【ミニ情報】マザーズ上場イグニス、巨額貸付先の素性 「薄毛治療クリニック」に融資か


■音楽プロデューサーの秋元康が子会社に資本参加するなど、”秋元銘柄”として市場関係者の注目を集めていたマザーズ上場イグニス(渋谷区恵比寿、社長・銭錕)。同社は、秋元康の関与するVR事業などは派手に開示していた一方で、17年9月期中に急増した巨額の営業貸付金について説明を全くしないまま、18年11月に貸付金の大半である15億円の貸倒引当金を計上するという、情報開示の観点から問題のある企業であった。そうした中、当サイトにイグニスの融資先に関する情報提供があった。
18年11月の貸倒引当金に関する開示では、貸付先について「医療機関向けSaaSを中心とした新規事業領域」と曖昧な表現に留めていたが、具体的な融資先の一つは、千代田区で薄毛治療を専門とする「Aクリニック」(イニシャル)である可能性が高い。Aクリニックは17年3月に開業。運営元である医療法人社団X会(イニシャル)は、18年2月期中に外部から約11億円を借り入れている。X会は元々、関東地方で耳鼻咽喉科医院を営んでおり、17年2月期の売上高は5千万円程度であった。
■Aクリニックの運営の大部分は、実質的にイグニス連結子会社アイビー元社長、田辺卓也が経営する株式会社GA(渋谷区恵比寿)により担われている。クリニックの従業員も同社が募集しており、出向の形でクリニック運営に従事させていると思われる。
■X会の18年2月期の事業報告書を見ると、前期に比して自由診療による収入が1億1千万円増加しており、この部分がAクリニックによるものであると思われる。しかし、販管費が約14億8千万円計上されており、約14億円の債務超過に陥った。Aクリニックはプロサッカー選手を広告塔とするなど、宣伝に力を入れすぎたようだ。
■Aクリニックの運営費や宣伝費の原資は11億円の借入であることは間違いなく、一部は未払金計上されており外部が立て替えている。これをイグニスが負担したのであれば、当サイトで指摘したような貸付金と立替金の不自然な増加は説明がつく。なお、18年2月期時点で、Xの現金は4000万円程度しかなく、調達した金のほぼ全てが費消されたようだ。
■イグニスは17年9月期に営業貸付金を約12億円計上しているが、この時点でX会は宣伝費などの先行経費で実質的な債務超過に陥っていた可能性は高い。もし、融資先がX会であるならば、イグニスの貸倒引当金を公表する時期が問題となる。X会の決算は18年2月末であり、同会の事業報告書が作成されたのは4月24日である。債務超過の登記がされたのが5月18日である。イグニスが秋元康関連の適時開示や、新たなファイナンスの実施を公表していた時期と重なるが、早期に開示することはできなかったのか。X会は取材に対し「担当者不在」、イグニスは「一切お答えできないことになっている」と述べた。
(文中敬称略)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です