスビル「ビーロット江坂ビル」(以下、江坂ビル)を130億円で譲渡し、売上計上する一方、ビーロットリートに対し76億円の債務保証をしていた。この江坂ビルは19年12月の主要販売先であるユナイテッドアーバン投資法人からバーター取引で取得したもので、一連の取引がなければ、ビーロットの連結売上高は18年12月期202億円、19年12月期171億円、20年12月期134億円と減収となっていた。
■今回の訂正有報で明らかになったビーロットリートの出資金の総額は57億円とのことで、20年12月時点の負債・純資産合計は134億円と思われる。ビーロットが保証する債務はほぼ全て、江坂ビルの取得代金である可能性が高い。また訂正有報によると、ビーロットリートに対するビーロットの出資比率は13.3%となっている。
■一般的に、不動産の売却の会計処理では、売却後も売り手が買戻す権利を付与したり、リースバックすることで売買代金や利回りを保証するなど、何らかの形で買い手や物件に継続的に関与していると、売却の会計処理が認められない場合がある。売り手に出資することで実質的に譲渡不動産の持ち分を保有していたり、売り手に債務保証している場合も該当することがある(企業会計基準委員会「不動産の売却に係る会計処理に関する論点の整理」)。
■例えばSPCを利用した私募ファンドによる不動産流動化取引の場合、売り手から譲渡不動産を取得するビークルに、売り手が5%以上出資していた場合、売り手の事業投資リスクが十分に移転していないとして、売却取引が認められず、金融取引として処理しなければならないとされている(日本公認会計士協会「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」)。ビーロットの出資比率は13%なので、私募ファンドのスキームだった場合は、売却の会計処理は認められない。
■ビーロットリートが手掛ける物件は江坂ビルだけで、江坂ビルのオフバランス化のためにリートを取得したようなもので、SPCを利用した流動化取引と質的に同じである。しかし、実務指針についてのQ&Aによると、投資法人の場合、同じ流動化取引でも特定目的会社には該当しないとして、この5%ルールは適用されず、会計処理は「関係会社間の取引に係る土地・設備統の売却益の計上についての監査上の取り扱い」(監査委員会報告第27号)に基づき総合的に判断すべき、と定められている。
■「関係会社間の取引に係る土地・設備統の売却益の計上についての監査上の取り扱い」では、不動産の売却の会計処理にあたり下記の留意事項が挙げられている。

  1. 合理的な経営計画の一環として取引がなされていること
  2. 買戻し条件付売買又は再売買予約付売買でないこと
  3. 資産譲渡取引に関する法律的要件を備えていること
  4. 譲受会社において、その資産の取得に合理性があり、かつ、その資産の運用につき、主体性があると認められること
  5. 引渡しがなされていること、または、所有権移転の登記がなされていること
  6. 代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収可能な債権であること
  7. 売主が譲渡資産を引続き使用しているときは、それに合理性が認められること

■前述の通りビーロットは、ビーロットリートが江坂ビル取得のために調達した負債約76億円を保証しており、引き続き売却代金の大部分がリスクに晒されており、6.の留意事項に該当していると言える。
■ビーロットは江坂ビル取得当初から物件のリスク分散を狙っていた。SBI証券と業務提携し、収益不動産の小口化を目的とした不動産特定共同事業や、不動産クラウドファンディング事業への参画を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で頓挫し、その後、ビーロットリート投資法人による物件取得が計画された経緯がある。
ビーロットは訂正報告書を出した翌11日、昨年2月に中止にしたSBI証券を通じた公募増資を再度実施することを公表した。(文中敬称略)

2021年4月8日付レポート:オリックス宮内義彦会長・長男が経営する東証1部ビーロット、「バーター取引」で取得した既存不適格物件を私募REITに押込み、成長トレンドを演出か

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