【ミニ情報】”第二アンジェス”ファンペップ、株式交換による赤字バイオベンチャー買収によぎる「既視感」


■東証グロース上場のバイオベンチャー・ファンペップ(社長・三好稔美)が7月14日、株式交換により「アンチエイジングペプタイド株式会社」(AAP)を買収すると適時開示した。ファンペップは、大阪大学大学院の寄付講座教授で、大阪万博の大阪パビリオン総合プロデューサーなどで知られる森下竜一が創業。森下教授は、コロナ相場でMSワラントによる資金調達を仕掛けたアンジェスの創業者だ。
■ファンペップの適時開示ではAAPの取得価額が明示されていないが、AAP株1株あたりに6500株のファンペップ株を割当てるとのことで、買収価格は15日の終値で約515百万円(AAP株367個×6500×7月14日終値216円)となる。12.7%の希薄化となる。ファンペップはAAPの規模が小さいため株主総会の承認を経ずに株式交換を実施する。
■バイオベンチャーは将来予測が難しく、会社の主張する希望的観測を否定しずらい側面があるが、割高感が否めない。ファンペップはAAPからライセンス供与を受けていたようだが、AAPの直近の売上高はゼロ、費用も年間わずか100万円程度であり、研究開発活動も旺盛には行われていない模様だ。
■AAPは16年の創業当初、大手化粧品メーカーの化粧品に同社が開発した機能性ペプチドが使用されるとして、5年後の21年には1億円の売上高を目指すとしていた。実際、2018年8月に、化粧品大手アルビオンからAAPの機能性ペプチドが使われた美容液「アンフィネス インジェクター OSK」が発売された。しかし前述の通り、直近2期の売上はゼロであり、化粧品ビジネスは続かなかったようだ。
■化粧品ビジネスの不調については株式交換の適時開示でも説明されているが、〈化粧品分野は、新型コロナウイルス感染症流行により訪日外国人数が減少してインバウンド需要が消失した影響により2020年12月期から売上高を計上しておらず〉と、コロナのせいにしており、いまいち納得がいかない。
■森下教授の”本拠地”であるアンジェスでは、実績のないバイオベンチャーを相当な高値で買収し、ベンチャーの既存株主が売り抜けるという図式が繰り広げられた。アンジェスはEmendo Biotherapeuticsを株式交換で買収。Emendo社は未だ売上を実現していないと思われるが、保有していたイスラエルを拠点とする医療ファンドは、早々に株式交換で手にしたアンジェス株を売り抜けていた。
■今回の株式交換によりファンペップ株を手にするAAP既存株主の面々は、森下教授のブレーンである。27%を持つ中神啓徳は大阪大学大学院の寄付講座教授で森下教授と同じ立場である。24%を持つバイオ・サイト・スタート投資組合は、森下教授らが設立したバイオ・サイト・キャピタルのビークルである。13%を持つ橋弥尚孝は大阪市内でアンチエイジングのクリニックを経営。大阪大学特任教授で、森下教授が会長を務める日本抗加齢医学会の評議員である。24%を持つ植田千矢子と同氏が経営する㈱ReBeageは、上場前からファンペップに投資していた。(文中敬称略)

2021年11月6日付:【ミニ情報】マザーズ上場アンジェス、「コロナワクチン相場」の裏で米医療ファンド売り抜け 残されたのは巨額減損リスク(※一部訂正)

2021年12月12日付『日刊ゲンダイ』:吉村知事がブチあげた「日の丸ワクチン」 大阪の創薬ベンチャーは株価高騰で巨額資金調達

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