【ミニ情報】巨額赤字修正のジャスダック上場「燦キャピタル」、太陽光発電事業への前払金は「資金使途違反」か


■ジャスダック上場の燦キャピタルマネージメント(大阪府、社長・前田健司)が7月10日午後7時、20年3月期の業績予想を営業利益・経常利益を黒字から赤字、親会社に帰属する当期純利益を△281百万円から△1,773百万円とする巨額の下方修正を公表した燦キャピタルは19年末、テラやNutsなどのハコ企業案件で登場するIbuki Japan Fundに実質的に新株と新株予約権を発行しており、今回の下方修正の原因となった投融資の原資はIbuki Japan Fundからの調達資金と思われる。その場合、増資の際に公表していた資金使途に違反している可能性が出てきた。
■下方修正の適時開示によると、今回増加した当期純損失は約1,492百万円であり、赤字幅拡大要因の主なものは、①漫画北斎浮世絵プロジェクトの研究開発費230百万円、②エクイティファイナンスにかかるFAフィー106百万円、③社会課題解決ビジネス成長ファンドの評価損207百万円、④太陽光発電所の地上権売買における前払金への引当430百万円、⑤国内事業会社向け貸付への引当360百万円である。
■これらの中には、既に公表されている20年3月期第3四半期までに計上された費用もあるが、特に金額が大きい④の太陽光関連の前払金は、20年3月期第3四半期(19年3月‐12月)の貸借対照表に計上されておらず、第4四半期中に支出されたものと思われる。投資後、瞬く間に不良債権化したことになる。
■このような冒険的な投資を行えるほど、燦キャピタルの資金繰りに余裕はなかったはずだ。第3四半期のポートフォリオのうち、現金は約91百万円しか計上されていない。その他の科目も流動性・資産性に乏しい状況で、前払金の出所は、19年12月に決議され、翌20年1月に払込まれた新株発行での調達資金7億円であると考えるのが合理的である。この増資の引き受け手・有限会社SHホールディングス(港区赤坂、社長・鈴木貴博)は、全ての資金をIbuki Japan Fundから借り入れており、実質的な増資先の引受先はIbuki Japan Fundである。
■問題は、この増資が太陽光発電事業への投資を目的としたものではなかったことだ。新株発行で得られた7億円のうち、発行費用を除いた620百万円は、①カザフスタンにおける航空券事業及びエア貨物の受入事業への投資190百万円、②国内における漫画関連事業及びプロジェクト事業に係る投資230百万円、③ハワイにおける農業事業に対するリース事業に係る農地取得資金200百万円と定められていた。太陽光発電所の地上権取得は、どのように解釈してもこの3つの資金使途に当てはまらない。
■そもそも通期売上850百万円と予想していた燦キャピタルにおいて、430百万円の投融資は巨額と言え、個別に適時開示されるべき規模の取引である。この点、燦キャピタルは20年3月期第3四半期中にも国内の事業会社から、太陽光発電用地を担保に4億円を借り入れ、今回引当処理された貸付金に供している。この点も、同社の規模からして巨額の借り入れであり、個別に適時開示すべきであるが、同社から詳しいリリースはない。
■なお、当サイトは6月4日、燦キャピタルに対して、20年3月期第3四半期中の借り入れの経緯や貸付先の素性についての質問書を送付したが、期日までに同社から回答はなかった。
(文中敬称略)

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